0 はじめに
先月、「ビジネス実務法務検定を受けることにする」というブログ記事を起案した。
そして、6月29日の今日、鈍行電車で40分ほど揺られて試験会場(テストセンター)へ行き、この検定試験を受けてきた。
この点、今回受けたビジネス実務法務検定試験のランクは2級である。
結果は当然「合格」である(CBT方式の試験なので結果はすぐわかる)。
そこで、この試験を受ける際に経験した内容をここにまとめておく。
1 検定試験を受けた目的
これまで、私は「一定の学習をした後のアウトプットの手段」・「学習習慣の確立・維持の手段」として資格試験(検定試験)を利用してきた。
そして、令和元年から現在までの約四年半の間に、以下の資格を獲得してきたのはこれまでのブログで述べてきたとおりである。
しかし、FPの3級と2級・統計検定の2級・Pytyon3エンジニア認定基礎試験では、資格取得のためのが学習が一夜漬け、ないし、二夜漬けで終わってしまった。
つまり、学習習慣の確立という目的はほとんど実現しなかった。
そこで、「定期的に資格を取り、よって、学習習慣を確立すること」は諦めることにし、必要ない限り資格は取りにいかないことにした。
もちろん、今回のように社会生活上の要請に迫られれば資格を取るし、興味のある分野を学習すればそれに対応する資格を取ることはあるとしても。
さて、今年は「資格を取ること」それ自体を重視していなかった。
しかし、とある事情から私に「法律に関する知識」があることを示す必要に迫られた。
同時に、社会生活において法律に関する知識を使う現実的可能性、ではない、具体的蓋然性が発生した。
そこで、法律知識のブラッシュアップなどを兼ねて、ビジネス実務法務検定試験の2級を受けることにした。
このように、今回の資格取得目的は社会生活上の要請に基づくものである。
その意味で、これまでの資格取得とは意味合いが異なる。
2 具体的な試験勉強について
上で記事で書いたように、2級の試験問題に登場する法律の範囲は広い。
そこで、確認の意味を兼ねて、出題範囲・学習範囲となりうる法律を確認する。
なお、法律の範囲については次のサイトの情報を参考にしている。
また、太字になっているのは3級の出題範囲とされているものである。
・民法・商法系
民法・借地借家法・仮登記担保法・商法・会社法・手形法・小切手法
・破産系
破産法・民事再生法・会社更正法
・労働系
・経済系
下請法・医薬品医療機器等法
・消費者系
・知財系
・その他
民事保全法・公害関連法・条例・行政手続法
この点、中心となるのは民法・商法・会社法であり、この部分の確実な理解が極めて重要である。
しかし、細かいものを含めるとたくさんの法律がその範囲に入っている。
そこで、教科書中心で対策を進めるのではなく、問題集の演習を通じて試験対策と法律知識のブラッシュアップをすることにした。
また、受検するクラスは2級である一方、3級に関する知識も確認しておきたかったため、3級と2級の問題集を1冊ずつ購入して問題演習を行った。
具体的に購入したのは次の2つの問題集である。
この点、両問題集は1問1答の正誤問題が集められたものでありながら、3級の問題集には約400問、2級の問題集には約600問の問題が掲載されていた。
これだけあればなんとかなるだろう、と考えたのである。
ただ、実際のところ、勉強ははかどらなかった。
所用が重なったこともあるが、スキマ時間を使った勉強が主となり、机に向かってじっくり取り組んだ時間はそれほど多くなかった。
これまでの試験の半分が「一夜漬けでなんとかした」ならば、今回の試験は「スキマ時間の勉強だけでなんとかした」ようなものである(もちろん、時間を取って机に向かって勉強した時間が全くないわけではない、しかし、生活記録によればその時間は10時間に満たない)。
よって、勉強時間はスキマ時間を含めても20時間を超えていないと考えられる(試験に要した時間を加えても30時間未満)。
まあ、その時間内で2冊の問題集にある問題を一通り解き、ミスした問題の見直しもしたので、やるべきことの最低限は実施しているが。
それから、「常識的にこの結論が正しい」というように感覚で問題を解いてしまい、根拠条文と紐づけるという作業はあまり行わなかった。
結果は幸いしたし、実務においてはいざとなれば六法を確認することができるが、この点は少し勉強方法として問題だったかもしれない。
3 本番について
今回、私はこの試験をCBT方式で受験することにした。
このCBT方式というのは、いわゆるテストセンターで受検するものである。
つまり、自宅などで受検するいわゆるIBT方式は採用しなかった。
自宅では集中できないと考えたから。
この点、CBT方式だと2200円分余計に費用がかかるのだけれども、自宅でやるよりもいいかと考えた。
また、今回、私はこの試験をこれまで利用してきたテストセンターとは異なる都市で受けることにした。
これは単なる気まぐれ的なものであるが。
以上、試験日の今日(なお、試験を申込した際には、試験日を6月24日にして受検場所を自分の住んでいる都市にしたのだが、その後諸々の事情があって受検地と日時を共に変更した)、いつもは降りることのない駅で降り、その駅の徒歩圏にあるテストセンターに向かった。
そのテストセンターは駅から近いところにあり、迷うことなく到着することができた。
そして、受検。
試験時間は90分で、約45分で全問題を一通り解き終えることができた。
このタイミングで終了してもよかったが、念のため、再度、全部の問題を見直す。
結局、15分くらい残して試験を終えた。
結果は合格。
ボーダーは70点なのに対し、私が取得した点数は85点以上あった。
つまり、余裕の合格ということになる。
ブラッシュアップの効果ゆえか、私の法律に関する知識は大丈夫のようだ。
その点は安心である。
4 感想
この点、下にリンクを貼った検定サイトの文章を見ると、ビジネス実務法務検定2級のレベルは次の通りらしい。
(以下、上記サイトの2級の項目を引用)
企業活動の実務経験があり、弁護士などの外部専門家に対する相談といった一定の対応ができるなど、質的・量的に法律実務知識を有している。(知識レベルのアッパーレベルを想定)
(引用終了)
つまり、サイトの記載によると、「法律に関する外部の専門家に対応できる」となっており、相当のレベルを担保しているように見える。
また、ビジネス実務法務検定試験の2級に合格すると「ビジネス法務エキスパート」なる称号が得られるらしい。
この点は、デジタル合格証(pdfファイル)にも記載されている。
しかし、私の実感から見た場合、そのようなハイレベルなイメージは感じられなかった。
また、称号についてもなんか名前負けしている感じがしないではない。
以上を考慮すると、社会的要請との兼ね合いを考慮すれば1級が必要かなあ、と考えることもある。
まあ、このタイミングでは2級しか受けられない(1級が実施されるのは秋)ため、今回はこれでいいのだが。
もっとも、これを機に様々な法律の基礎部分に触れられたのは大きかった。
これまで、知財・破産・経済・労働に関する法令をじっくり見ることはなかったから。
その意味では、今回の一連の学習は法律の理解には役に立った。
また、レベルの問題は「スクリーニング」と考えれば、つまり、「不合格ならば論外だが、合格したとしても何かを保障するわけではない」と考えれば、それほどの問題がないわけではない。
そう思えば、この資格試験を受けた価値はあると考えている。
なお、この資格は他の法律系資格を得るためのステップアップに利用できる旨書かれている。
そのような観点からこの試験を見ると、2級の出題範囲は広いのではないかと考えられないではない。
なぜなら、ビジネス実務法務検定試験は、基本となる民法・商法・会社法・民事訴訟法だけではなく、知財系・破産系・経済系・消費者系・労働系と多種多様な法律が範囲となるのだから。
だが、出題数や配点を考慮すれば、大事になるのは民法・会社法・商法である。
そして、この3つの法律で出てくる法理は他の法律でも応用できるものが少なくない。
上で、「私は常識で解いてしまい、条文との紐づけを重視しなかった」と述べたが、「常識」にあたるのはいわゆる六法に属する法律の基礎的事項である。
これについて、具体例を出しておこう。
民法511条第1項では差押えと相殺について次のようなルールを定めている。
民法511条第1項
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
例えば、B(債務者)に対する貸金債権を持っていたA(債権者)が強制執行のため、BのC(第三債務者)に対する金銭債権を差押えた。
この差押えのタイミングでCはBに対して債権を持っていた。
このとき、Cは相殺を主張して差押債権を消滅させることができるか?
答えは「できる」であり、その根拠が民法511条である(昔は判例であり、民法511条の反対解釈によっていた)。
つまり、511条は差押え後にゲットした債権では相殺できないが、差押え前にゲットした債権であれば相殺ができる。
この背後にあるのが「相殺の担保的機能」、つまり、「いざとなったら相殺して債権回収すればいい」というものである。
この発想が頭にあると、破産のときも同様だろう、と推測ができる。
破産も差押えも債務者が無資力でにっちもさっちもいかない状況であることは同じであるから。
ちなみに、同様の規定は破産法67条や71条に規定がある。
破産法67条1項
破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる。
破産法71条
破産債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
第1号 破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき。
(以下略)
また、この試験で85点以上取ろうとしたら、他の法律系資格を得るためのステップアップとしては少々大変かもしれない。
しかし、合格のボーダーは70点である。
とすれば、「全体を俯瞰しつつ、重要な科目に集中し、75点程度を目指す」というスタンスで臨めば、他の法律系資格のためのステップアップとして有益ではないか、と考えられる。
間違っても、全部を完璧にしようとしてはいけない。
最後に、2級において重要な法律は次のあたりかなあ、と考えたため、その辺を掲載する。
(重要な法律)
民法・会社法・商法・破産法・特許法・著作権法・独占禁止法・消費者契約法・割賦販売法
もちろん、これ以外の法律もざっと目を通すくらいはすべきであろうが。
以上、ビジネス実務法務検定試験2級に合格した際に得られた経験をまとめておいた。
それはさておき、1級についてはどうしようかなあ。