薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

プログラミングから縁が遠くなる

 最近、感じる。

 プログラミングとの縁が遠くなったなあ、と。

 

 

 この点、2022年7月から私の生活は変わった。

 そして、2023年10月から私の生活はそれまでと比べてさらに大きく変わった

 

 この生活環境の変化によって、「社会生活上の要請により学ぶ必要のあるもの」は大きく変化した上、範囲も広くなった。

 例えば、このブログに登場しているAML/CFTことマネー・ローンダリング、テロ資金供与、及び拡散金融対策」も「生活環境の変化によって学ぶ必要のあるもの」になった一つである。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 また、現在の私は「これまで小室直樹先生や山本七平氏の書籍から学んだこと」を現実で確認している状況にある

 そのため、小室先生や山本七平氏の書籍を見直したいと考えているし、新たに読みたいと考えている書籍もある。

 

 したがって、「これらの大きな変化の中ではプログラミングの勉強を続けることは難しい」と言ってしまえばそれまでである。

 そして、それ自体は間違っていない。

 

 

 しかし、この「社会生活上の要請により学ぶ必要のあるもの」の一つにDXことデジタル・トランスフォーメーションがある。

 というのも、色々なことを実行していくためには、IT技術やAI技術を使い倒す必要があるのだから。

 

 そして、「こういうシステムがあるといいなあ」と考えた場合、模型程度のものを自分で組み立てる必要があるところ、HTML・CSS・JAVASCRIPT・RUBY・SQL・RAILSの勉強が中途半端な私はシステムの模型を作るための武器を持っていない

 

 また、社会生活上の要請によりデータ分析をしたいと考えることもある

 この点、より詳細かつ大規模なことをやる段階に移行すれば、分析を他人にぶん投げることができるが、「差し当たってどんな感じか」ということで調べる場合、自分の手を動かす必要がある。

 しかし、PYTHONや機械学習の勉強が中途半端な私はデータ分析のための武器を身に着けていない。

 

 

 どうしたものだろうか。

 この点、私はシステム設計のための技術とデータ分析に関する技術の両方が欲しいといった身に過ぎた望みを持っている。

 しかし、現在の私はプログラミングから縁が遠くなっている上他に学ぶべきものがある。

 とすれば、両方やることは不可能に近いし、強行すれば体調を崩して2年前の7月以前の状況に戻りかねない。

 

 ならば、片方だけでも行うべきか。

 この点、「21世紀以前の統計学」の範疇でいいならば、多少のデータ分析は可能と言えなくもない。

 そのため、システム(アプリ)関係を優先するという選択肢はありえない話ではない

 無理のない選択肢を採るならばこうなるだろう。

 

 

 しかし、現状を考慮すれば、「単に『やる』と決めただけ」ではプログラミングとの縁は近くならない

 また、「資格を取る」という外部装置に頼るとしても、これまでの資格取得の大半が一夜漬けや二夜漬けで終わってしまった現状を考えれば、縁を近くする目的に対して資格取得は役に立たない。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 さらに、一時的に取り組んだpaizaのプログラミングスキルチェックも、システム設計といった具体的な目的から見れば、手段の関連性は抽象的である(抽象的な関連性はあるため合理的関連性自体は否定されない、ただし、実質的関連性はない)。

 プログラミング能力を磨くだけであれば、プログラミングスキルを身に着けるだけならば、paizaのプログラミングスキルチェックは合理的な手段たりうるのだが。

 

paiza.jp

 

 そこで、今後、プログラミングとの縁を近くするためには、別の外部装置が必要となる

 学習結果をこのブログにまとめる、「具体的に作るべきもの(作りたいもの)」を考えて、現実に作る、とか

 しかし、現時点で「作るべきもの、作りたいもの」は具体化されていない。

 そして、具体的に作るべきものが決まっていないならば、何を学習すればいいかが漠然としてしまい、実効性が薄くなってしまう。

 それくらいなら、漫然とpaizaのプログラミングスキルチェックを続けていたほうがいいかもしれない。

 paizaのプログラミングスキルチェックを続ける場合、さらなるレベルアップのためにはいわゆる「データ構造」について学ばなければならないところ、それを学ぶなら新規の能力を身に着けたといいうるのだから。

 

 

 それから、私には他に学ばないといけないものがある。

 この「学ばないといけないもの」との関係で、私は今年と来年に約5個の資格を取得する予定である

 この点、5個というとたくさんあるように見えるが、これらの資格の取得は一夜漬けないし二夜漬けで片付くだろうとは考えている。

 もっとも、これらの資格取得がプログラミングとの縁を近くすることはないだろう。

 

 

 以上、いろいろ考えたが、学ぶべきことが他にもたくさんある現状、プログラミングに関する勉強が進む見込みは高くはない。

 ならば、、、できる味方を探す方向で考えるべきか。

 それもそれで大変な気がするか。

『歎異抄』を読む

歎異抄』という文章がある。

 

ja.wikipedia.org

 

 私はかなり前に『歎異抄』を図書館で借りて読んだ。

 ただ、最近、次の書籍と縁があり、『歎異抄』を再び読むことになった。

 

 

 

 さて、この『歎異抄』の著者は親鸞の弟子の唯円という方であると言われている。

 そして、この『歎異抄』を発見した蓮如この『歎異抄』を浄土真宗の聖教とする旨自らの写本の奥書に書いている。

 

(以下、蓮如の『歎異抄』の写本に書かれている「奥書」を私釈三国志風に意訳したもの、以下の訳はあくまで「意訳」なので注意すること)

 この歎異抄は素晴らしい。

 これを浄土真宗の重要な聖教にするぞ。

 ただ、熱心でない輩に安易に見せてはならん。

(奥書の意訳終了)

 

 この点、蓮如浄土真宗中興の祖と言われている。

 この蓮如が『歎異抄』を聖教の一つに選んだということは、蓮如はこの歎異抄』に浄土真宗の奥義が示されていると考えたのだろう。

 

 

 ところで、この歎異抄には私にとって興味深い表現がたくさんある。

 例えば、第二条の部分である。

 以下、意訳してみる。

 

(以下、『歎異抄』の第二条を私釈三国志風に意訳したもの、強調は私の手による)

 あんたらが東国から必死に京都までやってきたのは、極楽往生を目指すための道や奥義を私から教わりたいからであろう。

 ご苦労なこった。

 しかし、私が念仏以外の往生の道やありがたい教えなどを知っていると考えているなら、それはとんでもない誤解だ

 もし、そういうことが知りたいなら、叡山や奈良にたくさんいるだろう立派なお坊さんに会って教えてもらえ。

 そもそも、私(親鸞)は「ただ念仏して、阿弥陀仏の慈悲を乞うべし」という法然師匠の教えを信じているだけで、他には何も考えてない。

 だから、「現実に、念仏によって浄土へ行けるのか、地獄に落ちるのか」と問われても、私は「知らん」としか言いようがない。

 あと、法然師匠が私を地獄に落とすために念仏の道を勧めたのだとしても、私は後悔する気はない。

 というのも、法然師匠に騙されて後悔するためには、私が有能であって念仏以外の道を選べば私が仏になれるという前提が必要になるところ、煩悩に塗れた私は無能の極みであって、どんな道を選んでも仏になれず地獄に落ちることは確定的に明らかであるからだ

 ただ、阿弥陀仏が庶民を救おうとしていることを信じられるなら、仏陀の説教も絵空事ではないし、善導尊師の説も法然師匠の説も絵空事ではないだろう。

 その意味で、法然師匠から教わったことを信じる私の発言も完全に無意味、ということはないだろう。

 私の信仰とはこんなもんだ。

 あとは、皆さんが自由に決めなされ。

(第二条の意訳終了)

 

 当時は鎌倉時代

 東国から親鸞のいる京都へ行くことは容易なことではない。

 そうやって苦労して京都に来た親鸞を慕う人たちに対して、親鸞は自分の無能性と自らの信仰を告白する

 つくづくすごいよな、と感じる次第である。

 

 

 このように、『歎異抄』には興味深い表現がいくつかある。

 例えば、第9条にはこんなやりとりがある。

 

(以下、『歎異抄』の第9条の一部を私釈三国志風に意訳したもの、強調は私の手による)

唯円「最近、念仏をしていても心が動かない。浄土へ行きたいとも思えない。いったいどうしたことだろう」

親鸞唯円よ、お前もか。私もそうなんだよ

(第9条の一部の意訳終了)

 

 人に念仏を勧めてきた人間が、念仏を唱えても心が動かない、って・・・。

 まあ、「心が動かない(ときめかない)」ということは「煩悩がない」という評価もできないではないので、その意味では仏になれる可能性が高まっていると感じなくはない。

 

 あるいは、第13条に登場する親鸞唯円のやり取りも興味深い。

 

(以下、『歎異抄』の第13条の最初の辺を私釈三国志風に意訳したもの、強調は私の手による)

親鸞唯円よ、お前は私の言葉を信じられるか」

唯円「もちろんでござる」

親鸞「では、お前はこれから私が言うことを実行できるか」

唯円「師匠、心配ご無用にござる」

親鸞「そうか。では、外を出て1000人ぶっ殺してこい。そうすれば、浄土へ行けるぞ」

唯円「師匠、私の負けでござる。1000人どころか1人すら殺すことができそうにありません」

親鸞「だったら、何故『心配ご無用』などといったのだ」

唯円「・・・・・」

親鸞「これで分かっただろう。人間の意志の力などたかが知れている。逆に、環境によっては、1000人ぶっ殺すことだってできるだろう」

(第13条の一部の意訳終了)

 

 結構怖いことを言っている

 ただ、『歎異抄』を見ていると、親鸞聖人が感じている「人間の無能さ・無力さ」がよく示されている感じがする。

 いささか適切性を欠く表現になるが、唯円の『歎異抄』とパウロの『ローマ人への手紙』に似たようなものを感じなくもない

 まあ、感じるだけだが。

 

 

 さて、この『歎異抄』、以前『痩せ我慢の説』を意訳したように、こちらも意訳してみようかと考えている。

 どこまで続けられるかは別として。

『聖書』を読み始める

 約1年前のことだっただろうか、「アマゾン・アンリミテッドで『聖書』が読める」ことを知った私はいわゆる「聖書」を読むことにした。

 これまで具体的に読んだ「聖書」、現在読んでいる「聖書」は次のとおりである。

 

 

 

 

 現時点で読み終えているのは、旧約聖書』と『新約聖書』の2点である。

 そして、旧約聖書続編』は現在読んでいるところである。

 まあ、読むといってもざっと見ているだけで、精読からは程遠い状況にある。

 

 

 ところで、私は啓典宗教のカノン(正典)に触れるために、イスラム教のクルアーンの解説書イスラム教ではアラビア語で書かれていないものはクルアーンではない)を読んだことがあった。

 

 

 また、故・山本七平氏や故・小室直樹氏などの書籍を通じて、啓典宗教(ユダヤ教キリスト教イスラム教)についてみてきた。

 さらに、代数学・近代科学・資本主義・民主主義の背景にキリスト教があることもみてきた

 これらの過程で読んだ書籍を挙げていくとざっと次のようになる。

 なお、読んだ書籍が旧版であっても、リンク先は新版のものになっている。

 

(以下、故・小室直樹氏によるもの)

 

 

 

 

(以下、故・山本七平氏によるもの)

 

 

 

 

(その他)

 

 このように、私はこれまで近代(資本主義・立憲主義・民主主義)を知るために様々な書籍を読んだ。

 しかし、「聖書」を直接見たことはなかった。

 そこで、一度、原典を見ようと考え、読み始めたのである。

 クルアーンと異なり「『聖書』は日本語訳だからダメ」ということがないので。

 

 

 以下、全部を読み終えたわけではないが、「聖書」を読んだ感想をメモに残す。

 最初は『旧約聖書』から。

 

 まず、『旧約聖書』のレビ記において「わたしは主である」「わたしはあなたたちの神、主である」という部分が目についた。

 正直、この強調はすごいと感じた。

 それくらい強調しなければならなかったということなのだろうか。

 

 次に、『旧約聖書』のレビ記』などを見ることで律法の細かさを直接見ることができた。

 その意味で、律法は神(主)との契約なのだな、ということも。

 この点、律法の細かい点は小室先生の書籍を読んでいたため知っていた。

 しかし、『レビ記』などを見て、その具体的な細かさを知ることができたのは大きな収穫であった。

 日本教徒がこの細かさを見てどのような感想を抱くか、それは推して知るべしである。

 

 さらに、士師記』・『列王記(上下)』・『歴代誌(上下)』において「主の目から見て悪とされる行為を(行い)」という表現がたくさん目についた。

 この「主の目から見て悪とされる行為」というのは「異教の神を拝む行為」を指す。

 もちろん、これは『出エジプト記』にある十戒に抵触する。

 その結果、古代イスラエルの民がバビロン捕囚の憂き目にあったという点はこれまでの書籍で見てきた通りである。

 しかし、バビロニアネブカドネザル大王を「我が僕」というのは・・・。

  

 次に、『新約聖書』を見て目についたことなどを。

 まず、イエス・キリストの生涯について4人の著者による記録があることを初めて知った

 当然だが、具体的にその4つを読んだのも初めてである。

 

 それから、パウロの書簡(例えば、『ローマ人への手紙』など)についても初めて見ることができた

 小室先生の書籍で述べていたことの意味をより理解することができ、これは大きな収穫になった。

 

 なお、私は旧約聖書の続編を読んでいる。

 ここには、アレクサンダー大王以後の歴史について書かれた『マカバイ記』などが掲載されており、歴史を知るうえで非常に参考になった。

 あと、漠然とした言い方になってしまうが、「聖書」の力というのを感じることができた。

 

 

 以上、「聖書」に触れた感想についてメモを残してみた。

 ただ、相当の分量があり、最初に読んだ部分は結構忘れてしまっている。

 そのため、定期的に読み直そうかな、と考える次第である。

 もちろん、分量が膨大であり、簡単に読み直せるわけではないとしても。

三段階審査論とリスクベース・アプローチ

 今回はふと気づいたことをメモに残す。

 なお、このことは多くの人はなんとなく気付いていることでもある。

 

 

「司法試験の過去問の再検討」で見てきたが、「憲法上の権利の制限に対する合憲性の検討」において用いられる重要な考え方にいわゆる「三段階審査論」がある。

 この三段階を簡単に述べれば、①保護範囲、②制約、③正当化となる。

 

 現時点ではこの発想抜きに司法試験の憲法論文式試験の答案は書くことは難しいと考えられる。

 実際のところ、このブログの再検討では②と①を原則論で検討し、③を「『公共の福祉』による例外」として検討した。

 そして、この流れに例外はない(政教分離原則違反や平等原則違反は別として)。

 

 

 以上は、司法試験の再検討の話。

 話はここからAML/CFT(マネロン・テロ資金供与対策)に移す。

 

 AML/CFTの前提にはRBA、いわゆる「リスクベース・アプローチ」という発想がある。

 このリスクベース・アプローチの対義語はルールベース・アプローチである。

 そして、ルールベース・アプローチでは「法令上の基準を前提に、その基準の遵守」が求められる。

 これに対して、リスクベース・アプローチでは「自分が直面しているリスクを自ら評価し、そのリスクを一定レベル(ゼロではない)まで下げるための手続の実践」が求められることになる。

 

 このように見ると、リスクベース・アプローチの方が自由に見えるが、リスクベース・アプローチの方がやるべきことが多くなる。

 なぜなら、ルールベース・アプローチにおける「法令上の基準」に相応するものを自分たちで考えなければいけないのだから

 このように考えると、「自由ほど高いものはない」といった発想が頭をちらつくが、その点に触れると話が脱線するため、この辺にしておく。

 

 

 ところで、このRBAは次の三段階によって構成されている。

 

① リスクの特定

② リスクの評価

③ リスクの低減

 

 そして、RBAの三段階の構成を見て、私にはある疑問が頭に浮かんだ。

「何故、『特定』と『評価』を分けるのか」と。

 つまり、「特定」も「評価」を一緒に考えてもいいのではないか、という疑問である。

 

 この点、「特定」と「評価」を分けて考えるのがリスクベース・アプローチである以上、私の判断で勝手に分離しないで検討するわけにはいかない。

 そこで、表向きのみ「特定」と「評価」を分けて考えていた。

 

 その一方、最近、私は気付いた。

 リスクの「特定」と「評価」の分離は、「憲法上の権利の保障+制限」という原則論と「『公共の福祉』による例外」を分けるのと同じである、と。

 

 つまり、「憲法上の権利の保障+制限」という原則論では、保証や制限の判断が定性的・抽象的になされる

 この点、取材の自由、筆記の自由、婚姻の自由については「十分に尊重に値する」・「尊重に値する」などと述べており、その意味で「保証される」・「保証されない」の二分法によって判断されていないが、これは例外である。

 また、①規制される具体的行為の背後にある権利の重要性、②具体的行為の規制によって制限される権利の程度、③規制する目的の正当性、④規制手段の合理性や必要性といった具体的な事情は「『公共の福祉』による例外」で検討される。

 その意味で、「『公共の福祉』による例外」における検討は定量的・具体的である。

 

 リスクベース・アプローチでも同様である。

 リスクの「特定」においてリスクの有無を二分論的方法で判断する。

 そして、リスクの「評価」において特定されたリスクを定量的に検討する

 

 

 では、この「特定」と「評価」を分ける理由は何か

 あるいは、「保護範囲」と「制限」と「正当化」を分ける理由はなんだろうか。

 

 私が三段階審査論を眺めていたときは、「証明責任の分配の観点からそうなったのかな」と考えていた。

 この発想は原則と例外という形式から見た場合の発想である。

 なお、「『公共の福祉』による例外」の検討の際に立法裁量がある場合、「例外の例外」として憲法上の権利の制限に合憲性が推定されると考えることになる。

 

 ただ、この証明責任の発想はリスクベース・アプローチに流用することはできない。

 というのも、リスクベース・アプローチでは、「特定」が原則論で「評価」と「低減」が例外にあたるという見方ができるものの、「立場」といったものが観念できないからである。

 つまり、原則と例外を分けたことには別の役割がある(可能性がある)ことになる。

 

 そこで、現段階では、原則と例外を分離する役割は「争点の明確化(によるリソースの効果的投入)」ではないかと考えている。

 つまり、「リスクを評価する必要のないほどリスクの小さい範囲を特定する作業」がリスクの「特定」ですべきこととなる。

 そして、リスクを評価する必要のある範囲が特定されることによって、リスクの評価をその範囲に集中させることができ、リスクベース・アプローチにもかなうことになる。

 

 すると、憲法上の権利の問題で原則と例外を検討する役割もこの点にあるのかもしれない。

 制限された行為と憲法上の権利との関連のない(保護範囲にもないか、または、制限にもあたらない)のであれば、具体的な検討をする必要がないのだから

 

 こう考えることで、原則と例外を分離する意味、あるいは、原則の役割が理解できるような気がする。

 つまり、原則論の役割は争点の明確化である、と。

 まあ、「争点の明確化」ということは自然にやっていることなので、意識しにくいところがあるのかもしれないが。

 

 

 以上はただの思い付きに過ぎず、合っている保証はどこにもない。

 だが、思いついたことを忘れた場合に備えて、メモとしてこのブログに残しておく。

法令の条文にあたる意味 4

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 前々回と前回は「法令の適用」にポイントをあてていたため、話の軸が司法試験にあった。

 しかし、今回の話は司法試験だけではなく、マネロン対策に話を戻す予定である。

 

6 判例の重要性

 まず、前々回に触れた司法試験で問われる能力を再掲載する。

 

① 事案(事件)を短時間で正確に把握する能力

② 法令を適用する能力

③ 妥当な結論を導く能力

④ ①~③の思考過程を文章で説明する能力

 

 そして、前回までで「定義・趣旨・条文」が関係するのは②の法令を適用する能力である旨確認した。

 

 

 では、判例はどのような位置づけになるのか。

 前回まで見てきた通り、判例は具体的な事案に対して法令が適用された結果である。

 だから、判例は「定義・趣旨・条文」が具体化されたものとして重要な価値を持つ

 

 例えば、司法試験で登場する定義については判例などで言及しているものがたくさんある

 したがって、その定義を用いることは実務上は必須であるし、司法試験においても極めて有益である。

 なにしろ、実務に出れば判例がものをいうのだから

 そして、司法試験は法律実務家登用試験なのだから。

 

 また、「妥当な結論」に関する参考例を見つけることができる。

 法令の適用で見てきたとおり、「妥当な結論を導出すること」は重要な能力である。

 そのため、「『妥当な結論』とはなんぞや」となって頭を悩ませることになる。

 この悩みの中で判例」はそこそこの重みをもつであろう。

 もちろん、個人的に個々の判例の結論に同意できないことはあるとしても。

 

 最後に、当然だが判例は文章で書いてある

 とすれば、ロジックの進め方の具体例を見ることができる。

 

 このように、判例は上に書かれた②・③・④を身に着けるための有用な具体例、ということになる。

 以上の意味で判例は重要である。

 たとえ、呪文が「定義・趣旨・条文」であって「定義・趣旨・条文・判例」ではないとしても

 なお、語呂的なものをよくしたければ、「条文・判例・定義・趣旨」としたほうがいいのかもしれない。

 

 

 最後に、「法律の隙間を判例が埋める」と述べたが、判例でも埋められない隙間は学説が埋める」ことになる。

 その意味で、通説・学説は判例と比べて優先順位が下がってしまうのだろう。

 しかし、通説や学説は体系的理解のために役に立つ。

 だから、触れる必要が全くないものでもない。

 

7 マネロン対策において条文に直接あたった意味

 以上、司法試験における条文の重要性についてみてきた。

 よって、マネロン対策の学習でも通用するのか、という疑問を持つことはありえない話ではない。

 

 最初に述べた通り、「条文にあたる重要性・必要性はその人間がマネロン対策のどのパートを担っているか」にも依存する。

 そのため、私が役に立った点が他の人にも一般化できるとは考えていない。

 しかし、「私の立場であれば、金融庁やJAFICの発表した資料を読み、参考書を読み、資格を取った後に条文を見直したことは有益だった」といえる。

 以下、どのように役に立ったのか説明する。

 

 

 まず、一番実感している有用性は「マネロンについてこれまで学んだことの復習となったこと」である。

 

 確かに、私は金融庁ガイドライン、JAFICのNRAなどの資料を読んだ。

 また、参考書を読み、きんざいのマネロン関係の資格を取得した。

 しかし、時間に追われていたからであろうか、表面的な理解にとどまった部分や誤解していた部分もたくさんあった

 そのため、犯収法・犯収法施行令・犯収法施行規則の条文を読み、条文の構造を整理・理解することによって自分の誤解を修正できた

 これは、犯収法の条文を読んだことによる第一の成果である。

 

 

 第二の成果は、「犯収法を用いたマネロン対策の体系的理解が進んだこと」である。

 私は、犯収法・犯収法施行令・犯収法施行規則の条文を参照しながら、「これまで学んだこと、実践したことが犯収法・犯収法施行令・犯収法施行規則のどの条文に位置づけられるのかを確認した。

 その結果、断片的なピースとなっていた知識が犯収法を通じてリンクさせることができた

 

 もっとも、この成果が得られたのは、条文を参照する前に様々な資料を見ていたおかげである。

 マネロンに関する知識・実践が皆無の状況で犯収法を読んだとしても、途中で投げ出す羽目になったであろう。

 その意味で、条文を参照するタイミングは重要であろうと考える次第である。

 たとえ、犯収法・犯収法施行令・犯収法施行規則に重要なことが書かれているとしても。

 

 

 最後に、犯収法・犯収法施行令・犯収法施行規則を見て、憲法の委任立法で学んだことの具体例や行政法の具体例を見ることができた。

 犯収法20条は政令への委任を規定し、犯収法21条では経過措置に関する政令・規則への委任を規定している。

 委任立法に関する論点は憲法を学んだ時に見ていたが、真剣に具体例を見るのは初めてであり、この論点を見直す観点からも有益であった。

 

 また、行政法の具体例を見ることができた」と言えなくもないように見える。

 この点、六法の観点から見れば、犯収法は刑法に属することになるだろう。

 だから、行政法らしい条項があったため、「なるほどなあ」と理解が進む面が少なくなかった。

 その意味でも犯収法の条文を見てきた意味はあったと考えている。

 まあ、行政法の知識がないので、程度についてはよくわからないとしても。

 

 

 以上、犯収法、犯収法施行令、及び犯収法施行規則の条文を見直した意義についてみてきた。

 法令の条文にあたったお話はこの辺で終えることにする。

法令の条文にあたる意味 3

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 今回も「法令の適用に工夫が必要な場面」の具体例についてみていく。

 

5 機械的に法令を適用できない具体例_後編

 前回、機械的に法令を適用できないケースの2つを見てきた。

 今回は残りの2つを見ていく。

 

 この点、①と②のケースと異なり、③と④のケースは「法令の形式的な適用による結論が妥当ではない」という価値判断がある点で共通する。

 つまり、③と④のケースは妥当な結論が先にあって、法的にそれを正当化するための手法という要素が①や②よりも強い。

 また、これらはいわゆる「原則修正パターン」とも呼ばれる手法である。

 

 

 まずは、③の具体例をみていく。

 

(③の具体例)

 Xは和光市にある自己所有の2DKのアパートの一室を地方に居住していたYに1か月68千円の家賃で貸し与えた。

 その後、Yの長年友人Aが1週間ほど関東地方に遊びに来たため、Yは自分の借りているアパートにAを宿泊させてやり、1週間の間、AとYは共同生活を送った。

 その間、近隣ともトラブルがなく、Aは関東地方から去った。

 半年後、偶然その事実を知ったXはYのAに対する行為が賃貸物件の無断転貸(民法612条1項)にあたるとして、XY間の賃貸借契約を解除し、Yに対してアパートから退去するよう請求した。

 Xの請求は認められるか。

 

民法第612条第1項

 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

民法第612条第2項

 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

 

 この具体例は、民法の契約各論で登場する超重要な論点である。

 これを知らないレベルでは、択一試験の合格はおぼつかないだろう。

 

 まず、形式的に見た場合、1週間の間、借りたアパートにAを宿泊させる行為は、「第三者に賃借物の使用」させる行為といえる。

 とすれば、大家たるXは民法612条2項によって賃貸借契約を解除し、Yに出てけ、と言える。

 この点、必ず「Yに出ていけ」と言わなければならないということはないが、そのような選択肢を選べば追い出せる。

 

 しかし、通常は年単位の期間の締結される賃貸借契約で、たかだが1週間宿泊させただけで解除というのは大げさであろう(もし、1週間も使わせたなら解除してかまわない、というのなら1日間にしてもかまわない、形式的な結論に変わりはないから)。

 事実、Xも半年も経過してからたまたまその事情を知ったのだし、YとAのアパート利用に問題があったわけでもない。

 つまり、一般論として無断転貸がダメであり契約を解除できるとしても、本件のような場合には例外的に解除できないと考えることになる。

 このように、③の例では「結論の妥当性判断」が先にある。

 

 もっとも、例外的に逆の結論を採用するならば法律上の根拠が必要になる

 これがいわゆる「法律構成」と呼ばれるものである。

 この「法律構成」を生み出す際に必要になるのが、条文の趣旨、今回でいうところの民法612条の趣旨である。

 

 この点、賃貸借契約は相互の信頼関係を基礎とした継続的契約であるところ、一般論として無断転貸は賃貸借契約の信頼関係を破壊するため、民法612条は無断転貸をした場合の賃貸人の解除権を認めている。

 つまり、民法612条の趣旨は「無断転貸によって継続的契約たる賃貸借契約を支える信頼関係を破壊された場合に、賃貸人の解除権を認めることで賃貸人の利益を保護すること」にある。

 とすれば、「信頼関係を破壊しないレベルの無断転貸であれば、解除権を発生させる必要はない」と言える。

 そこで、「無断転貸があっても、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば、例外的に解除権は発生しない」という規範を立てることになる。

 そして、本件においてもこの規範を満たされればXに解除権は発生せず、Xの請求は認められないことになる。

 

 余談だが、「背信的行為に認めるに足りない特段の事情がある」という一見して奇妙な表現には、この特段の事情をいずれが立証しなければならないのか、という判断も含んでいる。

 もちろん、この特段の事情は賃借人側、本件ならばYが立証する必要があり、立証できなければ、あるいは、立証に失敗すればYは負ける(Xが勝つ)。

 

 ちなみに、判例は次のものが参考になるだろう。

 

昭和29年(オ)第521号家屋明渡請求事件

昭和31年5月8日最高裁判所第三小法廷判決

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/505/057505_hanrei.pdf

 

 ところで、この③のケースは、いわゆる「法律の抜け穴を探す」ような作業である

 だから、このようなものを技術を悪しきものと評価することはないではない。

 ただ、法令の適用作業には「妥当な結論を導出する」という要素がある

 よって、「法令の適用」には「妥当な結論を導出するために、法律の抜け穴を探す」という作業が当然に含まれることになる。

 いくら完璧を目指しても、変化し続ける社会において完璧な法令を編纂することはできないのだから。

 

 

 最後に、④の具体例について。

 これについては超有名な論点があるので、これに登場していただこう。

 

(④の具体例)

 Yは、財産隠しのため自分名義の土地を自分の息子Aの名義に変更した。

 また、この土地には建物があり、Yが自宅兼事務所として利用しており、そのことは現地を見れば明らかにわかることであった。

 AはYの不動産が自分の名義になっていることを知り、この不動産を事情の知らないXに売却し、登記を移転した。

 XはYに対して土地の引き渡しを請求した。

 Xの請求は認められるか。

 

民法第94条第1項

 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

民法第94条第2項

 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

民法192条

 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

 

 本件で最も悪いのは虚偽の登記を奇貨として第三者をだましたAであろう。

 だから、究極的に責任を取るべき人はAということになる。

 しかし、このようなケースの場合、Aは高跳びして行方不明か、Yに売却した代金を費消してしまって責任をとれないことが多い

 だから、民法という観点から見た場合、この問題は「XとYのいずれがAの責任を肩代わりするか」という問題になる。

 もちろん、刑法的に考えれば、別の問題が生じうることは当然である。

 

 この点、Yは登記だけを安易に信じて、無権利者から土地を購入した不注意な人である(現地を訪れれば「あれ?」となることは明らかであるから)。

 また、Xは財産隠しのためありもしない登記をでっちあげた悪い人、ということになる。

 では、XとYのいずれにAの責任を肩代わりさせるべきか。

 

 妥当な結論はさておいて、まず、形式的な結論を確認する。

 ここで、民法94条2項は「通謀虚偽表示に対する善意の第三者」を保護している。

 しかし、本件ではYは単に登記を移しただけであって、YとAとの間に「通謀」がない。

 また、単に登記を移しただけであって、意思表示もない。

 だから、民法94条2項によってXが保護されるわけではない

 

 次に、本件で引き渡しを求めているのは不動産であるから、動産の即時取得を認めた民法192条の適用もない

 

 というわけで、法令を形式的に適用した場合、原則としてXの請求が認められない、ということになる。

 問題はこれで果たしていいのか、ということだろう。

 登記を信じたのにその権利が保護されないというのであれば、登記への信頼が軽んじられることになる。

 また、登記を調べる以上の調査が必要となって取引コストが激増する。

 これらの事情から、本件のようなXを例外なく保護しないことは「取引の安全」を著しく害することになる

 

 他方、取引の安全を害するからという理由で安易にXを勝たせることは、今度は本来の土地の所有者の権利、つまり、「私的自治の原則はどこへ行った」ということになる。

 このことは、事例を変更して、「AがYの自宅から関係書類を盗んで申請書を偽造して登記を移転し、その後、Yに売り飛ばした場合」を考えてみればいい。

 この場合、取引の信頼を考慮して善意のYを保護するのであれば、Xは知らぬ間に所有権を失うこととなり、契約自由の原則が一切保護されないこととなる。

 そこで、③のケース同様、法律構成が必要となる。

 

 ここで、とっかかりになるのが、民法94条2項である。

 つまり、民法94条2項の趣旨を用いて、民法94条2項に類似した場面にも94条2項があたかも適用される形にするのである。

 このことを「類推適用」という。

 

 この点、民法94条2項の趣旨は権利外観法理、つまり、「自ら虚偽の外観を作出した者はそれを信じた善意の第三者に対して責任を負う」という点にある。

 ならば、民法94条が想定する仮装売買のような通謀虚偽表示だけではなく、自ら虚偽の外観を作出した場合にも民法94条2項を類推適用して第三者を保護すべきといいうる。

 そこで、①虚偽の外観の存在、②外観作出に対する権利者の帰責性、③第三者の善意の3条件を満たす場合には、民法94条2項の類推適用によって第三者の権利取得を認める、と考えることになる。

 

 これで基準ができたので、あとはあてはめである。

 ちなみに、私が受験した平成18年の旧司法試験・二次試験・論文式試験民法はこの論点が登場した。

 なお、③の善意には無過失が必要か不要か、といった論点もなくはないが、法令の適用の具体例として示しているに過ぎない本件ではこの点は割愛する。

 

 

 以上、機械的に法令を適用できないケースの具体例をみてきた。

 参考にしていただければ幸いである。

 

 次回は、判例の重要性についてみていく。

法令の条文にあたる意味 2

 今回はこの記事の続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 なお、私が司法試験(昔のシステム)に合格したころ、参考書(学説・理論)よりも条文の重要性について触れいている司法試験(現行のシステム)の合格体験記があるため、その文章のリンクを貼っておく。

 もちろん、この合格体験記は当時のものであるから、現時点では幾分か修正しないといけない部分があるかもしれないが。

 

www.azusawa.jp

 

 あと、この合格体験記は条文と判例の等価的重要性を主張しているようにも見えるため、私の文章と趣旨がずれているかもしれない。

 

3 「法令を適用する」とは

 前回、判例(学説)は定義・趣旨・条文に劣後する」と述べた。

 その理由を司法試験で問われる能力からみていく。

 

 

 まず、司法試験で問われる能力を列挙してみる。

 

① 事案(事件)を短時間で正確に把握する能力

② 法令を適用する能力

③ 妥当な結論を導く能力

④ ①~③の思考過程を文章で説明する能力

 

 つまり、定義・趣旨・条文は「法令の適用」という作業において必須の部分になる。

 そして、司法試験は法律実務家採用試験と言い換えられるところ、法律実務家において法令の適用は必須の能力であるから、「定義・趣旨・条文」という呪文(!)が唱えられるのもむべなるかな、といえる。

 

 

 ここで、法令の適用作業をもう少し分解する

 

 司法試験の論文式試験の問題では「条文を機械的に事案にあてはめて終わり」という問題は原則として登場しない(前座として登場することはないではないが)。

 

 この点、短答式試験では頻繁に登場する。

 そのことは上の合格体験記でも述べられている通りである。

 

 また、実務においてこのようなケースが少なくない。

 ただ、実務の場合、事実関係自体に争いがあることがほとんどであるし、争いがなかった場合でも当事者の思惑・後の事情・紛争解決コストなどを加味するといった別の事情があるため、さらにややこしくなるのだが。

 

 

 では、「条文を機械的に事案にあてはめられない」ケースとはどんなケースか。

 パターンをざっくり分類すれば、次の4つになる。

 

① 事案に適用されうる条文(一般条項を除く、以下同じ)が2つ以上ある場合

② 事案に適用されうる条文が1個しかないが、適用される条文の文言が不明確な場合

③ 事案に適用される条文が1個しかなく、適用される条文の文言が明確であるが、その結論が一方的であって妥当ではない場合

④ 事案に適用できる条文がなく、その結果導出される結論が妥当でない場合

 

 では、このような場合にどのようにして法令を適用するのか。

 まず、条文の背後にある考え方、いわゆる条文の趣旨を参照する。

 そこで、趣旨を参照しながら法律上の効果を発生される条件(いわゆる「要件」)に関する具体的な基準を作り、あるいは、条文の文言の定義を定める

 あとは、事例と基準や定義を参照して、基準を満たすか、定義に該当するかの判断をして、結論を出せばいい。

 

 つまり、趣旨と定義は、法令を適用して基準を生み出す際に不可欠の道具になる

 このいわゆる「規範定立」の部分は法令を適用する際の必須作業で、これが抜ければ、価値判断一色になったり、評論文になってしまう。

 その意味で、条文と定義と趣旨は、法令の適用において重要な役割を果たすことになる。

 

 このようにみると、判例・学説は、法令の適用それ自体ではなく、その過程で生まれたもの民法の言葉で言えば「果実」)ということになる。

 そういう意味で、定義・趣旨・条文に比較すれば、判例と学説は劣後するのかなあ、と考える次第である。

 まあ、「劣後する」といっているにすぎず、特に、判例は定義・趣旨・条文の次に重要なもの、ではあるとしても。

 

4 機械的に法律を適用できない具体例_前編

 以上の一般論ではピンとこないかもしれない。

 また、具体例と法律の往復は法律の理解のための極めて重要な要素である

 そこで、①から④の具体例を例示する。

 なお、以下に示すケースは判例を前提としており、また、判例上の結論も存在する。

 

 

 まずは、①の複数の条文が適用されうる場合のケースから。

 事案と参照すべき条文は次のとおりである。

 

(①の具体例)

 ある土地と家屋(以下、2つあわせて「本件不動産」という。)をAとYが持ち分半分ずつで共有しており、その旨の登記も存在している。

 また、本件不動産はAの住居として利用し、これに対してAはYに対価を支払っていた。

 さて、Aには内縁の妻Xがおり、XとAは共同生活を送っていた。

 しかし、AとYは疎遠だったこともあり、Aに内縁の妻Xがいることを知らなかった。

 そんな状況でAは死亡した。

 Aには子と兄弟はおらず両親も既に他界しており、法律上の相続人が存在しなかった。

 そこで、Xが特別縁故者として家庭裁判所に請求したところ、家庭裁判所はXを特別縁故者として認め、Aの相続財産の全部を与える決定をした。

 その一方、Aの死亡を知ったYは民法255条を根拠に不動産が単独所有になったとして、不動産を単独登記に変更した。

 そこで、XはYに対してAの持ち分に関する共有持分の変更登記を請求した。

 Xの請求は認められるか。

 

(参照条文)

民法255条

 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

民法958条の2第1項

 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。

 

 本件では、適用する条文が2つあり、適用する条文によって結論が変わってしまう。

 そのため、いずれが優先するかが問題となる。

 なお、判例特別縁故者の権利を優先させた

 その際には、それぞれの条文の趣旨を参照している(詳細は後述の判例参照)。

 

 昭和63年(行ツ)第40号不動産登記申請却下決定取消事件

平成元年11月24日最高裁判所第二小法廷判決

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/769/052769_hanrei.pdf

 

 

 次に、②の具体的なケースをみていく。

 

(②の具体例)

 Xはとある市の市長を長年在職し、市長の退任後、その地方の県知事選挙に立候補しようとしていた。

 その選挙活動期間の直前、出版社Aは、極めて扇情的な表現を用いてXの過去に関する虚偽の事実を列挙した記事を雑誌に掲載しようとしていた。

 そして、雑誌は既に販売部数分だけ印刷され(印刷された雑誌を「本件雑誌」という。)、校正作業を残す段階に入っていた。

 そこで、Xは名誉権侵害の予防を理由に、これらの雑誌の全部を執行官保管させるとともに、雑誌の印刷、製本、販売、頒布の禁止等を命じる仮処分をY裁判所に申請した。

 Y裁判所はこれを仮処分を決定し、本件雑誌は全て執行官に押収された。

 XはYの仮処分は憲法21条2項の「検閲」にあたると主張し、本件雑誌の返還を請求した。

 Xの主張は認められるか。

 

(参照条文)

憲法12条後段

 又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

憲法13条後段

 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法21条1項

 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

憲法21条2項

 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

 この事件の元ネタは北方ジャーナル事件である。

 ただ、ここでは表現の事前抑制が許されるかという部分ではなく、「裁判所の仮処分が『検閲』にあたるか」という観点だけを見ていく。

 

昭和56年(オ)第609号損害賠償請求事件

昭和61年6月11日最高裁判所大法廷判決

(いわゆる「北方ジャーナル事件最高裁判決」)

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/665/052665_hanrei.pdf

 

「検閲」といえば「思想表現物の発表を制限する行為」という大まかな範囲は把握できるとしても、その範囲(境界)が明確かと言われれば、必ずしもそうではない。

 このことは、「検閲」に関する論点を挙げていけばわかる。

 

・検閲の主体は、行政権だけではなく司法権も含むのか

 本件の争点はまさにこれである。

 

・表現内容は、思想内容だけではなく表現内容も対象となるのか

 例えば、旧ツイッターのあいさつとしてつぶやかれた「おはよう」などといった表現内容も検閲の対象になるのか、とか。

 まあ、17文字の俳句が思想内容の範疇に入らないことはないだろうから、数文字だから表現内容にならない、ということはないのかもしれない。

 

・検閲は発表の禁止に限るのか

 例えば、発表・出版は自由に行わせるが、発表の際に会場の敷地の周囲を機動隊に囲ませ、聴衆は会場に入れない(聴けない)状況にするのは「検閲」に該当するか。

 あるいは、出版自体は禁止されていないが、発売日の前夜に書店に出版物が配布され、発売日の早朝に書店に回っているすべての出版物の全部を差し押さえる行為は「検閲」に該当するか。

 まあ、これらの行為はたとえ「検閲」に該当しないとしても、「表現の自由に対する違法な公権力の行使」になる可能性は十分あるだろうけれども。

 

 以上より、訴訟・裁判という観点から見れば、「検閲」という文言は基準としてあいまいである。

 そこで、条文の趣旨を遡ることで条文解釈をして「検閲」を定義する必要がある

 なお、最高裁判所の「検閲」の定義の説明は割愛する。

 

 

 次の③の具体例を見ていこうと考えていたが、既にそれなりの分量になってしまった。

 残りの具体例と判例の重要性については次回に回す。

法令の条文にあたる意味 1

0 はじめに

 現在、私はこのブログで「犯収法とその関連法令の条文を読むことにより、マネロ対策(AML/CFT)について勉強して、そのプロセスをこのブログで公開する」という作業を行っている。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 当然のことではあるが、AML/CFTに関する参考文献はたくさんある。

 私個人も「マネロン対策として次の書籍に目を通す・読む・問題を解く」といったことを行っている。

 

 

 

 

 そのため、条文なんぞを直接あたらずとも参考書を読めば足り、犯収法や関連法令の条文を読む必要はあるのか、という疑問が生じるかもしれない。

 特に、大学受験的な発想で考えれば、この質問はもっともなものであろう。

 

 この点、「犯収法と関連法令の条文を読み、犯収法関連法令を整理していく作業」はマネロンの理解を促進する。

 したがって、条文を読む合理性は一定程度に存在する。

 しかし、犯収法と関連法令の条文を読む必要性は、その人のマネロンとの関わり方に全面的に依存する。

 ぶっちゃけ、その人の適性と目的に依存する

 だから、合理性はさておき、必要性は「私の適性とマネロンを学ぶ目的から条文を読むことに意味がある」としか言えない。

 そして、当然だが、マネロンを学ぶ具体的な目的をここで書くつもりはない。

 

 

 ところで、このブログでは少し前に司法試験の過去問を検討していた。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 そこで、司法試験との観点から条文にあたる意味について述べておく

 司法試験に合格する必要がある人間にとっては重要だから。

 あるいは、そうでなくても「そういうものなのか」と知っておけばいろいろと応用が効くだろうから。

 

 

 なお、一点注意事項。

 私は、「条文にさえあたればいい、参考書は不要」などと述べる気はない

 このことは、私自身、条文を整理する前に、上の参考書や政府機関の資料(ガイドラインその他)を見ていることが重要な間接事実となるだろう。

 あるいは、以前紹介した司法試験法3条4項の条文も参考になるかもしれない。

 少なくても、司法試験は六法の関連法令を暗記すれば解ける試験ではないから。

 

(司法試験法3条4項)

 司法試験においては、その受験者が裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を備えているかどうかを適確に評価するため、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、法律に関する理論的かつ実践的な理解力、思考力、判断力等の判定に意を用いなければならない。

 

1 「定義・趣旨・条文」という呪文

 当時、司法試験を合格した人間が唱えていた呪文に「定義・趣旨・条文」というものがある。

 もちろん、この呪文には「定義・趣旨・条文」が大事であることを再確認させる効果しかなく、間違っても「定義・趣旨・条文」と唱えれば記憶力や文章力がアップするわけではない

 

 

 この点、条文とは具体的な条文である。

 例えば、上で参照した条文もこの条文の具体例である。

 

 

 次に、趣旨とは立法趣旨であり、条文が制定された趣旨である。

 これに関する超有名な例を出せば、民法94条2項がある。

 

民法94条

第1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

第2項 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

 

 民法94条を私釈三国志風に意訳すれば「口裏をあわせた仮装合意は無効だ、ただし、知らない第三者の権利が関係する場面では有効だ」となる。

 

 では、この民法94条2項の趣旨は何か。

 それがいわゆる「権利外観法理」と呼ばれているもので、「自ら虚偽の外観を作出したものは、その外観を信じた第三者に対して責任を負う」というものである。

 つまり、民法94条2項の趣旨は権利外観法理」ということになる。

 その結果、民法94条2項が直接適用されない場合であっても、同条文を類推適用して妥当な解決を図ることになる(この点は後述)。

 

 

 最後に、定義は条文の文言の意味である。

 例えば、民法725条には次の規定がある。

 

民法725条

 次に掲げる者は、親族とする。

一 六親等内の血族

二 配偶者

三 三親等内の姻族

 

 つまり、この規定は、「親族とは、①六親等内の血族、②配偶者、③三親等内の姻族」というように定義を定めていることになる。

 

 このように文言の意味を明確に示すことも重要になる。

 でないと、基準が不明確になるから。

 

2 定義・趣旨・条文とそれ以外の優劣

 さて、「定義・趣旨・条文」という呪文の中には最高裁判所判例控訴審判例)は入っていない。

 または、著名な教授の書いた書籍(基本書)や論文も入ってない。

 さらに言えば、過去問も。

 

 この点、過去問は当然の前提として省かれている可能性はないではない

 なぜなら、大学受験を経ている通常の司法試験受験生が「試験において過去問を見ない」などということはでは考えられないだろうから。

 それゆえ、過去問を上の3つに追加することはありかもしれない。

 まあ、受かってしまえば過去問は無用なものに転化するのは当然として。

 

 

 他方、判例・学説それ自体はこの3つに劣後する、とは言える。

 

 確かに、定義や趣旨には判例や通説によって形成されているものもある

 著名なものをいえば、「検閲」(憲法21条2項)とか。

 つまり、定義や趣旨の原典が判例や学説にあることはない話ではない。

 

 また、過去問の事例の元ネタが判例、といったことは頻繁にある。

 そこで、過去問を通じて判例を参照することもある。

 それは、司法試験の過去問再検討でみてきたとおりである。

 しかし、定義・趣旨・過去問と関連性のない判例・通説はその重要性が明らかに下がることになる。

 

 では、なぜ、判例は定義・趣旨・条文に劣後するのか

 今回はその理由を「司法試験で問われる法律実務能力」の内容から考えてみる。

 

 

 と、ここまで続けてきて話がマネロンから司法試験に脱線したうえ、長くなりそうである。

 したがって、続きは次回に。

 

 あと、なんだかんだ言っているが、「このブログのノルマをつぶすため」というのも極めて重要な理由である

 ブログのノルマがなければ、マネロンの学習成果をブログにしようとは考えなかっただろうから。

マネー・ローンダリング等の勉強を始める 6

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 犯収法の条文を通じて、マネロン対策(主にAML/CFT)についてみていく。

 

9 犯収法第4条の構造

 前回までで、犯収法と犯収法施行令と犯収法施行規則の紐づけは完了した。

 そこで、今回から犯罪収益移転防止法の第4条を見ていく。

 

 犯収法第4条は犯罪収益移転防止法第1条で示されている「顧客等の本人特定事項等の確認」について書かれている。

 この点を考慮すれば、この条文は超重要な条文と言えよう

 

 もっとも、犯収法第4条は第1項から第6項まである。

 また、関連する犯収法施行令は第7条から第14条まである。

 さらに、犯収法施行規則は第4条から第18条まである

 そこで、前回みてきた犯収法の構造を確認しておく。

 

 その結果は次のとおりである。

 

 

 犯収法第4条第1項 特定事業者が(特定業務の)特定取引を行う際に行うべき「取引時確認」

  施行令第6条(金融機関等の特定業務)

  施行令第7条(金融機関等の特定取引)

   第1項 金融機関等の特定取引

    施行規則第4条(簡素な顧客管理を行うことが許容される取引)

     第1項 令第七条第一項に規定する簡素な顧客管理を行うことが許容される取引

     第2項 特定取引該当回避目的でなされる分割取引に関する特則

     第3項 令第九条第一項に規定する簡素な顧客管理を行うことが許容される取引

    施行規則第5条(顧客管理を行う上で特別の注意を要する取引)

    施行規則第6条(顧客等の本人特定事項の確認方法)

     第1項 通常の特定取引における本人特定事項の確認方法

     第2項 通常の特定取引における本人特定事項の確認において住所が本人確認書類に記載された住所と異なる場合の確認方法

     第3項 法人を顧客とする通常の特定取引における本人特定事項の確認方法の特則

     第4項 本人特定事項の確認を行う場合の取引関係文書を書留郵便等により転送不要郵便物等として送付する方法の代替手段

    施行規則第7条(本人確認書類)

    施行規則第8条(本邦内に住居を有しない外国人の住居に代わる本人特定事項等)

     第1項 法第四条第一項第一号に規定する主務省令で定める事項

     第2項 法第四条第一項第一号の本邦内に住居を有しないことに該当する基準

    施行規則第9条(取引を行う目的の確認方法)

    施行規則第10条(職業及び事業の内容の確認方法)

    施行規則第11条(実質的支配者の確認方法等)

     第1項 通常の特定取引における実質的支配者の確認方法

     第2項 実質的支配者の判定基準

     第3項 議決権を直接又は間接に有するかどうかの判定基準

     第4項 実質的支配者の判定における国等とその子会社に関する特則

    施行規則第12条(代表者等の本人特定事項の確認方法)

     第1項 国等の代表者等の本人特定事項の確認の方法に関する施行規則第6条の準用及び読み替え

     第2項 転送不要郵便物等を代表者等の現在の住居へ送付することによる代表者等の本人特定事項の確認方法

     第3項 転送不要郵便物等を代表者等の現在の住居以外の場所へ送付することによる代表者等の本人特定事項の確認方法

     第4項 転送不要郵便物等を送付することに代替する手段

     第5項 施行規則第1項の代表者等の基準

    施行規則第13条(法第四条第一項に規定する取引に際して行う確認の方法の特例)

     第1項 通常の特定取引において本人特定事項を確認する際の特則

     第2項 施行規則第12条5項の準用

   第2項 信託・信託行為などによる特定取引に関する補足

   第3項 特定取引該当回避目的でなされる分割取引に関する特則

  施行令第8条(司法書士等の特定業務)

   第1項 司法書士等の顧客のためにする次に掲げる行為又は手続のうち特定業務に該当しないもの

   第2項 司法書士等の会社等の組織、運営又は管理に関する行為又は手続のうち特定業務に該当するもの

   第3項 司法書士等の特定業務に該当する組織、運営又は管理に関する行為又は手続のうち会社以外の法人、組合又は信託に該当するもの

   第4項 司法書士等の「これらに相当する」行為又は手続のうち特定業務に該当するもの

  施行令第9条(司法書士等の特定取引)

   第1項 士業等の特定取引

   第2項 士業等との特定取引該当回避目的としてなされる分割取引における特則

  施行令第10条(法第四条第一項第一号に規定する政令で定める外国人)

 

 犯収法第4条第2項 ハイリスク取引時の「厳格な取引時確認」

  施行令第11条(法第四条第二項に規定する政令で定める額)

    施行規則第14条(厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引に際して行う確認の方法)

     第1項 ハイリスク取引の取引時確認における本人特定事項の確認方法

     第2項 ハイリスク取引の取引時確認における取引目的と職業・事業内容の確認方法

     第3項 ハイリスク取引の取引時確認における実質的支配者と実質的支配者の本人特定事項の確認方法

     第4項 ハイリスク取引の取引時確認における資産及び収入の確認方法

  施行令第12条(厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引等)

   第1項 法第4条第2項第1号に該当するハイリスク取引

   第2項 法第4条第2項第2号に該当するハイリスク取引

   第3項 法第4条第2項第3号に該当するハイリスク取引

    施行規則第15条(外国政府等において重要な地位を占める者)

 

 犯収法第4条第3項 特定取引を行う際に行うべき「取引時確認」の適用除外

  施行令第13条(既に確認を行っている顧客等との取引に準ずる取引等)

   第1項 別の特定事業者に委託した場合、特定事業者の組織変更した場合における既に確認を行っている顧客等との取引に準ずる取引等に該当する場合

   第2項 既に確認を行っている顧客等との取引に準ずる取引等に該当する場合

    施行規則第16条(顧客等について既に取引時確認を行っていることを確認する方法)

     第1項 施行令第十三条第二項に規定する主務省令で定める方法

     第2項 特定事業者が顧客等又は代表者等と面識がある場合等の特則

    施行規則第17条(令第十三条第二項に規定する主務省令で定める取引)

 

 犯収法第4条第4項 会社と特定取引等を行う際の代表者や担当者に対する本人確認

 

 犯収法第4条第5項 顧客等が国・地方公共団体その他の場合の第1項・第2項の読み替え

  施行令第14条(法第四条第五項に規定する政令で定めるもの)

    施行規則第18条(国等に準ずる者)

 

 犯収法第4条第6項 取引時確認における虚偽回答の禁止

 

 

 うーん長い。

 とはいえ、これを見ていかないと理解はおぼつかない。

 そこで、犯収法第4条第1項から見ていく。

 

10 特定業務について

 まず、犯収法第4条第1項の柱書を確認する。

 

(以下、犯収法第4条第1項の柱書を引用、ところどころ改行、強調は私の手による)

 特定事業者(第二条第二項第四十五号に掲げる特定事業者(第十二条において「弁護士等」という。)を除く。以下同じ。)は、

  顧客等との間で、別表の上欄に掲げる特定事業者の区分に応じそれぞれ同表の中欄に定める業務(以下「特定業務」という。)のうち

  同表の下欄に定める取引(次項第二号において「特定取引」といい、同項前段に規定する取引に該当するものを除く。)を行うに際しては、

  主務省令で定める方法により、当該顧客等について、

  次の各号(第二条第二項第四十六号から第四十九号までに掲げる特定事業者にあっては、第一号)に掲げる事項の確認を行わなければならない。

(引用終了)

 

 つまり、犯収法第4条第1項の取引時確認は「①(弁護士を除く)特定事業者が②特定業務のうち③特定取引を行う場合」に行う必要があることになる。

 そして、犯収法第4条第2項と第3項を参照すると「④ハイリスク取引に該当しないこと、⑤第3項の取引に該当しないこと」も犯収法第4条第1項の取引時確認が必要な場合の要件になると言える(それぞれの場合、異なる対応が必要になる)。

 そこで、ここから①から⑤の要件について確認する。

 

 

 なお、ここから注意事項。

 このブログは私の学習メモであり(詳細は次のリンク参照)、犯収法の解説ブログではない(犯収法を解説しているネット記事は優秀なものを含めて山のようにある)。

 そのため、私の関心のない分野に対する言及は省略したり簡略化する。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 まず、前述の5つの要件のうち、①特定事業者については士業を除いた残りの特定事業者なので細かく踏み込む必要はない。

 

 そこで、次の②特定業務についてみていく。

 すると、別表と犯収法施行令を参照する必要があるらしい。

 以下、金融機関の特定業務についてみていく。

 

 犯収法の別表に従うと、金融機関の特定業務は「金融に関する業務その他の政令で定める業務」とあり、政令たる犯収法施行令第6条第1号を見ると、金融機関の特定業務は「当該特定事業者が行う業務」とある。

 つまり、普通の金融機関であれば、総ての業務が特定業務に該当することになる。

 

11 特定取引の構造について

 次に、③特定取引についてみていく。

 犯収法の別表によると、金融機関の特定取引は「預貯金契約(預金又は貯金の受入れを内容とする契約をいう。)の締結、為替取引その他の政令で定める取引」であり、政令たる犯収法施行令第7条第1項第1号にはたくさんの取引が列挙されている。

 当然、これを全部見ていくと大変なことになるため、最初に大枠を確認する。

 

 

 まず、犯収法施行令第7条の柱書を確認する。

 

(以下、犯収法施行令第7条の柱書を引用、適宜改行、強調は私の手による)

 次の各号に掲げる法の規定に規定する政令で定める取引は、

   当該各号に定める取引(法第三条第三項に規定する犯罪収益移転危険度調査書に記載された当該取引による犯罪による収益の移転の危険性の程度を勘案して簡素な顧客管理を行うことが許容される取引として主務省令で定めるものを除く。以下この項において「対象取引」という。)

  及び

   対象取引以外の取引で疑わしい取引(取引において収受する財産が犯罪による収益である疑い又は顧客等が取引に関し組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第十条の罪若しくは国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号)第六条の罪に当たる行為を行っている疑いがあると認められる取引をいう。第九条第一項及び第十三条第二項において同じ。)その他の顧客管理を行う上で特別の注意を要するものとして主務省令で定めるもの

  とする。

(引用終了) 

 

 別表と上の施行令を見た場合、特定取引は大きく次の2種類に分けられる。

 

・対象取引(犯収法施行令に列挙されているが、施行規則には列挙されていないもの)

・疑わしい取引等

 

 そして、施行規則5条と7条を参照しながら分解していくと、次の①から④の条件を満たすものと言える。

 

① 施行令第7条に列挙されている取引

② 「簡素な顧客管理を行うことが許容される取引」ではない取引

③ 疑わしい取引

④ 同種の取引の態様と著しく異なる態様で行われる取引

 

 これらが特定取引の対象ということになる。

 そして、核となるのが①と③と言えようか。

 

 以下、①から④についてみていく。

 

12 犯収法施行令第7条記載の取引

 まず、犯収法施行令第7条記載の取引(①)を確認する。

 犯収法施行令第7条1項1号には39個の項目(イ・ロ・・・)が列挙されている。

 しかし、ざっくりと分類すれば次のようになると言える。

 

 

(プレースメント関係)

イ・ロ(以下、預貯金口座関係)・ハ・二(以下、信託関係)・ホ・へ・チ(以下、保険契約・共済契約関係)・リ・ヌ(以下、金融商品関係)・ル(以下、有価証券関係)・ヲ・ワ・カ(消費貸借契約等)・ヨ・タ(以下、電子決済手段)・ツ・ナ・ム・ヰ(以下、資金決算関係)・オ(以下、暗号資産関係)・マ(金融商品先物取引法関係)・コ(当座預金口座関係)・エ(貸金庫関係)・テ(社債、株式等の振替関係)・ア(電子記録債権関係)・サ(保護預り関係)・ユ(外国銀行関係)

 

 これらは口座といった財産(金銭・有価証券・金融商品・暗号資産・その他高価な財物)を預けたり、移動したりするための前提部分である。

 ここはマネー・ローンダリングの観点から見れば「プレースメント」にあたると言える。

 

 

(レイヤリング関係)

レ・ソ(以下、電子決算関係)・ネ・ラ・ウ・ノ(以下、資金決済関係)・ク・ヤ(暗号資産関係)・ケ(現金送金・為替・小切手取引)・フ(振替)

 

 次に、10万円を超える財産の移動(為替取引・送金・移転・交換)

 この点、為替取引というのはマネー・ローンダリングの観点から見れば「レイヤリング」にあたる。

 ただ、レイヤリングについては10万超えという閾値があるようである。

 

 

(インテグレーション関係)

ト(満期の保険金・共済金・返戻金、解約返戻金関係)・ケ(現金・小切手・無記名公社債等関係、ただし、200万円を超えるもの)・キ(両替、ただし、200万円を超えるもの)

 

 これらはレイヤリングした財産を回収する手段に該当し、マネー・ローンダリングから見れば「インテグレーション」に該当する。

 もっとも、送金よりも閾値が高くなっている。

 入出金は送金よりも頻繁にあるためであろうか。

 

 以上、犯収法施行令第7条第1項第1号の項目を整理してみた。

 こうやって見れば、理解できないではないような気がしないでもない。

 

 

 なお、閾値があることを逆用する輩が出てきてもおかしくない。

 そこで、犯収法施行令第7条第3項は、特定取引の潜脱のためになされたであろう分割取引を一括した契約とみなす旨の条項を置いている。

 

 例えば、250万の出金を意図したが、1回の出金で完了させようとすれば対象取引に該当するため、50万円の出金を5回に分けて行う、とか(数値は適当である)。

 あるいは、自分の預金口座から他人の預金口座に40万を送金しようとすれば特定取引に該当するため、8万円の送金を5回にして行う、とか(こちらの数値も適当である)。

 

 この点、取引の手間を考慮すれば、これらの取引は非効率である。

 しかし、マネー・ローンダラーは金銭を洗うための洗剤(手数料)を惜しまないであろうから、このような手段を採用することは十分ありうる。

 とすれば、このような分割取引を1つの取引としてみなすことの必要性は十分あるであろう。

 

 

 以上、犯収法施行令第7条についてみてきた。

 次回は、特定取引の残りの要件をみていく。

マネー・ローンダリング等の勉強を始める 5

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 犯収法の条文を通じて、マネロン対策(主にAML/CFT)についてみていく。

 

8 犯収法と犯収法施行令に犯収法施行規則を紐づける

 前回までで犯収法と犯収法施行令の紐づけは完了した。

 今回は、これに犯収法施行規則の紐づけを行う。

 

 その結果は次のとおりである。

 なお、犯収法は「法」、犯収法施行令は「施行令」または「令」、犯収法施行規則は「施行規則」と略して書く。

 

 

犯収法 第1章 総則

 法第1条(目的)

 法第2条(定義)

  第1項 「犯罪による収益」の定義

   施行令第1条(定義)

     施行規則第1条(定義)

  第2項 「特定事業者」の定義

   施行令第2条(法第二条第二項第三十号に規定する政令で定める者)

   施行令第3条(法第二条第二項第三十九号に規定する政令で定める賃貸)

     施行規則第2条(令第三条第一号に規定する主務省令で定めるもの等)

      第1項 令第3条第1号の「これに準ずるもの」

      第2項 令第3条第2号の「当該物品の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているもの」の基準

   施行令第4条(貴金属等)

    第1項 「貴金属」の定義

    第2項 「宝石」の定義

  第3項 「顧客等」の定義

   施行令第5条(顧客に準ずる者)

     施行規則第3条(信託の受益者から除かれる者に係る契約)

 法第3条(国家公安委員会の責務等)

  第1項 国家公安委員会の責務

  第2項 疑わしい取引や犯罪収益に関する情報の集約・整理・分析等

  第3項 犯罪収益移転危険度調査書の作成・公表

  第4項 国家公安委員会による他の関係機関・関係者に対する必要な協力の要請

  第5項 行政機関と地方公共団体の関係機関との犯罪収益移転防止に関する協力

 

犯収法 第2章 特定事業者による措置

 法第4条(取引時確認等)

  第1項 特定事業者が(特定業務の)特定取引を行う際に行うべき「取引時確認」

   施行令第6条(金融機関等の特定業務)

   施行令第7条(金融機関等の特定取引)

    第1項 金融機関等の特定取引

     施行規則第4条(簡素な顧客管理を行うことが許容される取引)

      第1項 令第七条第一項に規定する簡素な顧客管理を行うことが許容される取引

      第2項 特定取引該当回避目的でなされる分割取引に関する特則

      第3項 令第九条第一項に規定する簡素な顧客管理を行うことが許容される取引

     施行規則第5条(顧客管理を行う上で特別の注意を要する取引)

     施行規則第6条(顧客等の本人特定事項の確認方法)

      第1項 通常の特定取引における本人特定事項の確認方法

      第2項 通常の特定取引における本人特定事項の確認において住所が本人確認書類に記載された住所と異なる場合の確認方法

      第3項 法人を顧客とする通常の特定取引における本人特定事項の確認方法の特則

      第4項 本人特定事項の確認を行う場合の取引関係文書を書留郵便等により転送不要郵便物等として送付する方法の代替手段

     施行規則第7条(本人確認書類)

     施行規則第8条(本邦内に住居を有しない外国人の住居に代わる本人特定事項等)

      第1項 法第四条第一項第一号に規定する主務省令で定める事項

      第2項 法第四条第一項第一号の本邦内に住居を有しないことに該当する基準

     施行規則第9条(取引を行う目的の確認方法)

     施行規則第10条(職業及び事業の内容の確認方法)

     施行規則第11条(実質的支配者の確認方法等)

      第1項 通常の特定取引における実質的支配者の確認方法

      第2項 実質的支配者の判定基準

      第3項 議決権を直接又は間接に有するかどうかの判定基準

      第4項 実質的支配者の判定における国等とその子会社に関する特則

     施行規則第12条(代表者等の本人特定事項の確認方法)

      第1項 国等の代表者等の本人特定事項の確認の方法に関する施行規則第6条の準用及び読み替え

      第2項 転送不要郵便物等を代表者等の現在の住居へ送付することによる代表者等の本人特定事項の確認方法

      第3項 転送不要郵便物等を代表者等の現在の住居以外の場所へ送付することによる代表者等の本人特定事項の確認方法

      第4項 転送不要郵便物等を送付することに代替する手段

      第5項 施行規則第1項の代表者等の基準

     施行規則第13条(法第四条第一項に規定する取引に際して行う確認の方法の特例)

      第1項 通常の特定取引において本人特定事項を確認する際の特則

      第2項 施行規則第12条5項の準用

    第2項 信託・信託行為などによる特定取引に関する補足

    第3項 特定取引該当回避目的でなされる分割取引に関する特則

   施行令第8条(司法書士等の特定業務)

    第1項 司法書士等の顧客のためにする次に掲げる行為又は手続のうち特定業務に該当しないもの

    第2項 司法書士等の会社等の組織、運営又は管理に関する行為又は手続のうち特定業務に該当するもの

    第3項 司法書士等の特定業務に該当する組織、運営又は管理に関する行為又は手続のうち会社以外の法人、組合又は信託に該当するもの

    第4項 司法書士等の「これらに相当する」行為又は手続のうち特定業務に該当するもの

   施行令第9条(司法書士等の特定取引)

    第1項 士業等の特定取引

    第2項 士業等との特定取引該当回避目的としてなされる分割取引における特則

   施行令第10条(法第四条第一項第一号に規定する政令で定める外国人)

  第2項 ハイリスク取引時の「厳格な取引時確認」

   施行令第11条(法第四条第二項に規定する政令で定める額)

     施行規則第14条(厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引に際して行う確認の方法)

      第1項 ハイリスク取引の取引時確認における本人特定事項の確認方法

      第2項 ハイリスク取引の取引時確認における取引目的と職業・事業内容の確認方法

      第3項 ハイリスク取引の取引時確認における実質的支配者と実質的支配者の本人特定事項の確認方法

      第4項 ハイリスク取引の取引時確認における資産及び収入の確認方法

   施行令第12条(厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引等)

    第1項 法第4条第2項第1号に該当するハイリスク取引

    第2項 法第4条第2項第2号に該当するハイリスク取引

    第3項 法第4条第2項第3号に該当するハイリスク取引

     施行規則第15条(外国政府等において重要な地位を占める者)

  第3項 特定取引を行う際に行うべき「取引時確認」の適用除外

   施行令第13条(既に確認を行っている顧客等との取引に準ずる取引等)

    第1項 別の特定事業者に委託した場合、特定事業者の組織変更した場合における既に確認を行っている顧客等との取引に準ずる取引等に該当する場合

    第2項 既に確認を行っている顧客等との取引に準ずる取引等に該当する場合

     施行規則第16条(顧客等について既に取引時確認を行っていることを確認する方法)

      第1項 施行令第十三条第二項に規定する主務省令で定める方法

      第2項 特定事業者が顧客等又は代表者等と面識がある場合等の特則

     施行規則第17条(令第十三条第二項に規定する主務省令で定める取引)

  第4項 会社と特定取引等を行う際の代表者や担当者に対する本人確認

  第5項 顧客等が国・地方公共団体その他の場合の第1項・第2項の読み替え

   施行令第14条(法第四条第五項に規定する政令で定めるもの)

     施行規則第18条(国等に準ずる者)

  第6項 取引時確認における虚偽回答の禁止

 法第5条(特定事業者の免責)

 法第6条(確認記録の作成義務等)

  第1項 取引時確認の確認記録の作成

     施行規則第19条(確認記録の作成方法)

      第1項 法第六条第一項に規定する主務省令で定める方法

      第2項 確認記録に添付した添付資料に関する特則

     施行規則第20条(確認記録の記録事項)

      第1項 法第六条第一項に規定する主務省令で定める事項

      第2項 添付資料等を確認記録に添付するときの確認記録への記載の省略

      第3項 確認記録に記載すべき事項に変更や追加があったときの確認記録への付記等

  第2項 取引時確認の確認記録の保存期間

      施行記録第21条(確認記録の保存期間の起算日)

       第1項 法第六条第二項に規定する主務省令で定める日

       第2項 前項に規定する「取引終了日」

       第3項 第1項に規定する「取引時確認済みの取引に係る取引終了日」

 法第7条(取引記録等の作成義務等)

  第1項 取引記録等の作成     

   施行令第15条(少額の取引等)

    第1項 特定業務のうち少額の取引等として保存すべき取引記録等から除外される範囲

     施行規則第22条(取引記録等の作成・保存義務の対象から除外される取引等)

      第1項 令第十五条第一項第四号に規定する主務省令で定める取引

      第2項 令第十五条第二項第二号に規定する主務省令で定める特定受任行為の代理等

    第2項 士業等の特定業務のうち少額の取引等として保存すべき取引記録等から除外される範囲

     施行規則第23条(取引記録等の作成方法)法第七条第一項及び第二項に規定する主務省令で定める方法

     施行規則第24条(取引記録等の記録事項)法第七条第一項及び第二項に規定する主務省令で定める事項

  第2項 士業などの特定事業者おける取引記録等の作成

  第3項 取引記録等の保存期間

 法第8条(疑わしい取引の届出等)

  第1項 疑わしい取引の届出

   施行令第16条(疑わしい取引の届出の方法等)

    第1項 疑わしい取引の届出方法

     施行規則第25条(届出様式等)

      第1項 疑わしい取引の届出をする際に使用する届出書

      第2項 電磁的記録媒体提出票の提出による届出書の提出

    第2項 疑わしい取引の届出をする際に報告すべき内容

  第2項 疑わしい取引の判断方法

     施行規則第26条(法第八条第二項に規定する主務省令で定める項目)

     施行規則第27条(法第八条第二項に規定する主務省令で定める方法)

      第1項 疑わしい取引に該当するか判断する方法

      第2項 カジノ事業者の場合の特則

  第3項 疑わしい取引を届出に関する関係者への漏洩の禁止

  第4項 疑わしい取引の届出がなされたときの主務大臣への通知

  第5項 疑わしい取引の届出がなされたときの国家公安委員会への通知

 法第9条(外国所在為替取引業者との契約締結の際の確認)

     施行規則第28条(外国所在為替取引業者との契約締結に際して行う確認の方法)

     施行規則第29条(外国所在為替取引業者に係る取引時確認等相当措置を的確に行うために必要な基準)

 法第10条(外国為替取引に係る通知義務)

  第1項 特定事業者が外国への支払に係る為替取引を委託する際の顧客と相手方の情報等の通知

   施行令第17条(通知義務の対象とならない外国為替取引の方法)

     施行規則第30条(通知義務の対象とならない外国為替取引の方法)

     施行規則第31条(外国為替取引に係る通知事項等)

      第1項 法第十条第一項に規定する主務省令で定めるもの

      第2項 法第十条第三項及び第四項に規定する主務省令で定める事項

  第2項 特定事業者が外国への支払に係る為替取引を再委託する際の顧客と相手方の情報等の通知

  第3項 特定事業者が外国金融機関から為替取引を委託された際の顧客と相手方の情報等の通知

  第4項 特定事業者が外国金融機関から為替取引を再委託された際の顧客と相手方の情報等の通知

 法第10条の2(外国の所在電子決済手段等取引業者との契約締結の際の確認)

     施行規則第31条の2(外国所在電子決済手段等取引業者との契約締結に際して行う確認の方法)

     施行規則第31条の3(外国所在電子決済手段等取引業者に係る取引時確認等相当措置を的確に行うために必要な基準)

 法第10条の3(電子決済手段の移転に係る通知義務)

  第1項 電子決済手段等取引業者が電子決済手段の移転する際に、他の電子決済手段等取引業者等に対して行う場合または電子決済手段の移転を他の電子決済手段等取引業者等に委託する場合の移転元(顧客)と移転先(相手方)の本人情報等の通知

   施行令第17条の2(通知義務の対象とならない外国為替取引の方法)

     施行規則第31条の4(電子決済手段の移転に係る通知事項等)

      第1項 法第十条の三第一項に規定する主務省令で定めるもの

      第2項 法第十条の三第二項に規定する主務省令で定める事項

  第2項 電子決済手段等取引業者が他の電子決済手段等取引業者等から電子決済手段の移転の委託を受けて電子決済手段の移転を行う場合、または、再委託を行う場合の電子決済手段の移転に関する情報(移転元と移転先に関する本人情報等)の通知

 法第10条の4(外国所在暗号資産交換業者との契約締結の際の確認)

     施行規則第31条の5(外国所在暗号資産交換業者との契約締結に際して行う確認の方法)

     施行規則第31条の6(外国所在暗号資産交換業者に係る取引時確認等相当措置を的確に行うために必要な基準)

 法第10条の5(暗号資産の移転に係る通知義務)

  第1項 暗号資産交換業者が暗号資産の移転を行う際に移転先が他の暗号資産交換業者等の顧客である場合または暗号資産の移転を他の暗号資産交換業者等に委託する場合の暗号資産の移転元と移転先の本人情報等の通知

   施行令第17条の3(通知義務の対象とならない外国為替取引の方法)

     施行規則第31条の7(暗号資産の移転に係る通知事項等)

      第1項 法第十条の五第一項に規定する主務省令で定めるもの

      第2項 法第十条の五第二項に規定する主務省令で定める事項は、前項に規定する事項に相当する事項とする。

  第2項 暗号資産交換業者が、他の暗号資産交換業者等から暗号資産の移転を(再)委託されて暗号資産の移転を行う場合または暗号資産の再委託を行う場合の暗号資産の移転に関する情報(移転元と移転先の本人情報など)の通知

 法第11条(取引時確認等を的確に行うための措置)

     施行規則第32条(取引時確認等を的確に行うための措置)

      第1項 特定事業者が法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置

      第2項 外国所在営業所を有する特定事業者(士業と貴金属等取扱事業者・カジノ事業者・郵便代行サービス事業者や電話転送サービス事業者を除く)に対して法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置として追加される事項

      第3項 当該外国会社の議決権の総数の二分の一を超える議決権を直接又は間接に有するかどうかの判定基準

      第4項 外国所在為替取引業者との間で為替取引を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約を締結して為替取引を行う特定金融機関に対して法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置として追加される措置

      第5項 外国所在電子決済手段等取引業者との間で電子決済手段の移転を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約を締結して電子決済手段の移転を行う電子決済手段等取引業者に対して法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置として追加される措置

      第6項 電子決済手段の移転に係る取引が第二十四条第八号ハ又はニに掲げる場合に該当する取引を行う電子決済手段等取引業者に対して法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置として追加される措置

      第7項 外国所在暗号資産交換業者との間で暗号資産の移転を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約を締結して暗号資産の移転を行う暗号資産交換業者に対して法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置として追加される措置

      第8項 第二十四条第九号ハ又はニに掲げる場合に該当する取引を行う暗号資産交換業者に対して法第十一条第四号に規定する主務省令で定める措置として追加される措置

 法第12条(弁護士等による本人特定事項の確認等に相当する措置)

  第1項 弁護士等による犯収法対策に関する規定制定につき日弁連への権限付与

  第2項 弁護士等による取引時確認(本人確認)時の犯収法5条の準用

  第3項 犯罪収益移転防止に関する政府と日弁連の相互協力

 

犯収法 第3章 特定事業者による措置

 法第13条(捜査機関等への情報提供等)

  第1項 国家公安委員会による検察官等への疑わしい取引に関する情報の提供

  第2項 検察官等による疑わしい取引に関する情報の記録の閲覧・謄写・写しの送付の請求

 法第14条(外国の機関への情報提供)

  第1項 国家公安委員会の外国の捜査機関等に対する疑わしい取引に関する情報提供

  第2項 疑わしい取引に関する情報提供の際の使用方法を制限するための措置

  第3項 国家公安委員会の外国からの要請があった場合の疑わしい取引に関する情報を捜査等に使用することの同意

  第4項 国家公安委員会が第3項の同意をする場合の法務大臣または外務大臣の事前の確認

  第5項 国家公安委員会が提供した疑わしい取引に関する情報が国際約束に基づき、かつ、その範囲で当該疑わしい取引が使用されたときの第3項の同意の擬制

 

犯収法 第4章 監督

 法第15条(報告)

 法第16条(立入検査)

  第1項 行政庁の職員による特定事業者の営業所等の立ち入り、帳簿書類その他の物件の検査、業務に関する関係人への質問

  第2項 第1項により立入検査する当該職員の身分証明書の携帯・提示

     施行規則第33条(身分証明書の様式等)

      第1項 身分証明書の様式

      第2項 身分証明書の発行

  第3項 第1項の規定による立入検査権限が犯罪捜査目的でないことの確認

  第4項 日本銀行への適用除外

 法第17条(指導等)

 法第18条(是正命令)

 法第19条(国家公安委員会の意見の陳述)

  第1項 国家公安委員会の行政庁に対して法令違反等を行った特定事業者に対する行政処分等を行う旨の意見の陳述

  第2項 国家公安委員会による特定事業者に対する業務に関する報告や資料の提出、または、警察に対する調査の指示

  第3項 警察が第2項の指示をうけて調査をする際に特に必要がある場合の国家公安委員会の事前の承認を受けた上での特定事業者の営業所等の立ち入り、帳簿書類その他の物件の検査、業務に関する関係人への質問

  第4項 第3項の承認する際の国家公安委員会の行政庁への事前の通知

  第5項 第4項の通知を受けた行政庁による国家公安委員会への権限の行使との調整を図るため必要な協議の請求

   施行令第18条(協議の求めの方法)

     施行規則第34条(立入検査に関する協議)

      第1項 協議の求めを行うことのできる期間

      第2項 行政庁が都道府県知事である場合の協議の求めに係る事項に関する主務大臣への通知

      第3項 協議において行う事項

      第4項 協議の求めに対する調整の期限

 

犯収法 第5章 雑則

 法第20条(主務省令への委任)

     施行規則第35条(外国通貨によりなされる取引の換算基準)

     施行規則第36条(電子決済手段等によりなされる取引の換算基準)

 法第21条(経過措置)

 法第22条(行政庁等)

  第1項 犯収法における行政庁

  第2項 一定の事項に関する行政庁について第1項の特則

  第3項 一定の金融商品取引を扱う特定事業者に関する事項について第1項の特則

  第4項 貴金属等取扱事業者に関する第1項の特則

   施行令第19条(方面公安委員会への権限の委任)

  第5項 内閣総理大臣の権限に関する金融庁長官への委任

   施行令第20条(証券取引等監視委員会への検査等の権限の委任等)

    第1項 法第二十二条第五項の規定により金融庁長官に委任された権限の証券取引等監視委員会への委任等

    第2項 証券取引等監視委員会が委任された権限の行使したときの金融庁長官への報告

   施行令第21条(銀行等に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 金融庁長官権限のうち銀行等に対する金融庁長官検査・是正命令等権限に関する本店等の所在地を管轄する財務局長等への委任等

    第2項 銀行等の支店等に対する金融庁長官検査等権限に関する支店等の所在地を管轄する財務局長等へ委任

    第3項 銀行等の支店等に対する検査等を行った財務局長等の当該本店等や別の支店等に対する検査等

   施行令第22条(労働金庫等に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 金融庁長官及び厚生労働大臣の報告等・立入調査等の権限の単独行使

    第2項 金融庁長官が単独で権限を行使した場合の厚生労働大臣への通知

    第3項 厚生労働大臣が単独で権限を行使した場合の金融庁長官への通知

    第4項 労働金庫に対する金融庁長官検査等権限の財務局長等への委任等

    第5項 都道府県労働金庫に対する金融庁長官検査等権限並び厚生労働大臣の報告等・立入調査等の権限に属する事務のについて都道府県知事への委任等

    第6項 都道府県労働金庫に対して都道府県知事が第5項により委任された権限を行使した場合の金融庁長官及び厚生労働大臣への報告

    第7項 都道府県労働金庫が行う疑わしい取引の届出を受ける事務の都道府県知事への委任

   施行令第23条(農業協同組合等に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 農業協同組合等並びに漁業協同組合等に対する報告等・立入調査等の権限の金融庁長官及び農林水産大臣の単独行使と事後的通知

    第2項 農業協同組合等に対する金融庁長官検査・是正命令等権限及び漁業協同組合等に対する金融庁長官検査等権限の財務局長等への委任等

    第3項 農業協同組合等に対する報告等を求める農林水産大臣の権限の管轄下にある地方農政局長への委任等

    第4項 都道府県連合会に対する金融庁長官検査等権限並び農林水産大臣の報告等・立入調査等の権限に属する事務のについて都道府県知事への委任等

    第5項 都道府県連合会に対して都道府県知事が第4項により委任された権限を行使した場合の金融庁長官及び農林水産大臣への報告

    第6項 金融庁長官及び農林水産大臣都道府県連合会に対して報告等・検査等を行った際のその結果の関係都道府県知事への通知

   施行令第24条(農林中央金庫に係る取引に関する行政庁の権限行使)

   施行令第25条(株式会社商工組合中央金庫に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 株式会社商工組合中央金庫に対する金融庁長官、財務大臣及び経済産業大臣による報告等・立入調査等の権限(金融庁長官検査等権限含む)の単独行使等

    第2項 第1項の単独行使をしたときの速やかな事後通知

    第3項 株式会社商工組合中央金庫に対する金融庁長官検査等権限の財務局長等への委任等

    第4項 施行令第21条第2項及び第3項の前項への準用

   施行令第26条(株式会社日本政策投資銀行に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 株式会社日本政策投資銀行に対する金融庁長官及び財務大臣の報告等・検査等の権限(金融庁長官検査等権限含む)の単独行使等

    第2項 株式会社日本政策投資銀行に対する金融庁長官検査等権限の財務局長等への委任等

    第3項 施行令第21条第2項及び第3項の前項への準用

   施行令第27条(保険会社等に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 保険会社等に対する金融庁長官検査等権限並びに少額短期保険業者に対する金融庁長官検査・是正命令等権限の財務局長等への委任等

    第2項 施行令第21条第2項及び第3項の前項への準用

   施行令第28条(金融商品取引業者等に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 金融商品取引業者等に対する報告等・指導等・是正命令に関する金融庁長官の権限の財務局長等への委任等

    第2項 施行令第21条第2項及び第3項の前項への準用

    第3項 金融商品取引業者等に対する証券取引等監視委員会に委任された権限の財務局長等への委任等

    第4項 金融商品取引業者等の支店等に対する証券取引等監視委員会に委任された権限の財務局長等への委任

    第5項 金融商品取引業者等の支店等に対する検査等を行った財務局長等の当該本店等や別の支店等に対する検査等

    第6項 証券取引等監視委員会の指定する金融商品取引業者等に対する証券取引等監視委員会の権限の委任に関する適用除外

    第7項 前項の指定をした場合等の公示

   施行令第29条(不動産特定共同事業者等に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 不動産特定共同事業者等に対する金融庁長官検査等権限と特定不動産特定共同事業者等に対する指導等・是正命令に関する金融庁長官権限の財務局長等への委任等

    第2項 施行令第21条第2項及び第3項の前項への準用

    第3項 不動産特定共同事業者等に対する国土交通大臣検査等権限並びに特定不動産特定共同事業者等に対する指導等・是正命令に関する国土交通大臣の権限の地方整備局長等への委任等

    第4項 不動産特定共同事業者等の従たる事務所に対する国土交通大臣検査等権限の地方整備局長等も行使することができる。

    第5項 不動産特定共同事業者等の従たる事務所に対して報告・検査等を行った地方整備局長等の主たる事務所又は別の従たる事務所に対して検査等

    第6項 特定不動産特定共同事業者等に対する金融庁長官検査等権限及び国土交通大臣検査等権限に属する事務の都道府県知事への委任等

    第7項 都道府県知事が第6項により委任された権限を行使した場合の金融庁長官及び国土交通大臣への報告

    第8項 特定不動産特定共同事業者等が行う疑わしい取引の届出を受ける事務の都道府県知事への委任

   施行令30条(貸金業者に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 貸金業者に対する金融庁長官検査・是正命令等権限の財務局長等への委任等

    第2項 施行令第21条第2項及び第3項の前項への準用

    第3項 都道府県貸金業者に対する金融庁長官検査等権限に属する事務の都道府県知事への委任等

    第4項 都道府県知事が第3項により委任された権限を行使した場合のの金融庁長官への報告

    第5項 貸金業者都道府県貸金業者が行う疑わしい取引の届出を受ける事務の都道府県知事の委任

   施行令31条(商品先物取引業者に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 商品先物取引業者の本店等に対する農林水産大臣及び経済産業大臣の報告等・検査等・指導等・是正命令の権限の地方農政局長及び経済産業局長への委任等

    第2項 商品先物取引業者の支店等に対する農林水産大臣及び経済産業大臣の報告等・検査等の権限の地方農政局長及び経済産業局長への委任

    第3項 商品先物取引業者の支店等に対する検査等を行った地方農政局長及び経済産業局長の当該本店等や別の支店等に対する検査等

   施行令32条(電子債権記録機関に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 電子債権記録機関に対する金融庁長官の報告等・検査等の財務局長等への委任等

    第2項 施行令第21条第2項及び第3項の前項への準用

   施行令33条(両替業者に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 両替業者に対する財務大臣の検査等の権限の財務局長等への委任

    第2項 両替業者の支店等に対する財務大臣の検査等の権限の財務局長等への委任

    第3項 両替業者の支店等に対する検査等を行った財務局長等の当該本店等や別の支店等に対する検査等

    第4項 両替業者に対する財務大臣の報告等の権限の財務局長等への委任

    第5項 財務大臣の指定する両替業者に対する財務大臣の報告等の権限の委任関する適用除外

    第6項 前項の指定をした場合等の公示

   施行令34条(宅地建物取引業者に係る取引に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 宅地建物取引業者に対する国土交通大臣の報告等・検査等・指導等・是正命令の権限に関する地方整備局長等への委任等

    第2項 宅地建物取引業者の支店に対する国土交通大臣の報告等・検査等・指導等・是正命令の権限に関する地方整備局長等への委任等

    第3項 宅地建物取引業者が行う疑わしい取引の届出を受ける事務の地方整備局長等への委任

   施行令35条(司法書士等に係る取引等に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 司法書士等に対する法務大臣の報告等・検査等・指導等の権限に関する法務局等の長への委任等

    第2項 司法書士法人の従たる事務所に対する法務大臣の報告等・検査等・指導等の権限に関する法務局等の長への委任

    第3項 司法書士法人の従たる事務所に対する検査等を行った法務局等の長の主たる事務所や別の従たる事務所に対する検査等

   施行令36条(税理士等に係る取引等に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 税理士等に対する財務大臣の報告等・検査等・指導等の権限に関する国税庁長官への委任等

    第2項 税理士等に対する国税庁長官の報告等・検査等・指導等の権限に関する国税局長及び税務署長への委任等

    第3項 税理士法人の従たる事務所に対する国税庁長官の報告等・検査等・指導等の権限に関する国税局長及び税務署長への委任

    第4項 税理士法人の従たる事務所に対する検査等を行った国税局長又は税務署長の長の主たる事務所や別の従たる事務所に対する検査等

   施行令37条(外国所在為替取引業者等との契約締結の際の確認等に関する行政庁の権限委任等)

    第1項 外国為替取引業者等に対する報告等・検査等の権限(金融庁長官検査等権限も含む)の各行政庁の単独行使

    第2項 報告等・検査等の権限の単独行使した場合の他の行政庁に対する速やかな通知

    第3項 外国為替取引業者等に対する財務大臣の権限のうち検査等の権限に関する財務局長等への委任等

    第4項 外国為替取引業者等の支店等に対する財務大臣の権限のうち検査等の権限に関する財務局長等への委任等

    第5項 外国為替取引業者等の支店等に対する検査等を行った財務局長等の当該本店等や別の支店等に対する検査等

    第6項 外国為替取引業者等に対する財務大臣の権限のうち報告等の権限に関する財務局長等への委任等

    第7項 財務大臣の指定する外国為替取引業者等に対する財務大臣の報告等の権限の委任関する適用除外

    第8項 前項の指定をした場合等の公示

  第6項 内閣総理大臣から金融庁長官に委任された権限について金融庁長官による証券取引等監視委員会への委任

  第7項 金融庁長官権限に関する証券取引等監視委員会への委任

  第8項 証券取引等監視委員会が行う報告又は資料の提出の命令に関する審査請求

  第9項 犯収法上の行政庁の権限に属する事務の都道府県知事への委任

  第10項 犯収法第8条、15条から19条までの行政庁の権限に関する事項の政令への委任

 法第23条(主務大臣等)

  第1項 犯収法上の主務大臣

  第2項 犯収法における主務省令

 法第24条(事務の区分)

   施行令第38条(法定受託事務等)

    第1項 第一号法定受託事務都道府県に委任した事務を追加

    第2項 都道府県知事が前項に規定する事務を行うこととする場合の事務に係る行政庁に関する規定の準用

 

犯収法 第6章 罰則

 法第25条(是正命令違反)

 法第26条(報告や資料提出の拒否、虚偽報告や虚偽の資料の提出、検査の拒否・妨害・忌避)

 法第27条(本人特定事項の隠ぺい目的での本人特定事項に関する虚偽回答)

 法第28条(預貯金口座の不正売買等)

  第1項 第三者になりすまして預貯金口座を利用する目的を有する者の預貯金通帳やキャッシュカードの受領等

  第2項 第三者になりすまして預貯金口座を利用する目的を有する者への預貯金通帳やキャッシュカードの譲渡等

  第3項 業としての預貯金口座の不正売買

  第4項 預貯金口座の不正売買の勧誘・誘引

 法第28条の2(高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報の不正売買等)

  第1項 第三者になりすまして高額電子移転可能型前払式支払手段を利用する目的等を有する者の高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報の受領等

  第2項 第三者になりすまして高額電子移転可能型前払式支払手段を利用する目的等を有する者への高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報の提供等

  第3項 業としての高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報の不正売買

  第4項 高額電子移転可能型前払式支払手段利用情報の不正売買の勧誘・誘引

 法第29条(資金移動業者の為替取引カード等の不正売買等)

  第1項 第三者になりすまして資金移動業者のサービスを利用する目的等を有する者の為替取引カード等の受領等

  第2項 第三者になりすまして資金移動業者のサービスを利用する目的等を有する者への為替取引カード等の譲渡等

  第3項 業としての資金移動業者の為替取引カード等の不正売買

  第4項 資金移動業者の為替取引カード等の不正売買の勧誘・誘引

 法第29条の2(電子決済手段等取引用情報の不正売買等)

  第1項 第三者になりすまして電子決済手段等取引業者のサービスを利用する目的等を有する者の電子決済手段等取引用情報の受領等

  第2項 第三者になりすまして電子決済手段等取引業者のサービスを利用する目的等を有する者への電子決済手段等取引用情報の譲渡等

  第3項 業としての電子決済手段等取引用情報の不正売買

  第4項 電子決済手段等取引業者の電子決済手段等取引用情報の不正売買の勧誘・誘引

 法第29条の3(電子決済等利用情報の不正売買等)

  第1項 第三者になりすまして電子決済等取扱業者等のサービスを利用する目的等を有する者の電子決済等利用情報の受領等

  第2項 第三者になりすまして電子決済等取扱業者等のサービスを利用する目的等を有する者への電子決済等利用情報の譲渡等

  第3項 業としての電子決済等利用情報の不正売買

  第4項 電子決済等取扱業者等の電子決済等利用情報の不正売買の勧誘・誘引

 法第30条(暗号資産交換用情報の不正売買等)

  第1項 第三者になりすまして暗号資産交換業者のサービスを利用する目的等を有する者の暗号資産交換用情報の受領等

  第2項 第三者になりすまして暗号資産交換業者のサービスを利用する目的等を有する者への暗号資産交換用情報の譲渡等

  第3項 業としての暗号資産交換用情報の不正売買

  第4項 暗号資産交換業者の暗号資産交換用情報の不正売買の勧誘・誘引

 法第31条(第25条から第27条違反における法人の両罰規定)

 法第32条(金融商品取引法の準用)

 

 

 これにて犯収法と犯収法施行令と犯収法施行規則が紐づいた。

 犯収法施行規則の紐づけはそれほど大変ではなかった。

 

 ただ、犯収法と犯収法施行令と犯収法施行規則の紐づけを先にやっておいてよかった。

 これをしておかなければ、犯収法の条文を見ていく際、当たるべき政令や施行規則が分からず、混乱していたことだろう。

 

 次回は本格的に犯収法第4条についてみていく。