薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

動作の重いPCのOSを変更する

0 はじめに

 2025年10月14日、windows10のサポートが終了した。

 

www.microsoft.com

 

 そこで、私が放置していたノートPCのOSを変更した。

 今回は、このOSを変更した件について、備忘を兼ねてこのブログに記載することにする。

 

 

 なお、1点注意を。

 ここに記載されている内容は、いわゆる「N=1」の経験に過ぎない

 また、ここに記載しているPCは購入後の約6年間ほとんど使われていなかったという特殊事情もある。

 したがって、再現性については全く保証できないので、その点は注意してみてほしい。

 

1 windows10のサポートが終了への対応

 windows10のサポートが終了することを受けて、私はwindows11を搭載したノートPCを新たに購入することにした。

 この点、ノートPCを購入するのは約6年振りのことである。

 タイミングとして悪いものではない。

 

 

 もっとも、私が持っていたwindows10搭載のノートPCが使えなくなるのは少々惜しい。

 そこで、 私が常用していたPCに「windows10_ESU」を導入することにした。

 

www.microsoft.com

 

 この点、このPCは2017年ころから私が常用しているPCである。

 また、このPCのキーボードの一部のキーが壊れ、スピーカーの片方が壊れ、HDDがエラーを起こすという事態が生じている。

 しかし、その一方で、このPCには8GBのメモリが搭載されているだけではなく、それなりの性能のあるCPU(Intel_Core_i7レベルのもの)が搭載されていた。

 そこで、このPCの壊れたHDDはSDDに換装し、外付けスピーカーや外付けキーボードを使いながら、今でも使い倒している。

 

 なお、次の記事で背面を開けて掃除をしたPCはこのPCである。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 将来的には、もう一方のPCと同じようにOSを変更する予定であるが、もう少し使う予定でいる。

 

 

 そして、私が持っていたもう1つのwindows10搭載のノートPCはOSを変更することにした

 

 この点、このPCは2019年の年末に購入したものである

 しかし、メモリは4GB、搭載されているCPUはCeleronレベル、ハードディスクはSDDではないというものであり、購入直後から動作が相当重くなっていた。

 そこで、私はこのPCを購入したことを後悔し、ほとんど使うことなく放置していたのである。

 

 この点、windows10のサポート終了を受けて、このPCをそのまま廃棄する予定であった。

 もっとも、ネットの記事を見ていて、「OSをwindows10からChromeOS_Flexに変えるという手段がある」ことを知った。

 そこで、廃棄する代わりにOSを変更することにした。

 というのも、私が常用し、現段階は「windows10_ESU」を導入したPCもいずれ「ChromeOS_Flex」に変えようと考えているところ、この動作が重いPCをその実験台にするのも悪くないと考えたからである

 

2 ChromeOS_Flexへの変更

 今回変更したOSはChromeOS_Flexである。

 このOSはグーグルが開発したOSであり、GoogleのChromebookに搭載されているものでもある。

 

 また、インターネット上では、古くなったPCにインストールするという記事も存在する。

 

pc.watch.impress.co.jp

 

 今回は、これらの記事やグーグルのヘルプサイト等を見て、PCにChromeOS_Flexをインストールすることにした。

 

 

 手続きの概略は次の通りである。

 なお、失敗してもwindows10に戻す予定はなかったため、元のOSに戻すための回復ドライブ(USB)は作成していない。

 

① USBインストーラの作成

 ・ USBメモリの準備(8GB以上のUSBメモリであれば可、私は所持していた16GBのUSBメモリを利用した)

 ・ Chromeウェブストアにアクセスして、「Chromebookリカバリユーティリティ」のインストール

 ・ USBメモリの挿入、及び、「ChromeOS Flex」の選択によるUSBインストーラの作成

 

② PCへのインストール

 ・ USBインストーラーの接続

 ・ インストールするPCの再起動、なお、このときにブートドライブをUSBに変更する

 ・ 画面の指示に従って、インストール手続の実施

 

 以上の手続に従い、OSを変更した。

 この作業自体はそれほど大変ではなかった。

 

3 動かしてみた結果

 そして、実際にChromeOSを搭載したPCを動かしてみた。

 具体的には、某ニュース番組(有料)にアクセスし、動画を約2時間流してみた

 それから、ユーチューブにアクセスして、いくつかの動画を再生させてみた。

 

 この点、windows10が搭載されていたころであれば、そのサイトにたどりつくまでにものすごく時間がかかっただろう

 また、正直、その動画がきちんと再生されたかどうかも分からない。

 しかし、OSを変更した結果、そのサイトまでそれほど待つことなく到着することができた

 また、その動画はちゃんと見ることができた。

 

 というわけで、メモリが4GBで、CPUの性能がいまいちというPCであっても、OSの変更によって「ネット上の動画を見るレベルのこと」が困らなくなった。

 

 

 もちろん、常用しているPCのようにchromeのタグをたくさん開くようなことをしてしまえば、重くなるであろう。

 また、ゲームはできないだろう。

 さらに、文章編集等のことがちゃんとできるかどうかは分からない

 

 ただ、そのPCを何かに使う予定は今のところない(ネットで動画を見るのがせいぜいである)ので、個人的には特に問題にはならないと考えている。

 

 

 以上、私が経験したことについて備忘録としてこのブログに遺すことにする。

 では、今回はこの辺で。

「事実認定は『べき論』である」の衝撃

 今回は、約20年前に私が聴いた発言で衝撃を受けたものについて振り返ることにする。

 衝撃を受けた発言はタイトルの通りである。

 

1 司法試験の初めての講義

 これは、いわゆる司法試験予備校で最初の講義を受けたときのことだったと記憶している。

 その講義のテーマはいわゆる「法学入門」であった。

 そして、ちょうど「法的三段論法」についての説明をしていたときのことであった。

 

 

 この点、法的三段論法と類似の概念としていわゆる「IRAC」が存在する。

 厳密に見るならさておき、IRACと三段論法の違いはほとんどない。

 というのも、三段論法のゼロ段目に「問題設定」を入れれば、IRACになるからである。

 敢えて差異を述べるなら、IRACは手順(マニュアル)であり、三段論法はロジック、ということであろうか。

 

 一応、IRACと三段論法について説明すると次のようになる。

 

・I(問題提起、Issue、三段論法のゼロ段目)

・R(規範定立、Rule、三段論法の一段目)

・A(あてはめ、Application、三段論法の二段目)

・C(結論、Conclusion、三段論法の三段目)

 

 

 一応、具体例について示しておく。

 なお、講義では殺人罪が具体例だった気がする(がよく覚えていない)が、先日、金融コンプライアンス・オフィサー1級を受けたこともあるので、その分野から具体例を出すことにする。

 あと、会社法上の犯罪を持ち出すとややこしくなるため、刑法上の関係でのみ検討することにする。

 

(具体的な事案、IRACや三段論法以前の部分)

 乙銀行での丙支店長だった甲は、事業者であった甲の友人丁から融資の申し込みを受けた。

 丁が提出した資料を確認した結果、甲は、丁の事業は行き詰っていること、融資をしても返済される可能性が極めて低いことを確認した。

 にもかかわらず、甲は、丁からの頼みを断り切れず、丁の利益を図るために、丁の業務内容について虚偽内容を記載した稟議書を作成して、乙銀行の融資を実行させた。

 融資を実行してから間もなく、丁は破産し、乙には貸倒れ損失が発生し、融資の回収は事実上困難となった。

 

・I(問題提起、Issue、三段論法のゼロ段目)

 甲に背任罪(刑法247条)が成立するか。

会社法上の特別背任罪の成否についてはここでは触れない、もちろん成否が問題になりうることは言うまでもない)

 

・R(規範定立、Rule、三段論法の一段目)

 背任罪の構成要件(成立条件のこと)は、①他人のために事務を処理する者が、②図利加害目的を有している状況で、③任務違背行為を行い、④本人に財産上の損害を発生させることである。

 

・A(あてはめ、Application、三段論法の二段目)

 甲は乙の支店長であり、「他人のために事務を処理する者」に該当する(①)。

 甲は丁の利益を図るために、乙に融資を実行させており、丁に対する図利目的が認められる(②)。

 甲は返済の見込みがないことを認識しながら虚偽の内容の稟議書を作成して融資を実行しており、「任務違背行為」が認められる(③)。

 結果、丁は融資実行後に破産し、本人たる乙に多額の貸し倒れ損失を発生させており、甲は財産上の損害を加えている(④)。

 

・C(結論、Conclusion、三段論法の三段目)

 以上より、甲には背任罪が成立し、その罪責を負う。

 

 

 このIRAC、ないし、三段論法は、法律適用が問題になる場面におけるロジックの基礎である

 以前、次のリンク先で話した法令解釈もこの三段論法の中で展開されるものである。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 したがって、この発想を意識せずに使いこなせないようでは、司法試験その他の法律実務においては話にならない。

 私自身、この三段論法については学習の開始段階ですんなり理解することができた。

 

2 法律実務は「べき論」であるという前提

 講義では、上の三段論法を説明した後に、「法律実務の文章(論理)は『べき論』でできている」という話に進んだ。

 

 この点、上の事案の場合、前提となる事実が確定している(ように見える)し、法解釈に争うような部分がないため、「『べき論』である」と言われてもピンと来ないかもしれない。

 ただし、次のような事案であれば、「法律実務の文章(論理)は『べき論』でできている」ということはイメージできるかもしれない。

 もちろん、この事例は上のリンク先の記事でも紹介している。

 

 (具体的な事案)

 Yは、財産隠しのため、自分名義の土地を自分の息子Aの名義に変更した。

 また、この土地には建物があり、その建物はYが自宅兼事務所として利用しており、そのことは現地を見れば明らかにわかることであった。

 AはYの不動産が自分の名義になっていることを知り、この不動産を事情の知らないXに売却し、登記を移転した。

 XはYに対して土地の引き渡しを請求した。

 Xの請求は認められるか。

(事案の説明終了)

 

 この事案は、いわゆる「民法94条2項類推適用」の典型事案であり、判例はこのような事案に「民法94条2項類推適用」の採用を認めている。

 したがって、2025年の視点から見れば結論は確定している。

 

 もっとも、その法解釈がない時代であれば、「①虚偽の外観があって、②その外観作出に本人の帰責性があり、③第三者が善意であれば、民法94条2項を類推して第三者を保護すべきである」という規範と「①虚偽の外観があって、②その外観作出に本人の帰責性があり、③第三者が善意であったとしても、条文上の規定がない以上第三者を保護すべきではない」という規範が対立することになる。

 つまり、規範定立(R)の部分が「べき論」となる結果、結論(C)の部分が「べき論」になってしまうのである。

 

 さらに言えば、法令も「強制力のある規範」であるから、「『べき論』ではない」ということは到底言えない。

 したがって、上の背任事件についても「甲に背任罪が成立する(と考えるべきである)」という意味で「べき論」になる。

 

 

 この辺は、民事訴訟や刑事裁判において双方に検察官や弁護士が登場して主張をぶつけあっているという現実を見れば、違和感のあることではない。

 もっとも、次の指摘が私にとっては衝撃であった。

 この点が私に衝撃的だったのは、私はそれまで理系の人間であったから、という事情もあるのかもしれない

 

3 「事実認定も『べき論』である」の衝撃

 三段論法の説明があり、法律実務の文章は「べき論」であるという話に進み、その講義の講師は次のような言葉を言い放った。

「ちなみに、事実認定も『べき論』です」と。

 

 よくよく考えれば、当然のことである。

 その場の説明により、私自身もすんなり理解・納得できたのだから。

 しかし、私はこの言葉が衝撃的であった。

 

 

 これも具体例をイメージすればわかる。

 とある殺人事件があり、被害者Vが死亡していることが明白な場合で、犯人が確定していないとする。

 そんななか、ある人間甲が起訴された。

 もちろん、甲は否認している。

 

 この場合、刑事裁判において、「『甲はVを殺害した』と考えるべきである」という検察官の主張と「『甲はVを殺害していない』と考えるべきである」という被告人、または、弁護人の主張がが対立することになる。

 そして、裁判所は、両当事者(検察官及び被告人並びに弁護人)の主張や提出した証拠をもとに、甲と犯人の同一性を判断することになる。

 この裁判所の判断も「『甲は犯人である(Vを殺害した)』と考えるべきである(でない)」というものであり、「べき論」に過ぎない

 

 

 なお、これに対して、「甲が自白していれば、違うのではないか」と考えるかもしれない。

 しかし、この場合も「甲の『甲がVを殺害した』との自白は、(それ以外の証拠等から)信用できる」という前提があって成立する。

 したがって、「『犯行状況に関する甲の自白は信用できる』と考えるべきである」という「べき論」による前提が必要となり、事実認定に「べき論」が関与していることになる。

 もちろん、この辺は、犯行目撃証言がある場合や犯行状況についてビデオカメラ等に録画されている場合であっても変わりはない。

 

 

 なお、当時の司法試験(旧司法試験)において、認定すべき事実については問題文に掲載されており、答案構成及び論述において事実の認定について特に検討する必要はなかった(この点は、現在の司法試験と事情を異にすると言われているが、詳しいことは分からない)。

 もっとも、実務に出るとこの事実認定の部分で苦労することになる。

 事実、司法試験の次のステップにある司法修習で、私はこのことを思い知らされることになる

 また、実務に出ると、事実認定に必要な証拠の収集でさらに苦労することになる。

 

4 衝撃を受けた原因

 この「事実認定は『べき論』である」というのは、ある種当然のことである。

 しかし、私にはこの話は非常に衝撃的であった。

 衝撃的に感じられた原因は、次の3点にあるのではないかと考えている。

 

 まず、私自身が「事実は客観的に存在するものであって、主観的に認定されるものではない」と感じていたことが挙げられる。

 次に、私自身に「べき論」への認識が乏しかったということが挙げられる。

 最後に、社会的な事実(個々の具体的事実)と自然科学等の理論を裏付ける事実(実験における測定結果)を混同していたということも衝撃を受けた理由に挙げられるかもしれない。

 

 

 ただ、この前提こそ、社会科学と自然科学との大きな違いなのだろう。

 あるいは、理論と実務の違いなのだろう。

 その違いを、この段階で認識できたことはよかったことだと考えている。

 もちろん、このような差異について実感させられることは他にもあるのだけれども。

 

 では、今回はこの辺で。

金融コンプライアンスオフィサー1級に挑戦する

0 はじめに

 最近、私は「金融コンプライアンス・オフィサー1級」という試験を受けた。

 

www.khk.co.jp

 

 この試験は筆記試験(記述式試験)であり、直近2年間において受けていた試験と傾向が異なるものであった。

 また、それなりの対策をしてから受験している

 そこで、記憶の新しいうちに、この試験に挑戦したときのことについて振り返っておく。

 

1 受験の動機

 この手の記事において毎回のように触れているように、今回の受験の基本的動機は「社会生活上の要請に応じたもの」である。

 その点は、直近2年間に受けてきた試験と変わりはない。

 

 

 しかし、このタイミングで「金融コンプライアンス・オフィサー1級」を受けようと判断したのは特別の事情がある。

 その事情というのは、来年度以降における「金融コンプライアンス・オフィサー1級」の廃止である。

 

「証券3級」「保険販売3級」「外国為替2級」「金融コンプライアンス・オフィサー1級」試験廃止(2026年度以後)のお知らせ

https://www.kenteishiken.gr.jp/upfiles/pdf/7196.pdf

 

 つまり、当初の予定ではこの10月には別の試験(税務3級)を受ける予定であって、「金融コンプライアンス・オフィサー1級」は来年度以降に受験する予定であった。

 しかし、「今回で終わり」となると、少々事情が違ってくる

 来年度以降に受けるわけにはいかないのだから。

 

 そこで、順番を変更して「金融コンプライアンス・オフィサー1級」から受験することにした

 

 

 もっとも、これまでの社会生活上の要請に応じて取得した試験群と「金融コンプライアンス・オフィサー1級」との間には大きな違いがある。

 それは、選択式試験か記述式試験かという大きな違いである。

 

 受験を決めた段階では、「まあ、どうにかなるだろう」と安直に考えていたが、これはとんでもない思い違いであった。

 このことは試験直前に大いに実感させられることになる。

 

2 合格のために準備したもの

 既に述べたように、この試験は社会生活上の要請に応じて受験するものである。

 だから、合格しなければ意味がない。

 さらに、今回で廃止される以上、再受験もできない

 というわけで、必勝を期した対策が必要となる

 

 

 この点、私が試験対策として購入・活用した書籍は次の2冊である(なお、リンク先は今年度版を参照している)。

 

 

 

 この点、記述試験への対応という観点から見た場合、問題集だけではなく教科書も必要であると判断した

 また、去年、「金融コンプライアンス・オフィサー2級」を受験した際に教科書も購入していた

 そこで、そのときに用いた教科書(2024年度版)も今回の演習で活用することにした。

 

 

 次に、試験において六法の持ち込みが可能であったことから、次の六法を購入した。

 

 

 この点、この小六法には巻末に判例等が掲載されている

 また、法務2級、金融コンプライアンス・オフィサー1級試験において持込可となっている。

 さらに、昔、編者である神田先生の会社法の基本書を買って勉強している(以下のリンク参照、なお、当時の私が購入したのは当時の版である)。

 

 

 というわけで、この小六法も購入することにした。

 実際、この小六法は試験において活用できたし、業務においても活用できるような気がする。

 

2 学習方法

 合格のための学習プロセスは次の3点である。

 なお、メインは②である。

 

① 公式テキストを1順読み、出題分野の把握

② 問題解説集に掲載されている解答例の書き写し

③ 問題解説集に掲載されている直近の問題(過去問)における答案構成の検討

 

 

 まず、最初に公式テキストを1順して、コンプライアンスの概要を把握した。

 これを読んだ結果、自分の知らない分野があることに気付けた

 合格との関係でいえば関連性が弱いかもしれないが、少なくない成果であると考えている。

 

 次に、問題解説集に掲載されている過去問(10回分、合計100問)の問題演習を行うことを考えた。

 具体的には、問題解説集に掲載されている100問について「過去問を読み、過去問答案構成をし、答案を書いて、答案例と比較する」ということを考えた

 しかし、1問目を前にして「どのように答案構成をすればいいのか分からない」という状況に陥った。

 そこで、問題解説集に掲載されている100問の解答例をひたすら書き写すという荒業に出ることにした

 

 この点、解答例は合格するに足りる一定の水準を満たしているはずである。

 したがって、その解答例を書き写せば、書き写す過程で答案構成を把握・理解することができる。

 次に、答案例に登場するキーワードは、試験で答案に表現する必要があるため、記憶する必要がある。

 つまり、選択式試験よりも深いレベルの記憶が必要となるところ、解答例を書き写すプロセスにおいて、頭だけではなく手が記憶してくれる

 さらに、解答例を見ていて違和感があれば、当然私の修正が入ることになる。

 そして、過去問を書き写す過程で頻出分野等も把握できる

 当然、頻出分野の書き写し回数は増えるため、記憶の定着がはかどることも言うまでもない。

 

 というわけで、100問の書き写しが終了したころには、答案構成についても把握し、キーワードについてもある程度記憶することができた

 ただ、だからといって記憶が正確であるか、答案構成が具体的に再現できるかは不明である。

 そこで、書き写しが終わった後で、直近の過去問(数回分)を見て、答案構成ができること、重要なキーワードが記憶できることを確認していった

 答案構成の修正が必要な部分や記憶の足りない部分はあったが、最後の調整でなんとかなった。

 

 

 なお、この試験を受験するために要した時間は40時間以上であった(他の試験と同様、試験を受けるための時間も含めている)。

 これは、一夜漬け、二夜漬け、または隙間時間のみで対応した他の試験よりも多い。

 それだけ、十分なリソースを投入したと言えるだろう。

 

3 試験本番について

 この点、「金融コンプライアンス・オフィサー1級」は、試験時間が180分で論述式の問題が10問出題されるということになっている。

 そこで、時間配分についても事前に決めておくことにした。

 

 まず、1問にかけられる時間は18分となる。

 そして、答案構成と答案を記述する作業を1:2とする。

 さらに、1分に筆記できる文字数を50文字とする。

 

 そうすると、1問に対して論述できるのは約600文字となる

 また、約5分で答案構成までを終える必要があると言える。

 以上のことを意識して試験本番に臨むことにした。

 

 

 というわけで、試験当日、試験会場に赴いて、受験した。

 試験時間中は、ひたすら問題文を読んで、ひたすら答案構成をして、ひたすら答案を書きまくった

 それくらい必死であった。

 

 

 そして、試験は無事に終了。

 記述式試験であるから、採点結果についてはよく分からない。

 分からない段階であれこれ推測するのもあれなので、その辺は結果が戻ってみてから改めて確認することにする。

 

 

 以上、「金融コンプライアンス・オフィサー1級」に挑戦したことについて備忘録としてブログにアップする。

 試験の結果や試験の感想については結果が届いた段階にでも。

 

 では、今回はこの辺で。

「実用数学技能検定1級」に挑戦して撃沈したときのこと

(本件記事は2025年10月19日に「資格試験不合格の危機」というタイトルでアップしたところ、趣旨不鮮明(!)のため2025年10月26日に全面差し替え)

 

0 はじめに

 私は、2019年から「資格取得のための学習」を継続している。

 また、備忘録をを兼ねて、資格取得に関するプロセスと結果についてはこのブログの記事としてアップしている。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 

 この点、過去の私は「学習習慣の確立」を企て、資格を取得し続けようと考えていた。

 しかしながら、一夜漬け、二夜漬け(試験の2日前あたりから徹夜等によって対応すること)、または、隙間時間の活用によって、多くの資格試験はどうにかなってしまった。

 つまり、「学習習慣を確立」という私の目論見は木っ端みじんに砕け散った

 現時点では、「社会生活上の要請に従い、(淡々と)資格を取得している」だけであり、 学習習慣の維持についてはこのブログの記事の作成に委ねている始末である。

 

 

 もちろん、一夜漬け、二夜漬け、または、隙間時間等の活用のみで対応せず、資格取得のために相当の学習時間を割いた試験もある

 具体的には、「簿記3級」・「簿記2級」・「基本情報技術者がこれに当たる。

 

 この点、「簿記3級」と「簿記2級」については記録がないため想像になるが、各試験の教科書(「簿記3級」は1冊、「簿記2級」は商業簿記と工業簿記の2冊)を読み、教科書に掲載されている問題を現実に解いていたことを考慮すれば、50時間以上の時間を割いているだろう。

 また、「基本情報技術者試験」についても合格のために約65時間を割いている。

 

 これに対して、基本情報技術者試験」と同程度に時間を割きながら撃沈した試験がある。

 それは、「実用数学技能検定1級」である。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 この試験に撃沈したときのことは上の記事で述べているが、具体的な試験結果について触れていなかった。

 もちろん、1次試験と2次試験の両方が不合格だったわけであるが、社会生活の変化もあって、書くことを忘れていたものと考えられる。

 

 そこで、今回はこの試験の結果について振り返っておくことにする。

 

1 第389回実用数学技能検定1級の結果

 前回の記事では書いていないが、この試験の結果は次のとおりであった。

 

1次試験 4点(7点満点中5点以上で合格、予想は4.5点)

2次試験 1.2点(4点満点中2.5点以上で合格、予想は2.5点)

 

 この点、予想と現実の違いをみてみると次のようになる。

 

・ 1次試験では「(1)が解けた」と判断していたところが誤りで、その他の予想はあっていた。

・ 2次試験では、解ききったと判断した1問が完全に誤っており、また、部分点が考えてたよりも少なかった。

 

 

 さらに、それぞれの試験の各問題の分野と正誤を見ていくと次のようになる。

 

(1次試験、計算技能検定)

第1問_正解_連立合同方程式

第2問_正解_虚数における関数

第3問_正解_空間幾何

第4問_不正解_微分

第5問_正解_確率・統計

第6問_不正解_行列式

第7問_不正解_微分方程式

 

 この点、受験当時に「公式を覚えていなかった」と悔やんだのは第7問であった。

 結果を見れば、これを解いていれば合格できていることになるのだから。

 もっとも、この公式を覚えていないようでは不合格でもしょうがない、という感じはする。

 

(2次試験、選択した問題のみ抽出)

第1問_不正解_整数

第4問_正解_確率・統計

第6問_不正解_線形代数

第7問_部分点(0.2)_微分

 

 第6問の線形代数の問題は解けたと考えていたが、間違っていた。

 また、第7問については解法を正確に覚えておらず、部分点で終わった。

 これでは、不合格となって当然であろう。

 

2 リベンジマッチに向けて

 この点、当時の私は「絶対的な演習量の不足」が不合格の原因であると考えていた。

 もちろん、演習が足らなかった点は間違いない。

 

 しかし、具体的に試験結果から振り返れば、「(演習を通じて行うべき)微積分や線形代数の理解が不十分だった」という点も否定できないような気がする。

 

 例えば、1次試験の第7問(微分方程式)において「公式を忘れる」という大失態を演じたわけだが、教科書の該当箇所を理解していれば「公式を忘れる」という自体は回避できただろう(なお、現時点で「この問題を解け」と言われれば、解けるだろう)。

 また、2次試験の第7問(偏微分)において極値の求め方を間違える」という失態を演じているが、教科書の該当箇所を記載していれば「求め方を間違える」という失態は回避できたような気がする。

 さらに、1次試験の第6問(行列式)は時間が足りず、演習不足を実感したわけだが、解法に関する理解があればもっと食らいつけたであろう。

 そして、2次試験の第6問(線形代数)は、線形代数の概念をちゃんと理解していなかったが誤答の原因である。

 なお、合格点から逆算すれば、1次試験の第4問と2次試験の第1問は捨て問としても差し支えない。

 

 

 このように考えてみると、当時の私が判断していたよりも、リベンジマッチは可能であるように見える

 もちろん、合理的な学習計画を立て、必要な教材を用いて、十分な演習を実施する必要があるだろうし、現時点で行っている「社会的要請に応じた資格取得」が一段落するまでは待つ必要があるだろうが。

 

 真面目に数学検定1級に対するリベンジマッチを検討してもいいのかもしれない。

 

 

 では、今回はこの辺で。

ノートPC内のファン掃除、その他諸々

0 はじめに

 先日、私のノートPCの背面を開け、内部の掃除、及び、CPUの温度測定テスト等を行った

 そこで、その内容について備忘録として残すことにする。

 

1 内部掃除の端緒について

 約1年前、7年以上使ってきた私のノートPCのCPUが高温になったまま温度が下がらず、起動できなくなるといった事態が起きた。

 そこで、「(他人がやれば大丈夫であるとしても、不器用な私がやれば壊れるかもしれないけど、)やるしかない」と覚悟を決め、PCの底蓋を開けてファン等を清掃した。

 このときのことは、次のブログの記事にまとめた通りである。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 上のブログで書いてある通り、当時の私はおそるおそるPCの底蓋を開けて、ファンを掃除した。

 そして、無事にPCを故障させることなく、ファンの中に詰まっていた埃を取り除き、ファンをある程度綺麗にすることができた。

 

 

 あれから約1年、「CPUが高温になったまま温度が下がらず起動できない」という事態は特に起きていない。

 ただ、PCのイベントビューアーを見ていると、次のエラーが度々出ていた。

 

(以下、PCのイベントビューアーに登場する警告をコピペしたもの、時刻等重要でない部分は中略、半角英数字は全角英数字に変換、強調は私の手による)

 警告 Kernel-Processor-Power

(Microsoft-Windows-Kernel-Processor-Power) 37

 グループ0のプロセッサ1のスピードはシステム ファームウェアによって制限されます。プロセッサは、最後のレポート後 71秒間このパフォーマンスが制限された状態にあります。

(引用終了)

 

 この点、プロセッサの番号(上でいうところの「1」)や制限された状態になる時間(上でいうところの「71秒」)は様々であるが、度々この警告が出ていた。

 また、約1年前にPCの背面を開けて掃除した際にも同様のエラーメッセージが発生していた。

 そこで、私は再び背面を開けて中の掃除をすることにした。

 

 

 まずは、ピンセットやドライバ、ペンライト等を準備する。

 その上で、PCの電源を落とし、ケーブルを外し、ノートPCをひっくり返す。

 少々埃が見えなくもないが、ひどいわけでもない。

 

 

 慎重にネジを開け、バッテリーとハードディスク(SDDに換装したもの)を外す。

 次に、メモリのある部分のネジを外す。

 そして、背面が固定されているネジを次々と外していく。

 背面を開ける際、「固定されているネジがあるようだが、どこにあるか分からない」といった状況に陥り、少々手間取ったが、なんとか外すことができた。

 

 

 外した際の全体写真は割愛。

 細かく見ていくとほこりがたまっていることが分かる。

 それから、右側のスピーカーに亀裂が入っていることを確認した。

 

(以下、そのときの写真、埃がそこそこあるため注意)

 

 前回の背面を開けたときよりも前のことと記憶しているが、ノートPCのスピーカーの音割れがひどく、外付けスピーカーを買うことで対応したことがあった

 原因はこれ(右側のスピーカーの破損)のようだ。

 実際、掃除が終わってから調べたところ、右側のスピーカーだけが音割れしており、左側のスピーカーは問題ない事実が判明した

 原因が判明して何よりである。

 

 他にも、細かく見ていけば、埃が残っている。

 空気の入り口等に埃がたまっているようだ。

 それらをエアダスターで吹き飛ばしていった。

 

 

 また、ファンの部分もエアダスターを使って埃を払うことにした。

 前回はごっそり埃が出てきた感じであったが(写真がないため記憶のみ)、今回はそのようなことはなった。

 

 

 なお、グリスについては今回も怖くて塗りなおさなかった。

 

 

 

 そんな感じで掃除を終えた段階がこんな感じである。

 あまり綺麗になった感じではないが、 エアダスターが使えなかった以上、まあいいだろう。

 

 

 

 というわけで、ネジをはめなおして背面を固定する。

 途中、ネジが1本見つからなくてあせったが、どうにかなった。

 そして、無事に起動できたことを確認。

 

 前回の場合と比較してそれほど緊張することなく完了させることができた。

 たぶん、次回もちゃんとできることだろう。

 

2 CPUの温度をチェックする。

 これでエラーメッセージが消えたかな、と考えていたが、程なく前述のエラーメッセージが登場した。

 とすれば、原因は別にあることになる。

 特に、グリスを塗らなかったことが原因である可能性も否定できない。

 そこで、現在のCPUの温度に異常がないかをチェックすることにした。

 間を置くことなく背面を再び開けるのは回避したかったからである。

 

 

 具体的には、①通常のCPUの温度、②動画を流している状況のCPUの温度、③強引にCPUが動いている場合の温度を測定することにした。

 また、CPUの高負荷状態を実現させるため、次の疑似無限ループのプログラムをpythonで作成した。

 

(以下、具体的に作成したプログラム)

var1 = 0

while 1 :

    var1 += 1

    print(var1)

    if var1 == 5000000 :

        break 

(プログラム終了)

 

 プログラムの作成自体は大したことがない。

 ただ、このプログラムを1個動かす程度ではCPUの使用率が100%とならないため、コマンドプロンプトを12個起動させ、同時に上のプログラムを走らせることにした

 原始的な手段ではあるが、CPUが高負荷になっている状態の温度を調べるということであれば、これでいいだろう。

 

  また、温度測定の際には、「SpeedFan」というフリーソフトを拝借している。

 これは、前回確認した際のソフトと同様である。

 

www.vector.co.jp

 

 さらに、CPUの温度の標準値は次のような感じらしい。

 

・ 特に何もしていない場合 30~50℃

・ 通常利用時 50~70℃

・ 高負荷状態 70~85℃

 

 この数値と比較しながら、温度を確認していった。

 

 

 以下は測定結果について確認する。

 まず、動画等を流さない状況で利用していた場合の温度は次の通りであった。

 

 


 たまに、温度が上がるタイミングがあるが、60℃になることはでいくことはないらしい。

 

 次に、動画を流している状況でCPUの温度を測定した結果は次の通りである。

 

 

 

 いずれも一定の頻度で一時的に温度が上昇しており、その頻度は動画を流していない状況よりも多いだろうが、それでも70℃を超えるようなことはなかった。

 通常の利用方法は負荷が高くなってこれである。

 ならば、温度の観点からはそれほど気にする必要はないのかもしれない。

 

 最後に、高負荷をかけた状況のCPU温度の測定結果は次の通りであった。

 

 

 一気に温度が70℃くらいまで上昇し、最終的には80℃を超える勢いであったが、高負荷状態が解除され次第、温度は急激に下がった。

 特に問題があるようには見えない。

 

 以上の測定結果と現在のPCの使用状況を考慮すれば、現在のCPUの温度制御に特段の問題はないだろう。

 したがって、現時点ではグリスの塗りなおし等は必要ないと言えるだろう。

 まあ、どのみち、近い段階でPCを買いなおすだろうから。

 

 

 では、今回はこの辺で。

続々・マネロン・テロ資金供与対策等の勉強を始める 17(最終回)

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」等について確認する。

 なお、今回が最終回である。

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」

(以下「ディスカッション・ペーパー」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/02.pdf

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する事例集」

(以下「事例集」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/03.pdf

 

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

(以下「ガイドライン」という。)

 https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf

 

29 パブリック・コメントに対する感想

 ディスカッション・ペーパーが公開されている金融庁のサイトには、事前に発表された「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」(案)に対するパブリックコメントが掲載されている。

 

www.fsa.go.jp

 

コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方

https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/01.pdf

 

 せっかくなので、これについてもざっと見て感じたことをメモに残しておくことにする。

 生のパブリックコメントを見る機会はなかなかないであろうから

 

 

 最初に気になった点が、「有効性検証の主体」に関するコメントが相当件数あった件についてである。

 具体的には、コメントのNo.3~4とNo.7~14がそれに該当する。

 

 この点、ディスカッション・ペーパーの結論を簡単にまとめれば次のようになるであろう。

 

・ 有効性検証を実施する部門には専門性が必要であるが、独立性は不可欠ではない

・ 内部監査部門は、有効性検証の実施状況について、営業部門、及び、管理部門からの独立した立場で監査を実施する必要がある。

 

 あと、参考になるのが、パブリックコメントに登場する金融庁の考え方であろうか。

 

(以下、「パブリックコメント」のコメントに対する「金融庁の考え方」のNo.14から引用、半角英数字は全角に変更、強調は私の手による)

 有効性検証についても、GL「Ⅲ-3経営管理(三つの防衛線等)」に記載の「金融機関等においては、その業務の内容や規模等に応じ、有効なマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢を構築する必要があり、営業・管理・監査の各部門等が担う役割・責任を、経営陣の責任の下で明確にして、組織的に対応を進めることが重要である」ということが同様に適用されるということを意味しています。

(引用終了)

 

 これらを踏まえれば、金融機関等が組織全体で有効性検証を実施したというためには、次に掲げる事項を実施する必要があるようだ。

 

① 有効性検証に関する方針・手続の制定、及び、計画等の策定

② 「3つの防衛線」を前提とした有効性検証を実施するための態勢整備

③ 制定した方針・手続きに基づいて策定した計画等に基づいた有効性検証の実施

④ 実施された有効性検証に対する監査

 

 そして、有効性検証の実施主体は②に属する問題であり、③の実施主体については独立性が不要であり(したがって、どの部門が担当してもよいことになる)、④については独立性が必要である(したがって、監査部門が実施する必要がある)というまとめ方が可能であろうか。

 そして、金融庁から見れば、「あとは個々の金融機関等の事情に従って、経営陣が自分自身で決めろ」というところなのかもしれない。

 

 

 次に気になった点が、「パブリックコメント」のコメントの概要のNo.6に次のような記載があったことである。

 

(以下、「パブリックコメント」のコメントの概要のNo.6から引用、各文毎に改行、強調は私の手による)

 マネロンガイドラインのように、【対応が求められる事項】、【対応が期待される事項】と2段階に分類して記載いただく。

 または、【基本的な事項】、【標準的な事項】、【高度な事項】と3段階に分類した表記をお願いしたい。

(引用終了)

 

 私も同感である。

 もっとも、有効性検証が始まったのは最近のこと。

 将来的には、ガイドラインと同様に「対応が求められる事項」等が記載されるようになるような気がする。

 

 

 最後に気になった点が、ディスカッションペーパー自体、または、金融庁のマネロン対策それ自体に対するコメントが相当数あった点である。

 具体的には、No.46からNo.55がこれにあたり、これは全コメントの約5分の1に相当する

 その概要を引用しながらまとめれば、次のようになるであろうか。

 

(以下、「パブリックコメント」のコメントの概要のNo.46~56から引用、各文毎に改行、一部中略、強調及びイタリック体による補足は私の手によるものである)

(私の注、コメントの概要のNo.46より)

 マネーロンダリング対策は、(中略)一般国民の生活にも直接影響する。(中略)

 しかし、今回の提案では「顧客体験」や「利便性とセキュリティ」のバランスについてはほとんど触れられていない

 犯罪防止は重要だが、過剰な規制が国民生活や事業の流動性を損ねるようでは本末転倒だ。

 金融庁はこうしたトレードオフについて明確に議論し、国民の信頼を得るべきだ。

 

(私の注、コメントの概要のNo.47より)

 この提言は、その名の通り「論点整理」と「実践の提示」にとどまっており、マネーロンダリングやテロ資金対策の具体的な行動計画はほとんどない。(中略)

 こうした抽象的な文書は(中略)実際の犯罪防止には役立たない

 

(私の注、コメントの概要のNo.49より)

 この提案は、(中略)具体的な対策や実行可能な行動計画が欠けているように思われる。(中略)

(中略)特定の金融機関や規制当局が直面する実務上の課題に対する解決策を示唆していない

 例えば、リスクベースアプローチの適用方法や実際の監視・検証プロセスについて明確なガイドラインや事例がほとんど含まれていないなど、重大な欠陥がある。

(中略)現場の混乱を増大させるだけで、効果的な対策にはつながらない。

 

(私の注、コメントの概要のNo.50より)

(前略)国際基準に従うだけでは、日本特有の金融環境や犯罪特性には対応できない可能性がある。(中略)

 

(私の注、コメントの概要のNo.51より)

 リスクベースアプローチを強調しているようだが、その定義や範囲は曖昧で、どの程度のリスクを「高い」とみなすべきかの具体的な基準や指標も欠けている

(中略)基準が明確でなければ、過剰反応や怠慢に陥る恐れがある。(中略)

 金融機関に責任を押し付けるだけであり、対策全体の実効性は期待できない。

 

(私の注、コメントの概要のNo.52より)

 対策の「実効性の検証」という目標は掲げられているものの、その実効性をどう測るかという具体的な監視・評価の仕組みは示されていない

 単に「対話」で検証するだけでは、客観性や信頼性に欠ける結果となる。(中略)

 今回の提案では検証方法が不明確で、形ばかりの取り組みに終わる恐れがある。

 

(私の注、コメントの概要のNo.53より)

 専門用語や抽象的な表現が多く、(中略)。

 国民の預金や資産を守る責任がある金融庁なのに、なぜ具体的な成果や失敗を明記しないのか。(中略)

 今回の提案は形式的な報告書に過ぎず、説明責任を果たしていないと言わざるを得ない。

 

(私の注、コメントの概要のNo.54より)

 マネーロンダリング対策は、金融機関やコンプライアンス担当者にとってすでに膨大な作業量となっている

 今回の提言は、FATFの国際基準や理論的なリスクアプローチを強調しているが、実際の業務プロセスやリソースの制約を無視しているように思える。

(中略)費用と効果のバランスは何かといった実践的な観点が全く考慮されていない。

 現場の声に耳を傾けず、金融庁トップダウンで理論的な枠組みだけを押し付ければ、混乱を招き、実効性のある対策を阻むことになるだろう。

 

(私の注、コメントの概要のNo.55より)

  総じて、今回の提案は金融分野という狭い視野にとどまり、社会全体への影響を無視したまま推し進められるおそれがある。(中略)

 マネーロンダリング対策は重要な課題だが、金融機関や規制当局の内部問題としてのみ捉えるべきではなく、(中略)、より広い社会的要因を考慮する必要がある

 今回の「整理(案)」はそうした狭い視野を露呈しており、結果的に社会全体の安定と発展を損なうおそれがある。(中略)

 このままでは机上の空論に終わり、社会問題を増幅させるだけだろう

(引用終了)

 

 言いたい放題である

 まあ、私も似たような感想を持っているわけであり、全く否定する予定はないのだが。

 

 これらのコメントをざっくりまとめれば、次の3点に集約されるであろうか。

 

・ 国民生活をも考慮したマネロン等対策の検討の欠如(No.46、No.55)

・ リスクベースアプローチ、高リスク、有効性検証の実施事項に関する基準の具体性・明確性の欠如(No.47、No.49、No.51、No.52、No.53)

・ 国際基準への過剰適用に伴うコスト及びリソース上の制約に対する認識の欠如(No.50、No.54)

 

 しかし、こうやって見ていると、「敗因21カ条」との類似性が頭に浮かんでくる

 この点に踏み込むと色々と面白いものが得られるかもしれない。

 

 

hiroringo.hatenablog.com

 

30 ディスカッション・ペーパー及び事例集を確認した感想

 最後に、この学習ブログにおいてディスカッション・ペーパーと事例集を確認した感想をメモに遺しておく。

 

 

 なんといっても最初に述べるべきことは、「『ブログを作りながら読む』というのは、勉強になる」という点である。

 当然のこととはいえ、ただ読むだけよりも理解が進んだ。

 

 その一方、犯罪収益移転防止法やガイドライン等を学んだ場合と比較すると、あまり理解が進んでいない気がする

 これは、座学に対応する経験がないからであろうか。

 この点は、適宜フォローしておきたいところではある。

 

 あと、今回の学習は結構負担が軽くなかった。

 参考事例を淡々と追いかけるのは、負担が大きいのかもしれない。

 

 

 では、今回はこの辺で。

 

 今後は、この学習ブログの本分である「日本教関係の書籍の読書メモ」に回帰しようと考えている。

 約1年間、読書メモを全く作っていないので。

続々・マネロン・テロ資金供与対策等の勉強を始める 16

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」等について確認する。

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」

(以下「ディスカッション・ペーパー」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/02.pdf

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する事例集」

(以下「事例集」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/03.pdf

 

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

(以下「ガイドライン」という。)

 https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf

 

28 事例集の第4項の確認

 事例集の第4項のタイトルは「その他(検証主体や検証手法など)」。

 前回までに確認した内容は、マネロン等リスクの特定・評価に係る検証、マネロン等リスクの低減策の整備に係る検証、及び、マネロン等リスク低減措置の実施に係る検証における参考事例である。

 これに対して、今回確認する内容は、誰が検証するのか、または、どのように検証するのか、といった検証主体や検証手法に関する参考事例である。

 

 

 まず、参考事例の前に書かれているいわゆる柱書の内容を確認する。

 その概要は次の通りである。 

 

① 効果的な有効性検証を実現するためには、次に掲げる事項も重要である。

 ・ 有効性検証を実施するための態勢整備

 ・ 有効性検証を実施するための手法の整理

② この項目では、次に掲げる事項を実施する際に参考になる検証主体の設置や検証手法に関する参考事例を紹介する。

 ・ マネロン等リスクの特定・評価に係る検証

 ・ マネロン等リスクの低減策の整備に係る検証

 ・ マネロン等リスク低減措置の実施に係る検証

③ この項目で掲載されている事例は、金融機関等との対話の中で把握した実態に基づいている

 

 これまでの事例集が各論であれば、この項目に登場する事例は総論と言うべきか。

 ならば、掲載の順番が逆ではないか、と感じなくはない。

 

 

 以下、「検証主体や検証手法など」における参考事例を確認する。

 その概要は次の通りである。 

 なお、ナンバリングについては⑳で一区切りとなるため、⑳の次は①と表記するものとする。

 

① 次に掲げる事項を考慮して有効性検証の検証対象を決定した上で、次年度の年次計画に反映している。

 ・ 全社的リスク評価の結果

 ・ 金融機関等の内外から指摘された事項

 ・ 規程等の改定状況

 ・ 組織、及び、体制の変更状況

 ・ 新商品、及び、サービスの導入実績 

② 管理部門において、有効性検証を担う専門部署をマネロン対策等を所管部署から独立させた形で設置している。

③ 監査部門が、管理部門による有効性検証の実施状況について適宜確認した上で、監査計画を臨機応変に調整・修正している。

④ 監査と同様の手法を検証目的や検証対象に応じて使い分けることにより 有効性検証の実施しているところ、監査と同様の手法の具体例として次に掲げる事項が挙げられる。

 ・ 業務担当者へのインタビュー

 ・ 業務実施状況の直接観察

 ・ 文書レビュー

 ・ サンプリング

⑤ サンプルチェックを活用して有効性検証を実施する場合において、次に掲げる事項をあらかじめ規程等に定めている。

 ・ 母集団の特定方法

 ・ 統計学的なサンプル抽出手法

⑥ 有効性検証によって課題(指摘事項)が発見された場合、有効性検証の担当部署は、フォローアップとして次に掲げる事項を実施している。

 ・ 有効性検証を実施し、課題が発見された関係部署が提出した是正策の受領

 ・ 受領した是正策の内容に関する調査・検討

 ・ 是正策が完了した場合における是正策に関する証跡の受領

 ・ 是正策の実効性に関する確認・承認等

⑦ リスク低減の程度を測る指標を設定することにより、定期的にリスクレベルを把握しているところ、リスク低減の程度を測る指標の具体例として次に掲げる事項が挙げられる。

 ・ 疑わしい取引の届出件数

 ・ 高リスク顧客の割合

⑧ 管理部門が担当している業務の手続きや流れについて、関連する規程等・マニュアル等が管理部門の担当者以外の第三者再現可能なレベルにまで具体的かつ明確になっていることを検証している。

⑨ マネロン等対策に係る国内外の法令・規制等の制定・改廃等があった場合に次に掲げる事項を実施している。

 ・ 管理部門による国内外の法令・規制等の制定・改廃等の内容、及び、自身の業務への影響等の調査

 ・ 調査結果の経営陣等に対する報告、及び、金融機関等の内部に対する共有

 ・ 外部弁護士の意見や助言を踏まえた報告・共有された調査結果に対する妥当性の検証 等

⑩ 営業部門の自律的統制の枠組みとして、マネロン等リスクの知見を有する専門の担当者を営業部門に配置し、主として手続準拠性の観点で次に掲げる事項についてPDCAサイクルにて実施するとともに、管理部門が営業部門におけるPDCAサイクルの実施状況を確認することによって、営業部門の自律的統制が有効に機能していることを検証している。

 ・ 点検計画の作成

 ・ 作成した点検計画の実施

 ・ 検知事項分析の対応 等

⑪ リスクの評価によって高リスクと評価した顧客属性、並びに、商品、及びサービスに対するマネロン等リスク低減措置を実施後、自身が直面しているマネロン等リスクに関する指標等の推移を分析・検証することによって、具体的に実施しているリスク低減措置の有効性を確認している。

⑫ リスク評価書作成時以外において、自身の外部環境に係る指標等として活用可能なマネロン等リスクに関する国内外の指標の推移について定期的に検証するとともに、外部環境に係る指標等に著しい変化が発生していることを認識した場合には、その原因分析を踏まえて自身の適時におけるマネロン等対策の有効性検証を実施している。

⑬ 次に掲げる結果を自身のマネロン等リスクの特定・評価・低減の検証、特に、リスク低減策の適切性の確認等に活用している。

 ・ マネロン等対策に関係する職員へのヒアリングの結果

 ・ マネロン等対策に関係する職員へのアンケートの結果 等

⑭ マネロン等リスクの特定・評価・低減に関する業務の一部を外部に委託している場合において、外部委託先管理の一環として、1年毎に次に掲げる事項を検証している。

 ・ 外部委託先の業務遂行に係る態勢整備の状況

 ・ 外部委託先の業務遂行の状況 

⑮ マネロン等対策に係る共同運用システムを利用している場合において、リスク評価書の作成時等の定期的な時期において、金融機関等自身が直面するマネロン等リスクに対して共同運用システムが有効に機能していることを検証している。

⑯ 四半期毎といった定期的な時期において、マネロン等対策に係る業務を共同化している他金融機関と会議を開催し、次に掲げる事項を実施することによって共同で行っている業務の有効性の維持・高度化を実施している。

 ・ 情報共有

 ・ 運営状況の検証

 ・ 改善事項の検討

 ・ 改善対応のフォローアップ 等

⑰ 営業店や外為業務所管部署等の営業部門に対して、次に掲げる事項を実施することにより、マネロン等対策に係る業務遂行の準拠性・適切性について確認している。

 ・ 立入りを伴う定期的なモニタリングを実施する計画の策定

 ・ 立入りを伴うモニタリングの実施

⑱ 管理部門、または、営業部門自身が、営業店への立入り、及び、部店長等を含む職員との面談を実施することにより、次に掲げる事項を実施している。

 ・ 営業店におけるマネロン等リスク低減措置の実施状況等の確認

 ・ 営業店における規程等に定められた手続に準拠した対応状況等の確認

 ・ 営業店が抱える問題点等の確認

 ・ 営業店における確認内容を踏まえたリスク低減措置の実施に関する対応の是正

 ・ リスク低減策の整備に関する示唆情報があった場合の必要に応じたリスク低減策の整備に関する担当部署への還元 等

⑲ グループのリソースを活用した有効性検証を実施しているところ、グループのリソースを活用した有効性検証の具体例として次に掲げる事項が挙げられる。

 ・ グループ内のコンサル会社に対する一部の検証の委託

 ・ 関連会社の事務集中部署における営業部門におけるリスク低減措置の実施状況についてモニタリングする専担部署の設置

⑳ 次に掲げる事項を踏まえた上で、検証対象項目を特定している。

 ・ 外部専門家による支援

 ・ 欧米等の先進事例 等

① ATMや店頭取引に関する取引モニタリング等のリスク低減策の整備状況、及び、運用状況について、社会における特殊詐欺の増加等を踏まえながらコンサルタント業者等の外部専門家による有効性検証を実施している。

 

 以上、検証主体や検証手法に関する参考事例を確認した。

 参考になる部分が少なくなさそうである。

 

 

 次回は、ディスカッション・ペーパーや事例集を確認した感想等について触れることにする。

 では、今回はこの辺で。

続々・マネロン・テロ資金供与対策等の勉強を始める 15

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」等について確認する。

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」

(以下「ディスカッション・ペーパー」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/02.pdf

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する事例集」

(以下「事例集」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/03.pdf

 

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

(以下「ガイドライン」という。)

 https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf

 

27 事例集の第3項の確認_後編

 前回から事例集の第3項の「マネロン等リスク低減措置の実施に係る検証」について確認し始めた。

 また、前回は復習を兼ねて「考え方」と「着眼点」について確認した。

 

 

 今回は、「マネロン等リスク低減措置の実施に係る検証」における参考事例を確認する。

 その概要は次の通りである。 

 なお、ナンバリングについては⑳で一区切りとなるため、⑳の次は①と表記するものとする。

 

① 顧客から受領したKYCに関する質問票回答のサンプル等を用いて、高リスク顧客に対するデュー・ディリジェンスが規程等に定められたとおりに実施されていることを確認している。

② 高リスク顧客に対する追加的リスク低減措置が規程等に定められたとおりに実施されていることを確認している。

③ 営業店の実施状況に対するサンプルチェック等によって、新たに高リスクと評価した顧客に対して規程等に準拠したEDDが速やかに実施されていることを確認している。

④ 運用システムにおいてサンプルデータを入力すること等によって、自社の顧客リスクスコアリングモデルに沿って適切にスコアが付与されていること、具体的には、顧客リスク評価ロジックが適切にシステムに反映されていることを確認している。

⑤ 実務を担当する部署からマネロン等対策担当部署に対して、口座、または、アカウントの開設を謝絶した事案について事後的に全件報告させるとともに、マネロン等対策担当部署において、リスク遮断に係る対応が規程等に定められたとおりに実施されているかについて、次に掲げる事項の観点から検証している。

 ・ 疑わしい取引の届出漏れの有無

 ・ マネロン等対策という目的を濫用した合理的な理由のない謝絶の有無

 ・ 謝絶の記録の保管状況の適切性等

⑥ 事前に、リスクベースアプローチの観点からデータ管理上重要と定義するデータから選定した上で、顧客データ、口座データ、または、取引データ等といったマネロン等対策関連ITシステムに連携されたデータについて、勘定系システム、または、情報系システム等といった上流システムが保有するデータと比較・照合することによって、次に掲げる観点に基づいて検証している。

 ・ 必要な情報が全て揃っているという意味での網羅性

 ・ 欠損がないという意味での正確性等

⑦ システム構築後に、マネロン等対策関連 ITシステムに連携されたデータの網羅性、及び、正確性について確認するとともに、定期的なモニタリングによってより重要なデータの網羅性、及び、正確性について確認している。

⑧ マネロン等対策関連システムを網羅的に把握、及び、管理した上で、ITシステムに連携されるデータの網羅性、及び、正確性等の有効性検証を行う体制を構築しているところ、ITシステムの活用によって実施している事項として次に掲げる事項が考えられる。

 ・ 顧客リスク格付

 ・ 取引モニタリング

 ・ 取引フィルタリング等

⑨ データの網羅性、及び、正確性の有効性検証を実施する主体の具体例として次に掲げる事項が挙げられる。

 ・ 社内の独立したチーム

 ・ 委託先の外部ベンダー

⑩ 定期的にサンプルチェック等を実施し、次に掲げる事項を比較・照合することによって、マネロン等対策関連ITシステムに登録されるデータの正確性について検証している。

 ・ 元の情報

 ・ 利用可能な記号種、または、空白の入力可否等から想定されるデータ型

⑪ マネロン等対策に係るシステムに影響が発生する懸念がある場合に、マネロン等対策に係るシステムが設計どおりに機能するか確認しているところ、マネロン等対策に係るシステムに影響が発生する懸念がある場合の具体例として次に掲げる事項が挙げられる。

 ・ 新たな商品、または、サービスの導入

 ・ 基幹システムの変更

⑫ 定期的なサンプルチェックによって、 マネロン等対策に係る各種データに関する次に掲げる事項について適切に実施され、かつ、規程等に準拠していることを検証している。

 ・ システムへの入力

 ・ 記録の保存

 ・ 関連システム間のデータ連携

⑬ 自主点検や臨店等によって、次に掲げる事項の適切性について確認している。

 ・ マニュアル検知状況、具体的には、窓口等における異常取引の検知状況

 ・ 記録の保存状況 等

⑭ 取引モニタリングで検知された取引から数件程度をランダムによって抽出することによって、次に掲げる事項について確認している。

 ・ 抽出された検知取引の勘定系データ等が検知されたシナリオに設定されている条件を満たしていることの確認

 ・ 新シナリオ設定時におけるシミュレーション機能の活用によるシナリオに設定された条件通りの検知結果が得られることの確認

⑮ 次に掲げる事項についてサンプル調査することによって、アラート調査業務及び疑わしい取引の届出要否判断の適切性を確認している。

 ・ 調査に必要な情報の抽出状況

 ・ 調査に必要な追加情報の取得状況

 ・ 謝絶判断の整合性

 ・ 届出判断の整合性

 ・ 届出に要する事務処理時間の管理状況 

⑯ 疑わしい取引の届出やフィルタリング業務等に関し、次に掲げる事項について高頻度で検証することによって業務の改善に活用している。

 ・ 判断に必要な情報の収集する時期の適切性

 ・ 判断に必要な情報の十分性、及び、必要性

 ・ 収集した情報に基づいて実施した判断の適切性

 ・ 収集した情報に基づいて導出した結論の合理性

⑰ 取引フィルタリングに用いるリストの更新記録等の確認によって、取引フィルタリングのリストの更新が遅滞なく実施されていることを検証している。

⑱ 年次、または、月次といった定期的な時期における全件確認によって、取引フィルタリングの前提となるデータ登録に関して次に掲げる事項を確認している。

 ・ 規程等に定められた手続に従って登録していること

 ・ 登録データに漏れがないこと

 ・ 登録データにミスがないこと

⑲ 前月1か月間に提出した疑わしい取引の届出について次に掲げる事項を実施している。

 ・ 該当した取引に係るリスク低減措置の実効性に関する検証

 ・ 検証の結果、該当した取引に係るリスク低減措置の実効性が不十分である場合における規程等の見直しの実施

⑳ 半期毎といった定期的な時期において、管理部門が営業店等に臨店することによって、営業店等における次に掲げる事項について確認している。

 ・ 本部が定めた規程や事務手続等を踏まえた高リスク顧客、及び、通常と異なる取引への対応状況の適切性

 ・ 取引時確認、及び、取引フィリタリングにおける実施状況の正確性

 ・ 本部に対する疑わしい取引に関する報告の要否における判断の適切性

 ・ 外為法令の遵守状況等

① 海外送金に係る制裁違反リスクを勘案した結果、慎重な確認手続を実施する旨判断・決定した取引において、取引内容を考慮してリスクが特に高いと判断した取引を抽出することによって、確認内容の適切性について検証している。

② 月次等の定期的な時期におけるサンプルチェックの手法によって、外国送金、外貨両替等の高リスク取引に対する営業店の実施しているEDDの実施状況等について、コンプライアンス部門が営業店が提出した帳票やエビデンス資料等から規程等に基づいて実施されていることを確認するとともに、営業店のEDDの実施状況等が不適切であることを確認した場合には次に掲げる事項を実施している。

 ・ 営業店の業績評価の引き下げ

 ・ 営業店の職員に対する指名研修への参加の義務付け

③ マネロン等対策担当部署が次に掲げる事項に関するサンプルを抽出することによって、具体的に実施された対応が規程等に定められている手続に準拠していることを検証している。

 ・ 国際部門における海外送金、なお、仕向、被仕向の双方を対象とする。

 ・ 貿易取引への対応

④ 次年度の研修・資格取得計画の策定にあたり、次の掲げる事項踏まえて、研修・資格取得に関する有効性を検証している。

 ・ 手続違反状況

 ・ 受講後の確認テストの合格状況

 ・ 研修受講者からの意見

 ・ 研修を担当した部門からの意見

 ・ モニタリングや監査を実施した部署等からの意見

⑤ 次年度の研修・資格取得計画の策定にあたり、研修・資格取得に関する有効性検証の結果を踏まえて次に掲げる事項の見直しを検討している。

 ・ 研修対象者

 ・ 研修の内容

 ・ 研修の頻度

⑥ マネロン等対策について次に掲げる事項を実施している。

 ・ 研修プログラムの策定

 ・ 実施した研修に対する定着度等の効果の検証

 ・ 検証結果に関するマネロン等対策委員会への報告

 

 

 実施状況に対する有効性検証としても様々な事例があるようである。

 参考になった。

 

 

 次回は、第4項(検証主体や検証手法等)関する参考事例について確認する。

「異世界転移」を疑似体験する条件

0 「異世界転生」・「異世界転移」というジャンル

 日本のライトノベル小説には、「異世界」というジャンルがあるらしい。

 

ja.wikipedia.org

 

 そして、その派生ジャンルに異世界転生」異世界転移」というものがあるらしい。

 以下、それぞれのジャンルの定義をサイト「小説家になろう」のガイドラインで確認しておく。

 

小説家になろう

https://syosetu.com/

 

異世界転生・転移のキーワード設定に関して

https://syosetu.com/site/isekaikeyword/

 

異世界転生・転移キーワードの設定判断基準

https://syosetu.com/site/isekaikeyword2/

 

 

 まず、「異世界転生」とは、「主人公が元の世界で一度死亡し、異なる人物として『異世界』への生まれ変わりを果たしている作品」を指す。

 この点、ウィキペディアの定義では、「前世の記憶を持ち越したまま別の人物(キャラクター)として転生すること」という表記がされているが、上の定義においても「生まれ変わり」という文言が用いられていることから、記憶の承継はあるものとみなすことにする。

 

 次に、「異世界転移」とは、「主人公が何らかの形(移動、召喚、憑依等)で「異世界」への移動を果たしている作品」を指す。

 

 以上、この定義を考慮しながら、話を進めていく。

 

1 「異世界転生」・「異世界転移」の前提条件

 この点、主人公の立場で異世界転生」と「異世界転移」について見た場合、次の共通項を見出すことができる。

 なお、ここでは主人公に関する事項に限るものとし、世界設定等(理論の相違性、理論的観点から見た場合の両世界の移動可能性)については考慮しないものとする。

 

・ 主人公の生活環境の急激かつ重大な変化

・ 主人公の変更前の自身の記憶の(一部)保持

・ 主人公の従前の人間関係のリセット

・ 変更後の世界における主人公の活躍

 

 つまり、主人公が現世で死亡して、諸法則が現実世界と異なる異世界で別のキャラクターになったとすれば、主人公の生活環境は大きく、そして、急激に変化することだろう

 次に、死亡・転生という過程で記憶が残るのであれば、従前の自身の記憶は保持されることになる。

 さらに、死亡・転生という過程は自身のみの話になるのが原則であるから、従前の人間関係の多くがリセットされることになる。

 最後に、ライトノベル異世界に転生しましたが、平凡に終わりました、または、うまくいきませんでした」では物語にならない以上、異世界に転生して主人公が活躍しました。めでたしめでたし」になる必要がある。

 

 そして、以上の傾向は異世界転移でも同様である。

 したがって、上の4つの特徴は、異世界転生や異世界転移における一つの特徴ということができそうである。

 といっても、主人公目線で見た場合、ではあるが。

 

 

 なお、集団で異世界転生する、異世界とこの世界を行き来できるという物語もあるだろうから、その場合においては上の前提は崩れることもある。

 ただ、一般論としてはこのような前提を置いても間違いないと考えられる。

 

 あと、ここでは、世界設定の前提は考慮しなかった。

 その理由は、ここで私が考えたかったことは「疑似的に『異世界もの』を体験するための条件」であるところ、疑似体験の観点から見れば、世界設定の部分は違いについてどうにかする必要はないし、現実的に見てどうにもできないからである。

 

2 「異世界転移」を疑似体験する条件

 さて、ライトノベルにおける異世界転生、又は、異世界転移は、フィクションの世界のお話である。

 特に、異世界」なるものは現実世界において存在し得ないため、転生・転移することは不可能である。

 また、「転生」も現実には起こり得るものではない

 したがって、異世界転生を体験することは不可能である。

 

 

 これに対して、「疑似的に異世界転移を体験すること」はできなくはなさそうである。

 もちろん、「異世界」に飛ぶことはできないので転移元・転移先世界の諸法則は同じである。

 また、理論的に見れば転移元・転移先の世界の行き来は可能である。

 それゆえ、あくまで「疑似的」になることを否定するものではない。

 

 しかし、記憶の承継は我々が通常経験していることである。

 また、次の2つの条件については、頻繁に起きることとは言わないとしても、絶対に起き得ないものとは言えない。

 

・ 生活環境の急激かつ重大な変化

・ 従前の人間関係のリセット

 

 このように考えると、ファンタージの世界に飛ぶようなことはできないとしても、異世界転移」については疑似体験ができる、という感じがする。

 もちろん、物語(具体的なライトノベル)と比較した場合、スケールはおそろしく平凡なものになるだろう。

 また、厳密には「異世界転移」の定義から外れているだろう。

 あくまで、できるのは「疑似的な」体験である。

 

3 疑似「異世界転移」の具体例

 では、どんな具体例が挙げられるであろうか。

 

 この点、「核家族の家庭に生まれて親戚付き合いの少なく、他者に関心を持たなかったギフテットの小学生が、いじめの被害に耐えかねて遠方に引っ越したところ、転校先でギフテットの才能を活かして以下略」という事例を考えてみる。

 この場合、生活環境は急激にかつ大きく変化するであろうし、記憶は承継されるし、従前の人間関係の多くもリセットされる。

 この上で、転校先で活躍する、という条件を付加すれば、上で述べた4条件を満たすことになり、疑似的には異世界転移が成立しうる。

 

 もちろん、成立条件はシビアであると言わざるを得ない。

 主人公に目を向ければ、人間関係の希薄さといった条件と社会からの迫害(強制的な人間関係のリセット)という条件が見えてくる。

 その上で、自力又は他力による生活環境の急変という社会的条件が必要になる。

 そして、転移後について物語を成立させるための主人公の能力が必要になる。

 そう考えれば、頻繁に発生するものではなさそうである。

 あるいは、遭遇せずにすむなら、それに越したことはない、とも。

 

 

 しかし、物語はいいよなあ、と感じなくはない。

 いや、物語だからそうなってもらわないと救いがない、というべきか。

 異世界転移をするだけなら主人公に能力は必要はないし、現実世界における「疑似的な異世界転移」は物語のようにはいかないのだから。

 もっとも、逆に言えば、転移先の社会環境によっては「異世界転移」に近づく可能性がある、ということもできるのかもしれない。

 

 

 以上は、自分の人生の一部について「これって『異世界転移』じゃね?」と疑問に感じて考えてみたことである。

 実は、私自身、異世界転生、異世界転移のラノベはほとんど読んでいない。

 また、即席で考えたことをまとめたものに過ぎず、穴もあるだろう。

 だが、何かメモにしておかないと忘れてしまうので、ここに備忘録として残しておく。

 

 では、今回はこの辺で。

続々・マネロン・テロ資金供与対策等の勉強を始める 14

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」等について確認する。

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」

(以下「ディスカッション・ペーパー」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/02.pdf

 

「マネロン等対策の有効性検証に関する事例集」

(以下「事例集」という。)

 https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/03.pdf

 

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

(以下「ガイドライン」という。)

 https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf

 

25 事例集の第2項の確認_後編後半

 前々回と前回において、事例集の第2項の「マネロン等リスクの低減策の整備に係る検証」に記載されている参考事例について確認し始めた。

 今回は残りについて確認する。

 

 

 まず、「取引フィルタリング」における参考事例を確認する。

 その概要は次の通りである。

 

① 年次、または、四半期毎といった定期的な時期において、当局情報や関連ダミーデータを用いたシミュレーションによって、取引フィルタリングに用いるリスト、及び、取引フィルタリングシステムに設定された検知基準等を用いて制裁違反、又は、その可能性がある取引を適切に検知できているかを検証している。

② 年次といった定期的な時期において、取引フィルタリングに用いるリストの正確性・適切性を、当局告示等の元情報に照らして確認している。

③ 年次といった定期的な時期において、金融機関等における海外送金・貿易金融の取扱状況等を考慮して、取引フィルタリングに用いるリスト作成時に参照する情報の妥当性を検証しているところ、リスト作成時に参照する情報の具体例として制裁プログラム等が挙げられる。

④ 取引フィルタリングにおいて、利用するリストの正確性を担保するためリスト更新時の業務フロー・手順について、三者による再現可能性のレベルで明確化、または、規程化されているかを検証している。

⑤ 取引フィルタリングシステムにおいて、次に掲げる事項を実施した上で検索を行った場合に、サンプリングした制裁対象者についてヒットすることを確認することによって、あいまい検索機能の設定の有効性を検証している。

 ・ 氏名の語順入れ替え

 ・ ミドルネームの削除

 ・ スペル一部変更等

⑥ 半期毎といった定期的な時期において、次に掲げる事項を実施している。

 ・ あいまい検索によりヒットした数件を抽出することによる、あいまい検索の判定基準等の妥当性の検証

 ・ マネロン等対策担当部署の部長といった責任者に対する報告

⑦ 年次といった定期的な時期において、外部業者の提供するサービスを利用した他行の検知率との比較分析を活用したあいまい検索における検知基準の見直しを実施している。

 

 以上、取引フィルタリングにおける参考事例を確認した。

 キーワードは「検知の適切性」、「リスト作成時の妥当性」、「あいまい検索の有効性」ということになるだろうか。

 

 

 次に、「疑わしい取引の届出」における参考事例を確認する。

 その概要は次の通りである。

 

① 疑わしい取引の届出の判断基準が、次に掲げる事項を踏まえて規程等において用意されていることを確認している。

 ・ 犯罪動向

 ・ 疑わしい取引の届出の事例等

② 疑わしい取引の検知から届出までに要した期間を調査し、長期間を要していないかの確認をすることによって、 届出業務に必要なシステム、及び、人員といったリソース、及び、組織が準備されていることを確認している。

③ 取引モニタリングにおいて検知されたアラートを調査することによって、疑わしい取引の届出が不要であると判断した取引における届出不要の判断の妥当性について、三者によるサンプルチェック等によって事後検証を実施している。

 

 ここに示されているのは、「届出基準の妥当性」、「届出のための態勢の適切性」、「届出判断に対する事後検証」の3点。

 その意味では、色々と参考になった。

 

26 事例集の第3項の確認_前半

 事例集の第3項のタイトルは、「マネロン等リスク低減措置の実施に係る検証」。

 ここには、リスク低減措置の実施状況に対する有効性検証に関する参考事例について掲載されている。

 

 

 まず、復習を兼ねて事例集に書かれている「考え方」と「着眼点」について確認する。

 「考え方」と「着眼点」の概要は次の通りである。

 

① 変化するマネロン等リスクに対して金融機関等が有効なマネロン等対策を実施していくために、金融機関等は整備したリスク低減策に準拠した低減措置が実施されていることを確認する必要がある。

② 整備したリスク低減策に準拠した低減措置が実施されていると言えるためには、適切なマネロン等リスク低減策が整備されていることを前提に、サンプルチェック等によって次に掲げる事項を確認される必要がある。

 ・ 規程等に準拠して業務が実施されていること

 ・ システムが設計どおりに稼働していること

 ・ 管理体制が形骸化していないこと等

③ 有効性検証において、「整備したリスク低減策に準拠した低減措置が実施されていること」を確認する際の着眼点として、次に掲げる事項が考えられる。

(1)策定した規程等に準拠した実務対応の実施状況

(2)設計した仕様等に準拠したシステムの稼働状況

(3)設計した目的に沿った管理態勢の運用状況

④ 管理態勢の運用状況を確認する際の観点として次に掲げる事項が挙げられる。

 ・ 業務分掌に応じた各部門の任務の遂行状況

 ・ 計画等に応じた人員を含めたリソースの配分状況

 ・ 設立趣意に沿った設置した会議体やプロジェクトチーム等の運営状況

 ・ 計画に沿った研修の実施状況

 

 以上、リスク低減措置の実施状況に対する有効性検証に関する前提について確認した。

 次回は、具体的な参考事例について確認していくことにする。