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マネロン・テロ資金供与対策等の勉強を始める 17

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 犯罪収益移転防止法の条文を通じてマネロン対策(AML/CFT)についてみていく。

 

38 取引時確認の確認記録の作成・保存

 前回まで取引時確認に内容・手段についてみてきた。

 今回は、取引時確認の確認記録の作成・保存についてみていく。

 

 この点、特定事業者が取引時確認を実施したところで、その記録がなければ犯罪収益の追跡、確保(没収)は事実上不可能になる。

 また、取引時確認の確認記録がなければ確認した内容が分からず、確認済顧客等に対する確認措置が実施できないから、取引時確認もやり直さなければならない。

 これでは事務処理上の停滞を招きかねない。

 このように考えると、取引時確認の実施と確認記録の作成・保存はセットであると言える。

 

 

 以下、取引時確認の確認記録に関する法令を具体的な規定を見ていく。

 まず、犯罪収益移転防止法第6条は、第1項で特定事業者の取引時確認を実施した際の確認記録の作成義務を、第2項で確認記録に関する7年間の保存義務を定めている。

 しかし、確認記録の作成方法、確認記録の内容、保存期間の起算点等に関する細かいことは犯罪収益移転防止法施行規則が規定しているため、犯罪収益移転防止法施行規則を見ていくことにする。

 

 

 まず、犯罪収益移転防止法施行規則第19条は確認記録の作成方法(媒体)について規定している。

 つまり、犯罪収益移転防止法施行規則第19条第1項第1号によると、確認記録は文章、電磁的記録、マイクロフィルムによって作成する必要があるらしい。

 こういう記録媒体についてもちゃんと規定する必要があるのだろう。

 例えば、「確認記録を読み上げた音源が取引記録である」などとなっては大変だろうし。

 

 

 次に、犯罪収益移転防止法施行規則第19条第1項第2号柱書よると、確認記録に本人確認書類や補完記録の原本、または、写しを添付することができるらしい。

 そして、犯罪収益移転防止法施行規則第19条第2項によると、添付した資料は確認記録の一部になるらしい。

 

 では、どんな資料が添付資料になるのか。

 この点、添付資料となりうるものは本人特定事項の確認方法によるが、本人特定事項の確認の際に得られた資料の原本、写し、または、情報ということになる。

 以下、条文に規定されている具体例として次のものが挙げられている。

 

・ 本人特定事項の確認のために送付を受けた「本人確認書類の原本、または、写し」

・ 本人特定事項の確認のために送付を受けた「補完書類の原本、または、写し」

・ 本人特定事項の確認の際に受領した「本人確認用画像情報、または、その写し」

・ 本人特定事項の確認の際に受領した「当該半導体集積回路に記録された氏名、住居、生年月日及び写真の情報、または、その写し」

・ 本人特定事項の確認を行ったことを証するに足りる電磁的記録(電子署名が行われた特定取引等に関する情報)

・ 本人特定事項の確認の際に受領した「登記情報、または、その写し」

・ 本人特定事項の確認の際に利用した「公表事項、または、その写し」

 

 

 次に、確認記録の記載内容についてみていく。

 犯罪収益移転防止法施行規則第20条第1項によると記載内容として列挙しているものは次のとおりである。

 ざっくりまとめていくと、次のようになる。

 

(取引時確認の実施者と確認記録者、第1号、2号)

・取引時確認の実施者及び確認記録の作成者の氏名等(氏名その他の当該者を特定するに足りる事項)

 

(取引時確認の実施に関連する日付や時刻、第3号から第14号まで)

・ 本人確認書類の原本、または、補完書類の原本の提示を受けることによって本人特定事項の確認を実施した場合はその提示を受けた日付及び時刻(ただし、提示を受けた本人確認書類、または、補完書類の写しを確認記録に添付し、確認記録と共に次条第一項に定める日から七年間保存する場合にあっては、時刻の記載は不要)

・ 本人確認書類の原本、本人確認書類の写し、補完書類の原本、補完書類の写しの交付を受けることによって本人特定事項の確認を実施した場合はその送付を受けた日付

・ 本人確認書類に記載されている住居に宛てて取引関係文書を書留郵便等により転送不要郵便物等として送付することによって本人特定事項の確認を実施した場合はその取引関係文章を送付した日付

・ 本人確認用画像情報の送信を受けることによって本人特定事項の確認を実施した場合はその送信を受けた日付

・ 特定事業者が本人確認用画像情報と半導体集積回路に記録された氏名、住居、生年月日及び写真の情報の送信を受けることによって本人特定事項の確認を実施した場合はそれらの送信を受けた日付(異なる場合は別々に記載)

・ 特定事業者が本人確認用画像情報の送信、または、半導体集積回路に記録された氏名、住居及び生年月日の情報の送信、及び、犯罪収益移転防止法施行規則第6条第1号号ト(1)、または、(2)に掲げる行為によって本人特定事項の確認を実施した場合はそれらの情報の送信を受けた日付、及び、犯罪収益移転防止法施行規則第6条第1号号ト(1)、または、(2)に掲げる行為を実施した日付

・ 本人確認書類の送付、または、半導体集積回路に記録された氏名、住居及び生年月日の情報若しくは本人確認用画像情報の送信を受けることによって本人特定事項の確認を実施した場合は書類の送付、または、情報の送信を受けた日付

・ 登記情報提供サービスから登記情報の送信を受けることによって本人特定事項の確認を実施した場合は登記情報の送信を受けた日付

・ 国税庁・法人番号公表サイトにより公表されている当該顧客等の名称及び本店、または、主たる事務所の所在地を確認することによって本人特定事項の確認を実施した場合は確認実施日

・ 特定事業者の役職員が、本人確認資料や補完資料等によって確認した顧客等の住所等(住居、または、本店等の所在地)に赴いて当該顧客等や代表者等に取引関係文書を交付することによって本人特定事項の確認を実施した場合は取引関係文章を交付した日付

・ ハイリスク取引の取引時確認において本人確認書類、または、補完書類の提示を受けた場合のその提示を受けた日付、本人確認書類の原本、本人確認書類のコピー、補完書類の原本、または、補完書類の写しの送付を受けた場合の送付を受けた日付

・ 顧客等の取引目的、職業、事業の内容、実質的支配者の本人特定事項、資産及び収入の状況に関する確認を実施した日付

 

(取引時確認の方法、利用した本人確認書類や補完書類等、第16号から第19号)

・ 顧客等、または、代表者等の本人特定事項の確認を行った方法

・ 顧客等、または、代表者等の本人特定事項の確認のために本人確認書類、または、補完書類の提示を受けたときは、当該本人確認書類、または、補完書類の名称等(名称、記号番号その他の当該本人確認書類、または、補完書類を特定するに足りる事項)

・ 本人確認書類に記載された住所等(住居若しくは本店若しくは主たる事務所の所在地)と現実の住所等が一致しないため、第六条第二項(第十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定により本人特定事項の確認を実施する場合の顧客等、または、代表者等の現在の住居等の確認を行った場合の当該本人確認書類、または、補完書類の名称等

・ 本人特定事項の確認において第六条第三項若しくは第十二条第三項の規定により法人の住所等の代わりに営業所の住所にあてて取引関係文書を書留郵便等により転送不要郵便物等として送付する方法、特定事業者の職員がその住所に赴いて取引関係文章を直接交付する方法を用いた場合の営業所の名称、所在地等(所在地その他の当該場所を特定するに足りる事項)及び当該本人確認書類、または、補完書類の名称等

 

(取引に関する事項及び取引時確認事項、第15条、第20号から第30号まで)

・ 取引時確認を行った取引の種類

・ 顧客等の本人特定事項

・ 代表者等による取引取引の場合の代表者等の本人特定事項、代表者等と顧客等との関係、代表者等が顧客等のために特定取引等の任に当たっていると認めた理由

・ 顧客等の取引を行う目的について申告を受けた場合の取引目的の内容

・ 顧客等の職業、または、事業の内容、顧客等が法人である場合の事業の内容の確認を行った方法及び書類の名称等(書類の名称その他の当該書類を特定するに足りる事項)

・ 顧客等が法人であり実質的支配者について確認した場合の実質的支配者の本人特定事項、実質的支配者と顧客等との関係、実質的支配者の確認方法、書類を用いて確認した場合は書類の名称等

・ ハイリスク取引において資産及び収入の状況の確認を行った場合の当該確認を行った方法及び書類等

・ 顧客等が自己の氏名等(氏名及び名称)と異なる名義を取引に用いる場合の異なる名義及び異なる名義を用いる理由

・ 顧客等との取引記録等を検索するための口座番号等(口座番号その他の事項)

・ 顧客等が外国PEPsである場合の顧客等が外国PEPsであるという事実とその事実を認定した理由

・「なりすまし取引」や「虚偽申告取引」における(ハイリスク取引としての)取引時確認を行った場合の確認記録を検索するための前提となった継続的契約に関する取引時確認を行った日付等(日付その他の事項)

・ 在留期間等の確認を行うことによって「本邦内に住居を有しないこと」と判断した場合の旅券、または、許可書の名称等(名称、日付、記号番号その他の当該旅券、または、許可書を特定するに足りる事項)

 

 うーん、結構たくさんある。

 もっとも、実施者、実施日、確認方法、確認内容と分けて考えれば、なんとか把握できなくもない。

 

 なお、今回の整理の際には次の資料を活用している。

 

犯罪収益移転防止法の概要(JAFIC、2024年4月1日時点)

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20240401.pdf

 

 

 次に、犯罪収益移転防止法施行規則第20条第2項を見ると、提示された本人確認資料や補完書類のコピーを添付する場合、または、本人特定事項の確認の際に受領した添付資料(本人確認書類の原本、本人確認書類のコピー、添付資料の原本、添付資料のコピー)を確認記録に添付する場合には、添付資料、本人確認書類、または、補完書類に記載されている事項を確認記録に記録しなくてもいことになっている。

 つまり、確認記録に資料等を添付した場合、添付資料に記載されている事項は確認記録への記載が必要なくなるらしい。

 二度手間になることを考えればある意味当然というべきか。

 

 

 なお、継続的取引等の場合、取引時確認を複数回行うことがある。

 あるいは、継続的取引等を行っている間に、住所、氏名、代表者といった確認事項に変更が生じるかもしれない。

 そこで、犯罪収益移転防止法施行規則第20条第3項は、確認記録に記載すべき内容に追加や変更があったときの追記・附記の方法について定めている。

 

 まず、犯罪収益移転防止法第20条第3項前段には2つの内容が規定されている。

 まず、取引時確認における確認事項に変更があることを知った場合、変更内容・追加内容を確認記録に付記しなければならないこと

 また、過去に確認事項として記載した内容、過去に添付した資料を確認記録から消去してはならないこと

 確かに、変更のたびに過去の記録を消去・削除していたら、過去の状況が分からなくなってしまう。

 そう考えれば、当然ともいえるか。

 

 もっとも、紙等に付記しようとしたが、付記する場所がないといったことも考えられる。

 そこで、犯罪収益移転防止法第20条第3項後段には、確認記録に付記する代わりに、変更内容、または、追加内容に関する記録を別途作成して、別途作成した記録を従前の確認記録と一緒に保存するという手段を認めている。

 まあ、付記によって見づらくなること等を考慮すれば、こちらの手段をデフォルトと考えた方がいいのかもしれない。

 

 

 さらに、犯罪収益移転防止法施行規則第21条には「7年」という保存期間の起算点について定められている

 まず、犯罪収益移転防止法施行規則第21条第1項は、犯罪収益移転防止法第6条第2項の保存期間の起算点について、「取引終了日及び取引時確認済みの取引に係る取引終了日のうち後に到来する日」としている。

 また、犯罪収益移転防止法施行規則第21条第2項は、特定取引毎に犯罪収益移転防止法施行規則第21条第1項の「取引終了日」について規定している。

 さらに、犯罪収益移転防止法施行規則第21条第3項は、確認済顧客等との取引等において確認措置を実施した場合、この確認措置による取引も取引に含めて取引終了日を考慮する旨規定している。

 

 ざっくりとらえるのであれば、単発の特定取引であればその取引の実施日が保存期間の起算点となり、継続的取引であればその取引や契約が終了した日が保存期間の起算点となる

 

 

 以上、取引時確認に関する確認記録の作成・保存について確認した。

 次回は、犯罪収益移転防止法第1条において「犯罪収益移転防止の手段」として具体的に列挙されている「取引記録の保存」についてみていく。