薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

マネー・ローンダリング等の勉強を始める 2

3 前回と今回とで間が空く

 前回、「マネー・ローンダリング対策の勉強を始めた」旨書いた。

 そして、犯収法第1条の条文を確認した。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 このシリーズ、「続けていこうかなあ」と考えていたけれど、次のマネロン資格を取ったり、色々忙しくなってしまったりして、どのように続けるべきか分からなくなってしまった。

 

https://www.kinzai.or.jp/kentei/5h7.html

 

hiroringo.hatenablog.com

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 そこで、インターネットに公開されている次の文章などを参考にしながら、犯収法の条文を読んでいこうと考えている。

 

(『犯罪収益移転防止法の概要』_警察庁・令和5年6月1日の時点)

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20230601.pdf

 

(『マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン 』_金融庁・令和3年11月22日)

https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf

 

(『マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)』_金融庁・令和4年8月5日) 

https://www.fsa.go.jp/news/r4/202208_amlcft_faq/202208_amlcft_faq.pdf

 

(『マネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策 の現状と課題(2023年6月)』_金融庁・令和5年6月)

https://www.fsa.go.jp/news/r4/20230630/2023063001.pdf

 

(『令和5年12月_犯罪収益移転危険度調査書』_国家公安委員会

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/nenzihokoku/risk/risk051207.pdf

 

4 犯収法第2条を読む

 次は、犯収法第2条を見てみる。

 この点、犯収法第2条は定義規定であるから、ざっと見るにとどめたいところではある。

 しかし、「犯罪による収益」は「疑わしい取引」(犯収法第8条)にも関連するので、少しだけ細かめにみてみる。

 

 この点、犯収法第2条で定められている定義は、「犯罪による収益」(第1項)・「特定事業者」(第2項)・「顧客等」(第3項)の3つである。

 以下、順に見ていこう。

 

 

 まず、犯収法第2条1項によると、「犯罪による収益」とは組織的犯罪処罰法第二条第四項に規定する「犯罪収益等」と麻薬特例法第二条第五項に規定する「薬物犯罪収益等」をいうらしい。

 つまり、「犯罪による収益」とは「犯罪収益等」と「薬物犯罪収益等」をあわせたものとなる。

 この点、「犯罪収益等」は範囲が広いため、「薬物犯罪収益等」からみていく。

 

 まず、「薬物犯罪収益等」とは、「①薬物犯罪収益と②薬物犯罪収益に由来する財産と③これらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産」を指すらしい(麻薬特例法第2条第5項)。

 あと、「薬物犯罪収益に由来する財産」とは、「①薬物犯罪収益の果実として得た財産、②薬物犯罪収益の対価として得た財産、③これらの財産の対価として得た財産その他薬物犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産」を指す(麻薬特例法第2条第4項)。

 ざっくりと把握すれば、「収益等」は「収益自体」や「収益の果実・収益財産・処分財産」(収益に由来する財産)が少しでも混ざった財産を指す。

 一部でも混ざっていれば全部が「収益等」になると考えると、結構範囲が広そうである。

 

 次に、重要なものが「薬物犯罪収益」であるが、「薬物犯罪収益」とは、①薬物犯罪の犯罪行為により得た財産と②当該犯罪行為の報酬として得た財産と③第2項第七号に掲げる罪に係る資金をいうらしい。

 ざっくり言えば、「薬物犯罪収益」とは薬物犯罪による取得財産・報酬財産・輸出入や製造のための資金を指すらしい。

 

 最後に、「薬物犯罪」とは、薬物(あへん、覚せい剤、麻薬等、大麻)の①不法な輸出入、②違法な製造や栽培、③薬物の所持や譲渡、④これらの行為の教唆や周旋を指すらしい。

 

 以上、「薬物犯罪収益等」についてみてきた。

 この辺にマネロン対策は薬物犯罪対策から始まったことを見ることができそうである。

 

 

 次に、「犯罪収益等」をみていく。

 この点、組織的犯罪処罰法第2条4項を見ると、「犯罪収益等」とは「犯罪収益」と「犯罪収益に由来する財産」と「犯罪収益や犯罪収益に由来する財産とその他の財産が混和した財産」の3つを指す。

「収益等」の定義は薬物犯罪収益等と同様なので、ここでは割愛する。

 

 さらに、「犯罪収益」について確認する。

 組織的犯罪処罰法第2条第2項には「犯罪収益」の内容について1号から5号まで規定されているが、これを全部把握するのは大変そうである。

 しかし、ざっくりと見れば、2号から5号は次のようにまとめられそうである

 なお、「された」というものの中には「されようとした」というものも含みうるものとする。

 

覚せい剤の輸入・製造に提供された資金(2号イ)

・売春や管理売春をするために提供された場所や資金(2号ロ)

・拳銃等の輸入の為に提供された資金・運搬物等(2号ハ)

サリン等の発散、サリンの製造・輸入のために提供された資金や器具等(2号ニ)

・軽微ではない犯罪に対する偽証、証拠の偽造・変造・隠滅などの対価として提供された資金(3号)

・外国の公務員に提供された賄賂として提供された資金(3号)

・テロ行為のために提供された資金(4号)

・テロ行為の準備のために提供された資金(5号)

 

 マネロン対策が現在組織犯罪対策・テロ資金対策・租税回避対策といったことを考慮すると、その辺が追加された部分をここに見ることができそうである。

 

 

 また、1号で定められた「犯罪収益」を見てみる。

 この点、1号に該当する罪はたくさんある。

 そこで、一般論を確認し、例外的に成立しない範囲をみていく。

 

 この点、1号の要件は次の①・②・③にまとめられる。

 

① 財産上不正の利益を得る目的があること(加害目的とか損壊目的は入らない)

② 成立する犯罪が軽微でない犯罪であること(死刑、無期、または長期4年以上の懲役・禁錮であるか、別表に記載されている犯罪であること)

③ ②の犯罪行為によって生成・取得した財産、または、②の犯罪行為の報酬となった財産

 

 つまり、財産獲得目的で軽微でない犯罪行為を行い、その行為による報酬財産やその行為による生成財産・取得財産であれば「犯罪収益」に該当することになる

 そして、ここでいう「軽微でない犯罪」は懲役4年未満で、かつ、別表に記載のない犯罪ということになるが、刑法の罪で該当する罪は少ない。

 

 というのも、生命や身体に対する犯罪は暴行罪を除けば、そもそも重い。

 また、財産罪の懲役の上限は基本的に10年、軽い罪(単純横領、背任)でも5年となる。

 さらに、長期4年未満の懲役刑であっても、一定の罪が別表に加えられている。

 例えば、贈賄罪、わいせつ物頒布罪、常習賭博罪などが別表に含まれている。

 したがって、刑法典にある犯罪で「3年以下懲役」となっている罪で別表に記載されていない罪を探してみると、住居侵入罪、名誉棄損罪、器物損壊罪、、、といったところになりそうである(もちろん、これ以外にもある)。

 このことから犯罪収益の「犯罪」に該当する罪は相当広いといえる。

 

 以上、「犯罪収益等」について見てきた。

 これを機にこのように条文の構造を見ることができて、理解が進んだように見える。

 

 

 次に、犯収法第2条第2項「特定事業者」を見てみる。

 条文を見ると、53個の業種が列挙されている。

 これを4つのグループに分けると次のようになりそうである。

 

①受信・与信・送金取引を担当する金融業者

(銀行などの金融機関とその上部団体、保険会社、証券会社、貸金業者、資金決済業者、暗号資産交換業者、口座や債権の管理業者、両替業者、カード会社)

②比較的高価な物を取り扱う業者

(不動産を取り扱う宅地建物取引業者、高価な製品を扱うファイナンス・リース業者、貴金属等扱う 宝石・貴金属等取扱事業者)

③士業

(弁護士、司法書士行政書士公認会計士、税理士)

④マネロンに使われやすい業者

(カジノ業者・郵便物の受け取りや電話の代行サービス)

 

 そして、犯収法施行令第3条には「ファイナンシャル・リース業」の定義が書かれている。

 また、犯収法施行令第3条を受けて、犯収法施行規則第2条でファイナンシャル・リース契約の具体的な条件が示されている。

 さらに、犯収法施行令第4条には「宝石・貴金属等取扱事業者」における宝石や貴金属等の定義が示されている。

 ちゃんと条文で規定されているのだなあ(なお、条文の内容は省略)。

 

 

 最後に、犯収法第2条第3項に登場する「顧客等」の定義をみてみる。

 こちらは、顧客(特定事業者の契約の相手方)と犯収法施行令に定める者をいうらしい。

 そこで、犯収法施行令の第5条を見ると、様々な信託契約の受益者が「顧客等」に含まれるらしい。

 そして、犯収法施行令第5条に定められた信託契約の受益者でありながら「顧客等」に含まれない者について犯収法施行規則第3条に定められているようだ。

 

 ここはざっくりと把握できればよしとしておこうか。

 

 

 以上、犯収法第2条をみてきた。

 定義規定だけでこんなに疲れるとは・・・。

 今後はざっくり見ていきたいものである。

 

5 犯収法第3条を読む

 次に、犯収法3条をざっとみてみる。

 犯収法第3条には国家公安員会の責務として次のことを定めている。

 

・特定事業者に対し犯罪による収益の移転に係る手口に関する情報の提供その他の援助(第1項)

・犯罪による収益の移転防止の重要性について国民の理解の促進(第1項)

・疑わしい取引や犯罪収益に関する情報を集約・整理・分析することにより、刑事事件の捜査や犯則事件の調査などに活用できるようにすること(第2項)

・犯罪による収益の移転の危険性の程度その他の当該調査及び分析の結果を記載した犯罪収益移転危険度調査書の作成・公表(第3項)

・関係行政機関、特定事業者その他の関係者に対する資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力の要請(第4項)

・犯罪による収益の移転防止について相互協力の要請(第5項)

 


 重要なのは第3項の「犯罪収益移転危険度調査書」の作成・公表であろうか

 上の参考にするものとして取り上げた文章の1つはこの調査書であるが、いずれ確認しておきたいものである。

 

 

 では、今回はこの辺で。