薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

カタカナ民法から見える世界

 私が旧司法試験の勉強を開始した2004年(平成16年)、民法が改正された

 そして、その翌年からカタカナの民法ではなく、現代語となった民法が施行されるようになった。

 

 この「民法の現代語化」については次のウィキペディアの記事で紹介されている。

 

ja.wikipedia.org

 

 21世紀から見た場合、2003年時点の民法、つまり、2004年に改正される前の民法には「いつの時代やねん」と突っ込みを入れたくなる条文がいくつか存在した

 例えば、次の2つの条文が挙げられる。

 

(以下、旧民法の条文については次のサイトのものをお借りした)

http://roppou.aichi-u.ac.jp/joubun/m29-89.htm

 

(改正前民法)第310条
 日用品供給ノ先取特権ハ債務者又ハ扶養スヘキ同居ノ親族及ヒ其僕婢ノ生活ニ必要ナル最後ノ六个月間ノ飲食品及ヒ薪炭ノ供給ニ付キ存在ス

(改正前民法)第317条

 旅店宿泊ノ先取特権ハ旅客、其従者及ヒ牛馬ノ宿泊料並ニ飲食料ニ付キ其旅店ニ存スル手荷物ノ上ニ存在ス

 

 ちなみに、現在、これらの条文は次のようになっている。

 

民法310条)

 日用品の供給の先取特権は、債務者又はその扶養すべき同居の親族及びその家事使用人の生活に必要な最後の6箇月間の飲食料品、燃料及び電気の供給について存在する。

民法317条)

 旅館の宿泊の先取特権は、宿泊客が負担すべき宿泊料及び飲食料に関し、その旅館に在るその宿泊客の手荷物について存在する。

 

 今一度確認するが、上のカタカナの民法は2004年まで有効に使われていたものである。

 21世紀の観点から見てみると、使われている言葉がすごい。

 

 例えば、「僕婢」

 これはいわゆる「家事使用人」のことである。

 例えば、薪炭油」

 薪と炭と油、つまり、燃料費(光熱費)のことである。

 例えば、「従者」と「牛馬」

「『従者』っていつの時代だよ」って突っ込みたくなる。

 あるいは、「『牛馬』って何ぞや」という突っ込みも入るであろう。

 

 

 もっとも、以上の私の感覚は21世紀から見たために生じたものである。

 別の観点から見れば、例えば、次の読書メモの観点から見れば、異なるものが見えることになる。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 つまり、この民法が成立したのは明治29年(1896年)である。

 明治29年とは、明治政府が日清戦争で清に勝利して下関講和条約を締結した次の年のことである。

 そして、この条文の記載が当時の実情だったことになる

 この点は、私がどういう感想を持とうが変わることはない。

 

 つまり、この時代は家事使用人としての「僕婢」がおり、燃料として「薪」や「炭」や「油」(灯油)が用いられていた。

 また、旅行においては主人に対して「従者」や「牛馬」が随行していくこともあった。

 そして、317条の先取特権は「従者や牛馬に関する宿泊料」に関して主人の手荷物などを担保(先取特権)にすることを認めていたわけである。

 

 そして、明治29年と2003年との間には約100年の時間差しかない。

 この100年で日本も世界も大きく変わったことになる。

 

 さらに、戦後、民法家族法の部分は改正され、カタカナから平仮名になった。

 これに対して、財産法の部分は改正されなかった。

 このことから、「戦後直後も明治時代と大差なかった」と推測することができる。

 このことは『危機の構造』の第1章の記載からも推測することができる。

 そうすると、高度経済成長というのはすごいなあ、と考える次第である。

 

 

 ちなみに、私が司法試験の勉強を開始した2004年2月、刑法は既に平仮名になっていた。

 また、商法は2005年に会社法が成立して、商法の会社に関する条文が平仮名になった。

 そのため、司法試験の勉強中に商法に関する条文が大きく変わってしまい、そのために苦労した記憶がある

 もっとも、司法試験や法律から離れた今となっては過去の思い出の一部に過ぎない。

 

 あと、日本国憲法について見てみると、憲法自体は平仮名であるが、旧仮名遣いになっているところがいくつかある。

 例えば、前文第二段の「われらは、(中略)を地上から永遠に除去しようと努めてる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思。」とか。

 または、「行」・「失」・「負」となっている条文とか。

 もしくは、憲法82条2項但書の「(中略)国民の権利が問題となつてる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」とか。

 このような文言が時代を感じさせるのだなあ、と考える次第である。

 

 

 ところで、今年の1月某日、カタカナ民法の条文に関する話をネタとして話そうと考えていた。

 そして、上に記載したカタカナ民法の条文をコピペして(昔の民法の条文を暗記することはめんどくさい)、コピペしたデータをテキストファイルに保存し、スマホへデータをコピーして持っておいた。

 もちろん、話をする際に条文を確認するためである。

 

 しかし、「いざ、話をしよう」とスマホに移したテキストデータを開いたら、そこにあるのは文字化けた文字が・・・

 条文が言えない状況では話ができないので、急遽別の話をしてなんとか間を持たせたが・・・。

 そのため、このネタについて話をするのは少し先になりそうである。

 

 

 最近、カタカナ民法にまつわる話をしようと考えたので、備忘のために残す。

 今後、このことで話をしようとした場合、このブログにアクセスすれば話ができるので。