薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

マネロン・テロ資金供与対策等の勉強を始める 24

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 犯罪収益移転防止法の条文を通じてマネロン対策(AML/CFT)についてみていく。

 

51 疑わしい取引に関する情報の提供等

 前回は、犯罪収益移転防止法から少し離れて、金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインについてみてきた。

 今回は、犯罪収益移転防止法に戻って先の条文を見ていくことにする。

 

 もっとも、私にとって犯罪収益移転防止法第12条(弁護士等による取引時確認等に相当する措置)は大きな関心がないため省略する。

 そこで、犯罪収益移転防止法第13条と第14条を見ていく。

 ここに規定されているのは、疑わしい取引に関する情報の提供等についてである。

 

 

 まず、犯罪収益移転防止法第13条第1項は、国家公安委員会による「疑わしい取引に関する情報」の提供について定められている。

 この点、提供される情報は「疑わしい取引に関する情報」、具体的には、疑わしい取引の届出に係る事項等、外国のマネロン対策を講じている機関から提供された情報並びにこれらを整理し又は分析した結果である。

 また、提供先となっているのは、検察官、検察事務官司法警察職員国税庁国税局、税務署の職員、税関の職員、徴税吏員、公正取引委員会の職員、証券取引等監視委員会の職員である。

 ざっくりまとめれば、捜査機関等の職員と言えばいいだろうか。

 また、犯罪収益移転防止法第13条第2項は、上に示した捜査機関等の職員による情報の閲覧、謄写、記録の写しの交付の請求等について定められている。

 

 この点、届出がなされた「疑わしい取引」に関する情報を捜査に活用できないならば、何のための情報収集か、ということになってしまう。

 そのように考えれば、これらの規定は当然のことを定めただけ、とも言える。

 

 

 次に、犯罪収益移転防止法第14条は、外国の捜査機関等への情報提供について定めている。

 つまり、犯罪収益移転防止法第14条第1項は、国家公安委員会による外国の捜査機関等に対する疑わしい取引に関する情報の提供について定められている。

 また、犯罪収益移転防止法第14条第2項には、外国に情報を提供する際の「提供した疑わしい取引に関する情報」に関する目的外利用を防止するための措置、こちらの同意がない状況での刑事事件への利用がなされないような措置をとらないといけない旨定められている。

 もっとも、犯罪収益移転防止法第14条第3項は、外国から「提供した疑わしい取引に関する情報」を刑事事件に使いたいという要請があった場合に、①捜査対象が政治犯罪であるか、捜査目的が政治犯罪に関する調査の場合、②捜査対象となっている犯罪行為が我が国において犯罪ではない場合、③日本から同じような要請をした場合にそれに応じてくれる保証がない場合を除き、刑事事件に使用することの同意ができる旨定められている。

 ここで、「できる」と定められているということは、「3条件のいずれにも該当しないが同意しない」という選択肢も可能であることを意味するのだろう。

 そして、犯罪収益移転防止法第14条第4項では、国家公安委員会が同意をする際、同意できない3条件に該当しないことの確認を法務大臣外務大臣から受ける必要がある旨定められている。

 最後に、犯罪収益移転防止法第14条第5項には、一定の国際約束に基づいて疑わしい取引に関する情報を提供した場合、刑事事件について用いる同意があるとみなす旨定められている。

 

 どれも、ある意味当然のことが規定されている、と言うべきか。

 

 

 以上、情報提供についてみてきた。

 ちゃんとこういうことも法律の条文にするんだなあ。

 

52 行政庁による監督について

 次に、行政庁による監督(犯罪収益移転防止法第4章)についてみていく。

 

 

 この点、犯罪収益移転防止法第15条は、行政庁の特定事業者に対する報告要求と資料の提出要求の権限について定められている。

 

 次に、犯罪収益移転防止法第16条第1項は、行政庁の特定事業者に対する施設への立ち入り、帳簿書類その他の物件の検査、業務に関する関係者への質問権限について定められている。

 そして、犯罪収益移転防止法第16条第2項は、この立入検査を実施する職員に対する身分証明書の携帯と提示について定められている。

 また、犯罪収益移転防止法第16条第3項は、これらの権限行使が刑事手続ではなく行政手続である旨定められている。

 ただし、犯罪収益移転防止法第16条第4項は、日本銀行に対する権限を認めていないらしい。

 

 さらに、犯罪収益移転防止法第17条は、行政庁による特定事業者に対する指導・助言・勧告権限について定められている。

 

 また、犯罪収益移転防止法第18条では、行政庁による特定事業者に対する是正措置の命令権限について定められている。

 なお、是正措置の命令は、取引時確認(犯罪収益移転防止法第4条)、取引時確認の記録の作成・保存(犯罪収益移転防止法第6条)、取引記録の作成・保存(犯罪収益移転防止法第7条)、疑わしい取引の届出等(犯罪収益移転防止法第8条)、コルレス契約締結時の確認義務(犯罪収益移転防止法第9条)、海外送金における確認義務等(第10条)に関する特定事業者の違反行為等に対してであって、継続的顧客管理等を定めた犯罪収益移転防止法第11条について犯罪収益移転防止法を根拠として改善・是正命令を出すことはできないらしい

 もっとも、犯罪収益移転防止法第11条に違反している場合、業務改善命令の対象となる他の条項に反している可能性もあるし、別の業法を根拠にするといった手段もありうるであろうから、行政庁側から見れば犯罪収益移転防止法第11条前段が対象に入っていなくても問題がないのかもしれない。

 

 さらに、犯罪収益移転防止法第19条では、国家公安委員会による意見の陳述(犯罪収益移転防止法第19条第1項)、意見の陳述に必要な範囲に関する特定事業者に対する報告・資料の提出の請求(犯罪収益移転防止法第19条第2項)、都道府県警察に対する必要な調査の指示(犯罪収益移転防止法第19条第2項)、都道府県警察による立入り・検査・質問の権限(犯罪収益移転防止法第19条第3項)について定められている。

 そして、都道府県警察による立入に際しては、事前に国家公安委員会の承認が必要であり、国家公安委員会が承認する際には、事前に行政庁に通知する必要があるらしい(犯罪収益移転防止法第19条第4項)。

 また、通知に対して行政庁は権限の行使に関する調整の協議を国家公安委員会に求めることができるらしい(犯罪収益移転防止法第19条第5項)。

 法律にここまで書く必要があるのか、という感じがしないではないのが、必要なのだろう。

 

 

 なお、犯罪収益移転防止法施行令第18条では、協議の求める際には、文章かFAXによる通信により行う旨定められている。

 また、犯罪収益移転防止法施行規則第33条では、身分証明書の様式や発行について定められている。

 さらに、犯罪収益移転防止法施行規則第34条では、犯罪収益移転防止法第19条第5項の協議について定められている。

 このようなことについても施行令、施行規則で決めておくんだなあ。

 

 

 以上、犯罪収益移転防止法の第3章と第4章について確認した。

 次回は、犯罪収益移転防止法の第5章以降を確認していく。