薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

続・マネロン・テロ資金供与対策等の勉強を始める 8

 今回は次の記事の続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン等についてみていく。

 

マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン

(以下「ガイドライン」という。)

https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf

 

・マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)

(以下「FAQ」という。)

https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/amlcftgl_faq.pdf

 

10 第2章第2節第2項を見る_前編

 第2章第2節第2項のタイトルは「リスクの評価」。

 第1項で見てきた「リスクの特定」の続きである。

 

 

 まず、本文の「対応を求められる事項」や「対応が期待される事項」以外の事項を確認する。

 その内容は次のとおりである。

 

・ リスクの評価とは、「『特定されたマネロン・テロ資金供与リスク』の自らへの影響度等を評価すること」を指すこと

・ このリスクの評価は、次項におけるリスク低減措置等の具体的な対応を基礎付けるものであって、リスクベース・アプローチの土台となるものであること

・ リスクの評価がリスク低減措置の具体的内容と資源配分の見直し等の検証に直結するものであることを考慮すれば、各金融機関等がリスクを評価する際には、自らの事業環境・経営戦略の特徴を反映させると共に、経営陣の関与の下で全社的に実施することが必要であること

 

 リスクの特定が「リスクベース・アプローチの出発点」ならば、リスクの評価は「リスクベース・アプローチの土台」なのだそうである。

 なかなか上手い言い方があるものである。

 

 

 では、「対応が求められる事項」についてみていく。

 今回も各項目毎の「対応が求められる事項」とFAQにおける補足事項を確認していくことにする。

 

 まず、「リスクの評価」における「対応が求められる事項①」は次のとおりである。

 

ガイドラインの「リスクの評価」における「対応が求められる事項①」の内容を引用、強調は私の手による)

 リスク評価の全社的方針や具体的手法を確立し、当該方針や手法に則って、具体的かつ客観的な根拠に基づき、前記「(1)リスクの特定」において特定されたマネロン・テロ資金供与リスクについて、評価を実施すること

(引用終了)

 

 そして、これに対するFAQにおける補足事項は次のとおりである。

 

① 「具体的かつ客観的な根拠に基づいた特定されたマネロン・テロ資金供与リスクの評価」を実施する場合に踏まえるべき事項として次の事項が挙げられる。

 ・ 自らの事業環境・経営戦略・リスク特性等

 ・ 具体的かつ客観的な実際の取引分析や評価

 ・ 顧客属性

 ・ 疑わしい取引の届出の内容や傾向

 ・ 自らの金融犯罪被害の状況や手口の分析等実際

② リスクの評価の実施に際して踏まえる際の評価要素の具体例として次の事項が挙げられる。

 ・ 取引量(金額、取引件数等)

 ・ 影響の発生率(有形無形の損失が発生する可能性の程度)

 ・ 影響度等の検証結果(想定される有形無形の損失の大小等、具体的には、内外の当局による行政処分や制裁、コルレス関係解消、レピュテーションリスク等)

③ リスクの評価にあたって考慮すべき要素、評価の手法については、各金融機関等において、事前に文書化しておく必要がある。

④ リスクの評価に際して、踏まえるべき評価手法、整合させるべきリスク認識として次の事項が挙げられる。

 ・ NRA等の国によるリスク評価

 ・ 業界団体によるリスク評価、分析レポート

 ・ FATFによるリスク評価

⑤ FATFによるリスク評価が記載された具体例として次の事項が挙げられる。

 ・ メソドロジー

 ・ 勧告

 ・ 解釈ノート

 ・ セクターごとのガイダンス

 ・ 行動要請対象の高リスク国・地域

 ・ 強化モニタリング対象国・地域

 ・ 内外の当局の経済制裁に関する情報等

⑥ リスク評価が金融機関等が保有するマネロン・テロ資金供与リスクを正確に把握することを目的とする以上、マネロン・テロ資金供与リスク管理の統括管理部門(第2線全体を管理している部門)のみで実態に即さないリスクの評価を行うことは避けるべきである。

⑦ リスクの評価の際には、営業部門(第1線)と管理部門(第2線)が緊密に連携することが必要である。

⑧ リスクの評価の際には、顧客や商品・サービスの実態を最も理解している営業部門がこれまでに築いてきた顧客との信頼関係を基礎として把握した情報を全てリスク評価の過程で反映することが必要である。

⑨ リスクの評価の際に、活用すべき営業部門が把握し、理解している情報の具体例として次の事項が挙げられる。

 ・ 顧客の取引先

 ・ 顧客の商流等の情報

 ・ 商品・サービス

 ・ 取引形態等

⑩ 営業部門がリスク評価を実施するに当たって考慮すべき事情を明確に理解することができるよう、管理部門は次の事項を実施する必要がある。

 ・ リスク評価の全社的方針や具体的手法の確立

 ・ 営業部門がリスクの評価をはじめとするリスクベースのマネロン・テロ資金供与リスク管理手法を理解するための「マネロン・テロ資金供与リスクの評価の方法について、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性等に即した適切な研修等の実施

⑪ 管理部門は、営業部門の行ったリスク評価を踏まえつつ、疑わしい取引の分析結果等を勘案しながら、最終的なリスク評価を実施する必要がある。

 

 

 次に「リスクの評価」における「対応が求められる事項②」は次のとおりである。

 

ガイドラインの「リスクの評価」における「対応が求められる事項②」の内容を引用、強調は私の手による)

 上記①の評価を行うに当たっては、疑わしい取引の届出の状況等の分析等を考慮すること

(引用終了)

 

 そして、これに対するFAQにおける補足事項は次のとおりである。

 

① 「疑わしい取引の届出の状況等」の「等」に関する具体例として次の事項が挙げられる。

 ・ 自らの口座の不正利用状況

 ・ 捜査機関等からの外部照会の状況

 ・ 特殊詐欺等の金融犯罪が発生している場合のその手口や被害状況

② 特殊詐欺等の金融犯罪が発生している場合のその手口や被害状況を分析するための情報として次の事項が挙げられる。

 ・ 警察からの凍結要請

 ・ 顧客の申告状況

 ・ 顧客に関する報道等の公知情報等

 

 

 さらに、「リスクの評価」における「対応が求められる事項③」は次のとおりである。

 

ガイドラインの「リスクの評価」における「対応が求められる事項③」の内容を引用、強調は私の手による)

 疑わしい取引の届出の状況等の分析に当たっては、届出件数等の定量情報について、部門・拠点・届出要因・検知シナリオ別等に行うなど、リスクの評価に活用すること

(引用終了)

 

 そして、これに対するFAQにおける補足事項は次のとおりである。

 

① 疑わしい取引の届出の状況等の分析を行う趣旨は、金融機関等におけるマネロン・テロ資金供与リスク評価の精度の向上等に活用することにある。

② 「疑わしい取引の届出の状況等」の分析事項の具体例として次の事項が挙げられる。

 ・ 疑わしい取引の届出を実施した顧客の顧客リスク評価を見直すこと

 ・ 届出をした疑わしい取引に関して、商品・サービス、取引形態、国・地域、顧客属性、届出理由、発覚経緯等といった要素に着目し整理を行うこと

 ・ 整理を行った結果に基づいて、金融機関等がこれまでに行ってきたマネロン・テロ資金供与リスクの特定、評価、低減措置、顧客リスク評価の見直しに活用すること

③ 「疑わしい取引の届出の状況等」の分析結果をリスク低減措置に活用する例として、「取引モニタリングの敷居値を設定する際、疑わしい取引の届出状況を分析した結果を踏まえて、一定の顧客属性や取引パターンについてはそのリスク評価を見直すこと、リスクが高くなる場合はリスクに応じて敷居値を下げることにより通常より検知感度を上げること」等がある。

④ 疑わしい取引の届出件数が少数の場合に分析すべきことの具体例として次の事項が挙げられる。

 ・ 届出の理由等が、当該顧客との取引、又は、他の顧客との同種取引等の他の取引にも妥当する可能性がある場合に、過去において類似事案が発生していないかの確認

 ・ 本来届け出るべき取引の再検証等による取引に係る疑わしさの調査や届出判断の手続を見直し

 ・ 検証結果のリスク評価への反映

 ・ より実効的なリスク低減措置の実施に向けた改善

⑤ 「疑わしい取引の参考事例等」に該当するにもかかわらず届出が行われていない取引が一定数認められた場合等には、「本来届出を行うべき取引が検知されない、又は検知されたものの提出に至っていない可能性」を踏まえた「疑わしい取引の届出を行うための態勢」に関する検査を監査部門(第3線)が行うことを検討すべきである。

 

 

 以上、「リスクの評価における「対応が求められる事項」を確認した。

 続きは次回に。