薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

「債権法改正」について学びなおす 3

 今回はこのシリーズの続き。

 

hiroringo.hatenablog.com

 

 法務省の資料を確認しながら「債権法改正」の内容を見直すことにする。

 

www.moj.go.jp

 

民法(債権関係)の改正に関する説明資料 -主な改正事項-

https://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

 

5 消滅時効」について_時効完成を阻止する手段

 前回は、「消滅時効」が完成する基準について確認した。

 今回は、「消滅時効」の完成を阻止するためのシステムについて確認する。

 

 旧民法(債権法改正前の民法)には、時効の完成を阻止する手段として「時効の中断」・「時効の停止」という制度があった。

 関連する条文を見ていくと次のようになる。

 

民法第147条(時効の中断事由)

 時効は、次に掲げる事由によって中断する。

 第1号 請求

 第2号 差押え、仮差押え又は仮処分

 第3号 承認

民法第149条(裁判上の請求)

 裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

民法第150条(支払督促)

 支払督促は、債権者が民事訴訟法第三百九十二条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。

民法第151条

 和解の申立て又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。

民法第152条(破産手続参加等)

 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。

民法第153条(催告)

 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

民法第154条(差押え、仮差押え及び仮処分)

 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。

民法第155条

 差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

民法第157条(中断後の時効の進行)

第1項 中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。

第2項 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。

民法第158条(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)

第1項 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。

第2項 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

民法第159条(夫婦間の権利の時効の停止)

 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法第160条(相続財産に関する時効の停止)

 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法第161条(天災等による時効の停止)

 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 

 改めて条文を見直しているが、こんなに条文があったのか・・・。

 司法試験に合格する際に、条文を見ていないということはないだろうが、こんなんだったっけ・・・という。

 

 

 さて、従来の定義を確認する。

 まず、「時効の中断」とは、当事者の一定の行為によって時効の進行を振り出しに戻すことにより、時効の完成を阻止することを指す。

 また、「時効の停止」とは、天災等の客観的事情により権利行使できなかったことを理由に時効の完成を猶予することを指す。

 簡単に言えば、時効の中断はリセット、時効の停止はストップ、とイメージすればいい。

 

 もっとも、リセットの効果がある時効の中断について細かく見ていくと、微妙な違いがあった。

 例えば、時効中断事由の1つである債務の「承認」は、承認した瞬間、時効がリセットされ、承認したタイミングから時効がスタートする。

 一方、時効中断事由の「請求」、これは訴訟提起を意味するが、勝訴判決が確定したタイミングから時効がスタートする。

 つまり、訴訟提起により時効の進行は一度リセットされるが、その後、勝訴判決が確定するまで進行がストップし続けることになる。

 であれば、請求による時効の中断と債務承認による時効の中断の効果は少しずれていることになる

 

 それから、請求(訴訟提起)の場合、訴えを取り下げられたり、訴えが却下されることがある。

 この「訴えの却下」というのは、いわゆる門前払いの判決であって、債権がないから却下されたわけではない(債権がない場合、「請求棄却判決」になる)。

 そして、条文によると「訴え却下」により時効の中断は生じなかったことになるため、時効完成間近に訴訟提起を行ったが訴え却下が確定した場合、即座に時効が完成することになる。

 もっとも、「催告」に該当すれば時効の完成を6ヶ月間猶予できたのに、「催告」よりも強いアクションである「請求」(裁判所に対して判決を得るために行動すること)において訴え却下判決となったがために、いきなり時効を完成させてしまってもいいのか。

 ちなみに、判例はこのようなケースで「裁判上の催告」として時効の完成を一時的に猶予している。

 

 このように、債権法改正前の「時効の中断」には、「中断」の内容が不明、解釈による補充の必要性といった問題が生じていた。

 また、時効の停止についても「停止期間が短い」・「本来必要な条件が条文上示されていない」といった時効の停止の要件に関する問題があった

 そこで、債権法改正により概念を整理し、時効の停止の要件の検討を行い、条文の改正が行われた。

 

 

 まず、時効の進行をリセットすることを「時効の更新」と定義した。

 また、時効の進行をストップさせることを「時効の完成猶予」と定義した。

 以下、関係条文を確認する。

 

民法第147条(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

第1項 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

 第1号 裁判上の請求

 第2号 支払督促

 第3号 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停

 第4号 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

第2項 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

民法第148条(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)

第1項 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

 第1号 強制執行

 第2号 担保権の実行

 第3号 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売

 第4号 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続又は同法第二百四条に規定する第三者からの情報取得手続

第2項 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

 

 まず、裁判上の請求とそれに準じるものに関する時効の更新・完成猶予について確認する。

 内容をまとめれば、訴訟提起等や強制執行等を行えば時効の完成猶予、勝訴判決等が確定したり担保権の実行が完了したら時効の更新となる。

 また、権利の存在を前提とする判断(判決・担保権実行)がなく手続が中断した場合、中断後半年間は時効完成が猶予されることも明記された。

 

 次に、内容が少し変わったの仮差押え等について確認する。

 

民法第149条(仮差押え等による時効の完成猶予)

 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 第1号 仮差押え

 第2号 仮処分

 

 基本的に、仮差押えについては時効の完成猶予にとどまることになった。

 これは仮差押えが訴訟提起の前段階であることを踏まえたからだろうと考えられる。

 

 次に、催告について。

 催告とは、債務者に対して債務の履行を請求する行為である。

 ちなみに、債務者に「代金払え」・「借金返せ」と言う程度でも成立するが、後日の立証を考慮し、配達証明内容証明郵便で請求することになる。

 これにより、時効の完成を半年間猶予することができた。

 これについて、民法は次のように定めている。

 

民法第150条(催告による時効の完成猶予)

第1項 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

第2項 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

 

 この点、第2項は、「催告を重ねても時効は止まらないよ」ということを書いている。

 これは従前の法解釈と同様である。

 

 あと、「協議を行う旨の合意」による消滅時効の完成猶予という条項が新設されたらしい。

 

民法第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)

第1項 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。

 第1号 その合意があった時から一年を経過した時

 第2号 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時

 第3号 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時

第2項 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。

第3項 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。

第4項 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。

第5項 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。

 

 そして、オーソドックスな時効の完成を阻止する手段たる債務「承認」である。

 

民法第152条(承認による時効の更新)

第1項 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。

第2項 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

 

 

 以上が時効の中断に関する改正内容である。

 それから、時効の停止に関する改正内容も条文を確認する。

 こっちはざっと見るにとどめておく。

 

民法第158条(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)

第1項 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。

第2項 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

民法第159条(夫婦間の権利の時効の完成猶予)

 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法第160条(相続財産に関する時効の完成猶予)

 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法第161条(天災等による時効の完成猶予)

 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

 

 ちなみに、天災については完成猶予期間が2週間から3ヶ月に伸びたらしい

 まあ、現状を考慮すれば、その方がいいだろう。

 

 

 以上、前回と今回で消滅時効について確認した。

 次回は、法定利息について確認する。

 ただ、見直すにしても結構分量あるんだなあ・・・。