今回は次の記事の続き。
マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン等についてみていく。
・マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン
(以下「ガイドライン」という。)
https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/211122_amlcft_guidelines.pdf
・マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問(FAQ)
(以下「FAQ」という。)
https://www.fsa.go.jp/common/law/amlcft/amlcftgl_faq.pdf
19 第2章第2節第3項第3号を読む
第2章第2節第3項第3号のタイトルは「取引モニタリング・フィルタリング」。
前回は、「リスク低減措置」の「顧客管理」について確認した。
今回は、「取引モニタリング・フィルタリング」等について確認する。
まず、本文の「対応を求められる事項」以外の事項を確認する。
その内容は次のとおりである。
① リスク低減措置の実効性を確保する具体的な手段として次の2つの手段が挙げられる。
・ 個々の顧客に着目する顧客管理
・ 取引そのものに着目する金融機関等における取引状況の分析、異常取引や制裁対象取引の検知等
② 金融機関等においては、顧客管理と異常取引や制裁対象取引の検知等を組み合わせて実施し、リスク低減措置の実効性を高めていくことが重要である。
そして、FAQでは「取引モニタリング」と「取引フィルタリング」の定義が示されている。
以下、FAQの内容を確認する。
① 「取引モニタリング」とは、次の事項の実施を通じてリスクを低減させる手法を指す。
・ 過去の取引パターン等との比較した場合の異常取引の検知
・ 検知した取引に対する調査
・ 検知した取引に対する評価、及び、疑わしい取引の届出の実施
・ 検知した取引に対する調査、評価を踏まえた顧客のリスク評価の実施・修正
② 「取引フィルタリング」とは、「顧客との取引前又は制裁対象者リスト等が更新された場合等に取引関係者や既存顧客等について反社会的勢力や制裁対象者等のリストとの照合を行うこと」等を通じて、反社会的勢力等による取引を未然に防止することによってリスクを低減させる手法を指す。
こうやって見ると、取引モニタリングは取引の内容に着目した低減措置である一方、取引フィルタリングは取引の相手に着目した低減措置であると言える。
以下、「対応が求められる事項」についてみていく。
まず、「取引モニタリング・フィルタリング」における「対応が求められる事項①」は次のとおりである。
こちらは、「取引モニタリングにおける対応が求められる事項」ということができる。
(ガイドラインの「取引モニタリング・フィルタリング」における「対応が求められる事項①」の内容を引用、強調は私の手による)
疑わしい取引の届出につながる取引等について、リスクに応じて検知するため、以下を含む、取引モニタリングに関する適切な体制を構築し、整備すること
イ.自らのリスク評価を反映したシナリオ・敷居値等の抽出基準を設定すること
ロ.上記イの基準に基づく検知結果や疑わしい取引の届出状況等を踏まえ、届出をした取引の特徴(業種・地域等)や現行の抽出基準(シナリオ・敷居値等)の有効性を分析し、シナリオ・敷居値等の抽出基準について改善を図ること
(引用終了)
そして、これに対するFAQにおける補足事項は次のとおりである。
① 取引モニタリングを実施する際には、「リスク毎の『適用するシナリオや敷居値』の決定・適用」を実施する必要があり、画一的なシナリオや敷居値によって不公正取引の疑いがある取引を検知する対応だけでは不十分である。
② リスク毎の「適用するシナリオや敷居値」を決定・適用の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 全顧客に対して画一的なシナリオを適用せず、高リスク顧客に対するシナリオ・敷居値と低リスク顧客に対するシナリオ・敷居値をそれぞれ適用すること
・ 画一的に適用する基本シナリオ・敷居値と一部リスクに応じた専用シナリオ・敷居値を併用すること
③ 「リスク毎の『適用するシナリオや敷居値』の決定・適用」を実施するためには、リスク毎の「適用するシナリオや敷居値」の内容を検討する必要があり、かつ、そのための試行期間も必要であることを踏まえると、各金融機関は次の事項を実施する必要がある。
・ 「リスク毎の『適用するシナリオや敷居値』の決定・適用」を実施に向けた適切な計画の策定
・ 「リスク毎の『適用するシナリオや敷居値』の内容」の検討の実施
・ 取引モニタリングに利用されているシナリオや敷居値の有効性に関する定期的な見直し
④ 「取引の特徴(業種・地域等)や現行の抽出基準(シナリオ・敷居値等)の有効性を分析し、シナリオ・敷居値等の抽出基準について改善を図ること」の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 取引モニタリングで検知した取引について、各取引に共通する特徴(業種・地域等)及び抽出基準(シナリオ・敷居値等)を確認すること
・ 疑わしい取引の届出に至った取引について、各取引に共通する特徴(業種・地域等)及び抽出基準(シナリオ・敷居値等)を確認すること
・ より多くの疑わしい取引の届出につながった取引の特徴や抽出基準を特定すること
・ 取引モニタリングで検知すべき取引の特徴や抽出基準の改善余地の検証
・ 疑わしい取引の届出につながらなかった取引の特徴や抽出基準を特定すること
・ 取引モニタリングで検知すべきでない取引の特徴や抽出基準の改善余地の検証
・ 誤検知率を踏まえた取引モニタリングシナリオの廃止の必要性の検討
・ 疑わしい取引をより有効に検知できる取引の形態、抽出基準を特定する取組みの継続的な実施
⑤ 捜査機関等から凍結要請のあった口座の取引についてアラートが生成されていなかった場合、抽出基準の有効性の検証の際に、次の事項を検証する必要がある。
・ アラートが生成されなかった理由の検証
・ 必要に応じた抽出基準を見直し
⑥ 同一パターンの誤検知への改善対応として、「一定期間検知しないような手法(サプレッション)」という手段が考えられる。
⑦ サプレッションを導入する場合には、「顧客属性の変化や時間の経過とともに、本来検知すべきものが検知されないような設定になっていないか」といった「サプレッションの設定に関する適切性についての定期的に検証」が必要となる。
次に、「取引モニタリング・フィルタリング」における「対応が求められる事項②」は次のとおりである。
こちらは、「取引フィルタリングにおける対応が求められる事項」ということができる。
(ガイドラインの「取引モニタリング・フィルタリング」における「対応が求められる事項②」の内容を引用、強調は私の手による)
制裁対象取引について、リスクに応じて検知するため、以下を含む、取引フィルタリングに関する適切な体制を構築し、整備すること
イ.取引の内容(送金先、取引関係者(その実質的支配者を含む)、輸出入品目等)について照合対象となる制裁リストが最新のものとなっているか、及び制裁対象の検知基準がリスクに応じた適切な設定となっているかを検証するなど、的確な運用を図ること
ロ.国際連合安全保障理事会決議等で経済制裁対象者等が指定された際には、遅滞なく照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずること
(引用終了)
そして、これに対するFAQにおける補足事項は次のとおりである。
① 「取引フィルタリングに関する適切な体制」においてなされるべき事項として次の事項が挙げられる。
・ 制裁対象取引に関するリスク管理の適切な実施
・ 制裁対象取引に関するリスクに応じた調査の適切な実施
② 「制裁対象取引に関するリスク管理」として「制裁対象者や制裁対象地域についてアルファベットで複数の表記方法があり得る場合」への対応が考えられるところ、その具体例として次の事項が挙げられる。
・ スペリングの違いについて幅をもって検索できる「あいまい検索機能」の適切な設定
・ 制裁リストに対する複数の名称の登録
③ 「制裁対象取引に関するリスクに応じた調査」を適切に実施するための具体例として「金融機関が独自に所持している照合リストへの追加」があるところ、照合リストに追加すべき情報の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 他の顧客の継続的顧客管理措置や取引モニタリング、取引フィルタリング、疑わしい取引の届出調査の過程で把握した情報や公知情報等から入手した「取引不可先情報」
・ 「制裁対象国・地域や制裁対象者でないものの、リスクの高い特定の国・地域名、氏名、団体名」等の「システムにより検知して、深堀調査を行うためのキーワード等」
④ 「制裁対象の検知基準がリスクに応じた適切な設定となっている」状態とは、「取扱業務や顧客層を踏まえた取引フィルタリングシステムのあいまい検索機能の設定が適切に行われるように定期的に調整されていること」を指す。
⑤ 「遅滞なく照合」している状態とは、金融機関等が、「外務省告示の発出日以降、速やかに制裁対象者リストの更新に着手し、合理的な期日までに差分照合を完了」していることを指す。
⑥ 「国内の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置」とは、法令等遵守と同様の対応を指すため、金融機関等は未然防止措置を実施する必要がある。
⑦ 「国外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置」とは、「制裁適用の要件を十分に確認し、必要な対応を検討すること」を指すところ、その具体例として次の事項が挙げられる。
・ 取引関係者や決済に利用される通貨等を踏まえた制裁適用の要件の十分な確認、及び、必要な対応の検討
・ 金融機関等の取引量、営業地域や経営戦略等のリスク評価を踏まえた適宜・適切な未然防止措置の実施
以上、取引モニタリング・フィルタリングについて確認した。
色々と重要なことが書かれており、非常に参考になった。
20 第2章第2節第3項第4号を読む
第2章第2節第3項第4号のタイトルは「記録の保存」。
といっても、この号はそれほど分量がないので、一気に見ていく。
まず、本文の「対応を求められる事項」以外の事項を確認する。
その内容は次のとおりである。
・ 金融機関等が保存する確認記録や取引記録は、次の事項を実施する際に必須の情報である。
・ 顧客管理の状況・結果等の把握
・ 当局に対する必要なデータの提出
・ 疑わしい取引の届出の要否の判断等
以下、「対応が求められる事項」についてみていく。
まず、「記録の保存」における「対応が求められる事項①」は次のとおりである。
(ガイドラインの「記録の保存」における「対応が求められる事項①」の内容を引用、強調は私の手による)
本人確認資料等の証跡のほか、顧客との取引・照会等の記録等、適切なマネロン・テロ資金供与対策の実施に必要な記録を保存すること
(引用終了)
そして、これに対するFAQにおける補足事項は次のとおりである。
① 「本人確認資料等の証跡のほか、顧客との取引・照会等の記録等、適切なマネロ
ン・テロ資金供与対策の実施に必要な記録」とは、「金融機関等におけるマネロン・テロ資金供与リスク管理に必要な全ての記録」を指すところ、記録の具体例として次の事項が挙げられる。
・ 金融機関等が作成・保存すべき取引時確認の確認記録(犯罪収益移転防止法第6条)
・ 金融機関等が作成・保存すべき取引記録(犯罪収益移転防止法第7条)
・ 顧客との取引経緯(犯罪収益移転防止法第11条前段参照)の記録等
・ 疑わしい取引(犯罪収益移転防止法第8条)の届出件数(国・地域別、顧客属性別等の内訳)
・ 内部監査(犯罪収益移転防止法第11条第4号、犯罪収益移転防止法施行規則第32条第1項第7号)の実施状況
・ 研修(犯罪収益移転防止法第11条第1号)の実施状況
・ 関連資格の取得状況情報
・ マネロン・テロ資金供与リスク管理についての経営陣への報告、及び、必要に応じた経営陣の議論の状況
② 記録の保存方法及び保存期間については、関係法令による要請等を踏まえつつ、各金融機関等の規模や特性、顧客のリスク等に応じて、個別具体的に判断することになる。
③ 記録の保存の方法は、電磁的記録による保存も含まれる。
④ 記録の保存に際しては、分析可能な形による整理等適切な管理が必要となる。
⑤ 関係法令に保存期間の定めがある記録については当該保存期間に従う必要があるが、それ以外の記録の保存期間については一律に一定期間の保存が必要というわけではない。
以上、「記録の保存」についてみてきた。
色々と参考になることが書いてある。
次回は、「疑わしい取引の届出」についてみていくことにする。