薫のメモ帳

私が学んだことをメモ帳がわりに

『数学嫌いな人のための数学』を読む 1

0 はじめに

 次に読む本はこれである。

 

 

 著者はこのブログでたびたび取り上げている故・小室直樹先生である。

 

ja.wikipedia.org

 

 タイトルに「数学」とあるように、本書は数学の本である。

 ただし、本書は数式がいっぱい並べられている通常の数学の教科書ではない。

 この本は「数学嫌いな人」のための本であるから、数式がいっぱい並べられている通常の数学の本を見ても、数学嫌いな人は1文字も読むことなく投げ出してしまうであろう。

 

 本書は「数学とは何か」・「数学の存在意義(何のために数学は存在するか)」・「数学の効用(数学はどのように役に立つか)」について書かれた本である。

 つまり、数学の総論について書かれた本である。

 いうなれば、この本は「数学なんか必要なんですか?」・「数学って何のために学ぶんですか?」という質問に答えるための本と言ってもよい。

 

 だから、数式は少ししか登場しない。

 また、登場する数式を読み飛ばしたとしても、趣旨は分かるようになっている。

 

 そのため、数学の内容(定理・公式その他)について見たい方は別の本を見たほうがよいだろう。

 例えば、最近、私は高校までの数学を一気に見直すために次の本を読んだ(ついでに問題も解いた)が、この本は有用であった。

 もし、実用数学技能検定準1級を突破したいなら、この本は十分有用である。

 

 

 また、「数学の歴史」については次の本を読んだ。

 読み物として面白かった。

 

 

 では、本書を最初からみていく。

 

1 「はじめに」を読む

 本書の最初のページには次の一文が掲載されている。

 

(以下、本書のページiにある1行を引用)

 数学とは神の論理なり

(引用終了)

 

 いきなり「神」が登場する。

 数学の由来から考えるならば、この「神」は天照大御神ではなく、イスラエルの神たる「ヤハウェ」である。

 その神の論理が数学だという

 

 なお、この一文から日本人と数学の相性の悪さを読み取ることができる

 一神教的発想・思考方法が日本人に身についているわけがないから。

 

 

 さて、次のページに移ると、「はじめに」に相当する文章が5ページある。

 ちなみに、本書は平成13年に書かれた本である

 私は22歳、歴史的事件としてはかのセプテンバー・イレブンがある。

 当時、世間を騒がせた本として「分数のできない大学生」という本もあった(本書でも紹介されている)。

 

 

 本書で著者(小室直樹先生)は嘆く。

 当時の文部省(現在の文部科学省)が推進する「ゆとり教育」によって日本の数学教育は崩壊してしまった、と。

 この点、資源がない日本で生き残っていくためには、優秀な労働者・技術者・経営者といった優秀な人材を育成していかなければならない。

 そして、科学技術の根本に数学があること、最新の技術に追いつき使いこなすためには数学を自由自在に使える必要があることを考慮すれば、数学教育が崩壊して何故優秀な人材が生まれようか、と。

 

 ところで、「資源がない日本云々」という言葉はよく耳にする。

 ただ、逆に考えると、「『日本を生き残らせる意思がない』なら、別に人材育成の必要はない」とも言える。

 案外、政治家・官僚の本音はそんなところなのかもしれない。

 もちろん、彼ら自身の所属集団(文部科学省とか自民党とか)を生き残らせる意思はあるであろうが。

 閑話休題

 

 では、どうするか。

『日本人のためのイスラム原論』で「イスラム教に入信するか、イスラム教について徹底的に理解せよ」と述べた故・小室先生は次のように言う。

「あなた自身がマセマティシャン(mathematician)になれ」と。

 すごい発言である。

 

 ただ、間違えてはならないのは「マセマティシャン」の意味である。

「マセマティシャン」というのは「数学者」という意味で使っているのではない。

「数学好き」という意味で使っているのだ、という。

 

 本書は次のように言う。

 

 数学好きになって数学を縦横無尽に使いこなせ

「数学ができないと二十一世紀の日本は真っ暗になる」と絶叫し、政府その他をした激励し、世の中を数学に向かわせよ

 その過程で数学教育を改革せよ

 

 まあ、わからないではないが、ちょっと無理ではないか、と。

 

 もっとも、「マセマティシャンになれ(数学好きになれ)」といってもどうすればいいのか。

 そこで、小室先生は「本書を読め(この本がその答えである!)」と続く。

 そして、数学を知るための第一歩として最初の「数学は神の論理である」にリンクする。

 

「数学は神の論理(神の教え)である」とは何か。

 この点、数学が近代科学の根本になった最大の理由はギリシャ形式論理学とリンクしたからである、と。

 この点、形式論理学はかたっくるしくて、とっつきにくい。

 しかし、イスラエルの神がこの形式論理学を数学とリンクさせた

 といっても、これだけ言われただけではピンとこないであろう。

 そこで、第1章で数学の起源について神の存在証明を通じて説明するのだそうだ。

 

 その上で、第2章がアリストテレス形式論理学についてみていく。

 その後、第3章で数学と近代資本主義の関係を見て、第4章で証明を通じて数学の有効性を確認し第5章で数学を使って経済の諸現象を説明していく様をみていく

 

 

 数学の起源、とか、数学と神の関係なんて初等中等教育でやったことがない。

 これは個々の数学の成果(定理や公式その他)とは関係ないからだろうか。

 その意味で大変楽しみである。

 

 次回から第1章について本格的に見ていく。