0 はじめに
2022年4月10日、私は実用数学技能検定1級、いわゆる、数検1級にチャレンジした。
この点、受験直後の自己採点(あくまで主観)は1次試験が約65%、2次試験が約55%。
一次試験も二次試験もぎりぎり不合格しないという(試験それ自体に対して)最も無残な結果となった。
もちろん、この結果は主観的なものに過ぎず、結果はまだわからない。
しかし、数検1級にチャレンジしたことは事実であるので、試験を受けるまでの一連のことについて備忘のためにブログにメモにしておく。
合格体験談よりも不合格体験談の方が役に立つだろうから。
1 受験の動機について
最初に、数検1級の資格取得の目的について。
受験の目的は機械学習の前提になる数学について一通り学ぶことであった。
私自身、機械学習を使ってあることを研究したいと考えていた。
しかし、そのためには機械学習それ自体についてそこそこ理解しなければならない。
「どこまで理解を深めるか」はさておき、表面的に学んだだけでは前提が変わったときに自分のやった研究がスクラップになってしまう。
このことはいわゆる「敗因21か条」で学んだとおりである。
そして、ある機械学習の入門書を見た際、機械学習に必要な数学は次の3つであることが分かった。
・線形代数
・確率・統計
この3つを見ていて、「これって数学検定1級の範囲と似ていなくね?」という考えが頭に浮かんだ。
そして、次のサイトを見て確認したところ、ある程度符合することが判明した。
(以下、上のURLより「1級の検定の内容」の部分を引用)
【解析】 微分法、積分法、基本的な微分方程式、多変数関数(偏微分・重積分)、基本的な複素解析
【線形代数】 線形方程式、行列、行列式、線形変換、線形空間、計量線形空間、曲線と曲面、線形計画法、二次形式、固有値、多項式、代数方程式、初等整数論
【確率統計】 確率、確率分布、回帰分析、相関係数
【コンピュータ】 数値解析、アルゴリズムの基礎
【その他】 自然科学への数学の応用 など
(引用終了)
また、数検1級は昔に受験しようとして挫折した過去もある。
そこで、「じゃあ、数学の勉強のついでに数検1級もゲットしよう」と考えた。
もっとも、令和に入って得てきたこれまでの資格と数検1級とは性質が異なる。
まず、数学検定1級の合格率は低い。
2019年以降の合格率は10~15%であり、これは簿記2級と同程度、または、少し低いレベルである。
また、数検1級は東大入試の理系数学と比較されるものらしい。
(例えば、「東大 数検1級」という言葉で検索すると、次のサイトみたいなものがいくつか出てくる)。
この点、むかしむかし、私は東大に合格しており、(理系の)数学を受験している。
しかし、あのレベルと比較されるとなると少々不安になる。
(重要なのは両者の比較が話題になる事実それ自体である、いずれが難しいかという評価には意味がない、この部分は上のブログの結論と同意見である)。
東大数学の受験対策と同等のコストを払わなければならないのか、と。
これまでの資格の勉強において「勉強の習慣の確立」に失敗している以上、今回は失敗するのではないか、と。
2 事前準備について
この点、数学の勉強については持っていた教科書などを再利用することにした。
(以下、具体的に使った教科書を列挙するが、アマゾンへのリンクは最新版のものにしている、私が使ったのは買った当時の版であり古いものもある)。
まず、確率・統計については、統計検定2級で利用した次の教科書を復習した。
これは統計検定2級で得た知識の再確認である。
感想としては少し足りなかったかもしれない、というのがある。
数学の部分の補強として次の教科書を併用したほうがよかったかもしれない。
次に、線形代数については、入門書として次の教科書を読んで問題演習を行った。
この点、線形代数は大学時代にやっただけであり、かつ、当時もちんぷんかんぷんだったのだが、この本を読んで線形代数の概形を把握することができた。
その意味でこの教科書はよかった。
もちろん、買った当時、買うだけで終わらせず、ちゃんと読んでいればもっとよかっただろうが。
さらに、微分積分については、大学時代の教科書を再利用することにした。
ただ、これが失敗だった。
この教科書は理論面に特化しており、最後まで読めずに挫折してしまった。
そのため解析学については不十分になり、本番ではこの不十分さが敗因となる。
最後に、数学検定1級は時間が足りないらしく、問題演習もしっかりやる必要があると判断したため、次の問題集を購入して問題演習を行った。
もっとも、微分積分の教科書でとまどっているうちに時間に押されてしまい、全体の6割しか解けなかった。
というわけで、準備は不十分としか言いようがなかった。
東大を受験した時と比較したら、当時の20%といったところではないか。
事実、数検1級のために投入した時間(勉強時間ではない)は約70時間(4月10日まで)。
これは去年の基本情報技術者のために投入した時間と同程度である。
そのため、本番直前において合格できるとは到底考えられなかった。
3 試験について
さて、試験当日。
私は地元の受験会場に赴いた。
意外だったことは、試験会場が県庁所在地ではなく、地元だったこと。
遠方まで赴く必要がなく、大変ありがたかった。
ただ、数検は1級から8級まであるのだから、全部あわせれば試験を受ける人が相当いる。
実際、会場にいた受験者は全階級あわせて100人はいたようだし。
そして、一次試験。
なんと基本公式を忘れるという大失態を演じる。
その結果、一次試験終了時の実感では7問中4問半しか正解できなかった。
合格ライン7割に対して6割半程度しか正解できなかったのだから合格できたとは到底言えないだろう。
一次試験終了直後、「2時間座っているだけでいいから二次試験を受けよう」と考えるだけで精いっぱいであった。
その後、二次試験を受ける。
こちらも超基本的な解法を度忘れする。
その結果、二次試験終了時の実感では2問完答、1問白紙、1問誤答という感じ。
最後の1問でどこまで部分点を得るかが問題となるが、部分点を2~3割と考慮すると、合格ライン6割に対してこちらは5割半から5割7分。
こちらも合格ラインにギリギリ足りない。
というわけで、今回はともにギリギリ不合格という一番効率の悪い結果となったと考えられる。
まあ、簿記2級のときのようなこともあるので、究極的にはわからないが。
4 反省と今後について
今回の試験は資格が必要だから受けたわけではない(もちろん、これは他の資格にも言えることだが)。
だから、不合格それ自体はどーでもいいことである。
ただ、微積関係の教科書を間違え、その結果、演習時間が足らなくなったことが重要な敗因となった。
また、合理的な計画を事前に立てなかったこともいけなかった。
この2点は反省しないといけないように思われる。
他方、確率・統計の知識のブラッシュアップに成功し、また、線形代数の概念を把握できたことは今回の結果から得られた良い収穫であった。
個人的には、機械学習の前提の構築という目的はそこそこ達成できたように考えられる。
機械学習の式を理解するためには行列を扱う必要がある以上、それらを見て手間取っているようでは話にならないから。
再チャレンジについてはわからない(まだ、結果が確定しているわけでもないし)。
他にすべきこととしてプログラミングその他があり、数学にかかりっきりになることはできないから。
ただ、一次試験と二次試験のいずれかに合格しており、かつ、微分積分の勉強をやり直そうと判断したときは、数検1級に再チャレンジしようと考えている。
最後に、巷にある「試験時間が短い、一次試験は特に時間がない」という意見は妥当であった。
事実、一次試験は時間がなくて2問ほど最後までいかなかった。
また、二次試験も一問は白紙で終わった。
だから、問題演習をおろそかにしない方がいいとは言えそうである。
もっとも、「東大入試の数学よりも難しい」点と合格率が低い点はあまり気にする必要がないと考えられる。
所詮試験に過ぎないし、受けた感じとしてもめっちゃハードルが高いと感じさせるものでもなかった。
無論、準備が必要であることに間違いがないとしても。